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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章
449/492

咲き乱れる花の如く

今年の更新は今回で最後となります!


次回更新は1/11(土)です!


来年も本作をよろしくお願いします!

 ローアがフィンたちに無体な要求する少し前、フィンとハピが抜けた事で一気に戦力が低下した〝外〟では──。


『忌々しくも精強な人形デクどもが消えた今、 最早これらを凌ぎ切る術もなかろう? 在るが儘、従順なる死を受け入れよ』


 ここぞとばかりに生成した無数の蝙蝠型の刃を満身創痍かつ欠員だらけの一行に対して飛来させつつ、〝中〟はともかく〝外〟での戦闘はこれで始末をつけられるだろうと踏み。


「あたしらはそれでいい、だがこの子らだけは……ッ」

「あぁ、命に代えても……!」


 無情なる死の宣告を口にしてきたコアノルの発言に一切の虚栄がない事は理解していたが、かつての戦争で魔族との因縁に決着をつけられなかった者の責務として、若人たちだけはとリエナとスピナが炎と風で防護壁を形成せんとするも。


(駄目だ! 五体満足ふだんどおりならまだしも今の衰弱し切った身体では護るどころか身代わりになる事さえ……ッ、ここは私が──)


 守備力という一点だけを見れば彼女たちを僅かに超えるレプターは、そんな五体不満足の二人がどれだけ意気込んだところで、あの無数の刃を防ぐ事は勿論、仮に己の身を犠牲にしたとしても甚大なる被害は免れないと確信しており。


 隻腕となった今でも火力だけなら自分に勝る二人を無駄死にさせるより、ここで自分が命を賭してでも全員を護るべきだと判断したレプターが一言之守パラディナイトを発動しようとした時。


「──ッ!? アレは……!?」


 一言之守パラディナイトを発動しつつの超高速飛行の中、神懸かり的な動体視力を誇る彼女の龍の眼が、視界の端で何かを捉えた。


 それは、寸前まで遊撃手として戦場を駆け回りながら、効かないと分かっていても矢を射続けていた森人エルフの姿であり。


魔弾装填ローディング属性付与P(エンチャントプラント)標的確認ターゲットロックオン──」


 この危機的状況にあってもなお冷静さを保っていたアドライトは、コアノルへ向けていた照準の全てを今この瞬間も一行を標的として飛来し続けている無数の刃に合わせるとともに、番えた矢に〝風〟でも〝雷〟でもない森人エルフが得意とする第三の属性、〝樹〟の魔力を横溢ギリギリまで込めてから。


「──〝咲発矢散クロロブルーム〟!」


 両腕に装着された弩弓クロスボウから、こんな状況でさえなければ見惚れてしまっていたかもしれないと言える程の美しい若芽色と桜色の入り混じる直線状の軌跡を描く二本の矢が放たれたかと思えば、その矢は花弁にも似た魔力を散らしながら。


『知らぬ間に力を蓄えておったか……ッ』


 放射状かつ無数に枝分かれし、まるで光線の如き速度と貫通力で以て、正面ではなく側面から次々に撃墜させていく。


 しかし何故、速度で勝る無数の刃を撃墜出来るのか?


 刃そのものにも多少なりと意思がある事に加え、コアノル自身が精密に操作する事も可能な無数の刃を、何故?


 答えは、彼女が森人エルフである事とは関係ない部分にあった。


 絶対必中の恩恵ギフト──〝命中シュトレイ〟。


 彼女が投擲、射撃した物体は必ず標的に命中する。


 どれだけ数が多くとも、()()()()()()()()()()()()


『無数の刃を九割近く……恩恵ギフトありきとはいえ中々じゃの』

「……お褒めに与り光栄だ、たとえ相手が魔王でもね」


 そして彼女が放った無数の矢はリエナとスピナが展開した炎と風の防護壁に衝突して焼け死ぬか切り刻まれるかした個体を除き、コアノルが見抜いた通り約九割を撃墜してみせ。


『ふん……尤も、恩恵ギフトのみとも言えぬのじゃろうがな』


 心にもない称賛に心にもない謝罪で返したアドライトに苛立ちを抱きつつ、コアノルは()()()()()をも見抜いており。


「アドさん! 今のは一体──……あッ!?」


 その変化とやらにコアノルと当のアドライトを除いて真っ先に気がついたのは、ぬいぐるみやアドライトを除けば最も身軽と言っても過言ではない関係上、アドライト程ではなくとも同様に戦場を駆け回って幅広い支援をしていたピアン。


 状態好化バフ状態悪化デバフか、どちらかを行使してアドライトを支援すべく駆け寄ったはいいものの、ピアンは目を見張る。


 ……話は変わるが、先程の武技アーツ──〝咲発矢散クロロブルーム〟。


 あの武技アーツで放たれた矢と、それに伴い発生した光の軌跡には一般的な植物と同様の〝葉緑素〟が過分に含まれている。


 何故そんな意味のなさそうな効果が? と思うだろうが。


 植物が太陽の光を浴びて光合成を行う為に葉緑素という色素が存在するのとは逆に、この武技アーツはあらかじめ魔力を用いて光合成に似た現象を発生させる事で、〝光がなければ光合成は不可能〟という誰もが知っている常識を成り立たせる為に、()()()()()()()()()()()事が可能となっており。


 普段なら月光を引き寄せる事で夜の闇を僅かに照らす程度しか出来なかったのに、どういう訳か今は魔大陸全土を包む常闇にスポットライトが如く強い光を引き寄せられていて。


「アドさん、()()()姿()はまさか……!?」

「あぁ、察しの通りさ」


 そのお陰で、ピアンは目撃したのだ。


 アドライトの──……〝進化〟した姿を。

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