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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章
476/492

思考する元魔族

 ローアに与えられた情報は、ほんの僅か。


 正しく〝欠片〟と呼ぶべき、整合性のない未完成の伝言。


 それでも、彼女が読み解くしかない。


 実年齢の割には聡明であるという事実を今さら疑いはしないが、ただでさえ【四位一体】の制御に苦戦していたところに降って湧いた母親との会話が意図せぬタイミングで打ち切られた衝撃は、確実に望子から正常な判断力を奪っており。


 望子と話したいという一心だけではなく何か重要な情報を伝えるべく、わざわざ邪神の手まで借りて声を届けていたという事は誰に言われるまでもなく理解出来ていたローアが。


 混乱する望子に代わって、読み解くしかないのだ。


『思い出し──ぐるみ以外──あの人の──まほ──』


 この、たった四つの欠片をもとに──。


 一つ目──『思い出し』。


(これは考慮の余地なし。 『思い出して』と見て良かろう)


 まだ地球に居た頃、或いは異世界こちらに来てから望子に起きた何かを思い出させようとしていた筈だと一先ず確定させる。


 二つ目──『ぐるみ以外』。


(……ミコ嬢は常日頃から〝人形パペット〟を〝ヌイグルミ〟と称している。 〝イガイ〟というのが〝以外〟で良いなら人形パペット以外の何かを想起させようとした……か? まだ確証とはいかぬな)


 ツッコんだり訂正したりする事は決してしなかったが、しっかり耳に残っている〝ヌイグルミ〟なる単語の後ろ三文字を指しているのだろう──というところまでは分かれど、だとしたら何を本命として伝えたかったのかが分からない為。


 ……一旦、次の欠片に思考を巡らせる事にした。


 三つ目──『あの人の』。


 あの人──……あの人?


 ローアは、この欠片が一番ピンと来ていなかった。


 響き的には最も言葉として成立している筈なのに。


 それが何故かと問われると、ローアを始めとする魔族たちの〝上下関係〟が絶対であった為であり、同級位間でさえ創造順や功績順で序列が決まっていた為、そんな呼び方をするだけで懲罰部隊エクスキューショナーが動き出す様な事態に発展したという。


 ゆえに、〝あの人〟というのが具体的にどの様な立場の存在を指しているのかが全く分からないでいた──その時。


 ……待てよ? とローアは何かを思い出しかけ。


(確か人族ヒューマンのメスが婚姻の契りを交わしたオスをそう呼ぶ事もあるのだったか? となれば、ここで言うあの人とは──)


 千年以上も前、魔族以外のありとあらゆる種族──実は魔族も含まれていた──を対象に行っていた無数の凄惨なる生体実験の内、〝異種間交配〟を行おうとした際に既婚者なのだろう女性が必死に泣き喚いていた叫びを思い出していた。


 お願い、あの人には言わないで──という必死の叫びを。


 勿論、当時のローアは〝あの人〟とやらが誰なのか分かっていなかった上に、そもそも他種族の願いなど聞いてやるつもりもなかった為、順番が回ってきた男性に淡々と伝え。


 よくよく思い返してみれば、それを聞いた男性は同じ様に涙を流しながら激昂していた様に思うが、それはさておき。


 あの時は何も気にしなかったものの、あのメスの言うあの人とやらが契りを交わしたオスの事を指していたのだとしたら、柚乃が言うあの人というのは必然──勇人の事になる。


 こちらも確証はないが、そういう事にしておいて。


 四つ目──『まほ』。


 ……こちらの方が余程ピンと来ないのでは?


 と思ってしまうのは半ば必然と言えるだろうものの。


 どうやら彼女は、この最も不完全な欠片に心当たりがあるらしく、一つ目のそれに近いある種の確信を抱いていた。


 三つ目を勇人と仮定出来たからこその、確信を──。

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