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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章
435/492

狐と鳥が戦う理由

 殺す為ではなく、殺させない為に来た。


 と、二人は声を揃えてそう言った。


 何が違うのか、などと問う様な間抜けはこの場に居ない。


『……何が違ぇんだそれ』

『何が違うのそれ』


 ……いや、居た。


 脳筋代表ウルと、望子にしか興味がないフィン。


『……あのね、二人とも。 彼女たちは──』


 冗談でも何でもなく、リエナたちの言の意図を読み取れていないと誰より先に悟ったハピが言い聞かせんとした時。


「……待ちな、ハピ。 あたしらが自分で話すよ」

「小っ恥ずかしいったらないね全く」

『え? あ、あぁ、まぁそうね……』


 重傷を負いながらもキメ顔で語ったセリフを解説されるなど格好がつかないにも程がある、そう判断した二人の意図を察したハピが口を噤んだところから二人の独白が始まる。


「……あたしらは〝老兵〟だ。 千年前の戦いでも百年前の戦いでも魔族との因縁に決着をつけ切れなかった老兵なんだ」

「老兵だなんて店主、そんな言い方は……ッ」


 どうやら彼女たちは一行が思っていたより、それこそ望子と同じかそれ以上の重い覚悟で以て駆けつけてきたらしく。


「本当は、あたしらが全てに引導を渡さなきゃいけなかったんだけどね。 力及ばず、こうして後の世代に擦っちまった」

「婆様、俺たちは貴女を恨んでなど……!」


 自分たちを〝老兵〟──次の世代の為を思えば消え去るべき存在だと、そして自分たちが不甲斐ないばかりにこの世界における次の世代の若者たちばかりか、この世界とは関係ない望子まで喚び寄せてしまった事を悔いる様子の二人。


 尤も、望子は先代勇者とこの世界の女神との間に生を受けている為、全くの無関係と言えるかというと怪しいし、ピアンやルドを始めとしたこの世界の若者たちは先の世代の強者たちを敬いこそすれ万に一つも恨んでなどいない。


 それを骨身に沁みる程に理解しているからこそ、リエナとスピナは弟子や孫の言葉を聞いて嬉しそうに微笑みつつ。


「だからせめて、後の世代の象徴とも言えるこの子たちだけは絶対に死なせない。 あたしと瑞風はそう誓ってるんだ」

『……その結果、貴様らが命を散らす事となろうともか?』

「「……」」

「ッ、そんな……」

「婆様……!」


 たとえ、この戦いで自分たちが惨たらしく死ぬ事になってしまうとしても、この絶望的な戦場に居合わせた勇敢な若者たちだけは何があろうと護り抜くと決意していたのだという二人の老兵、もとい最強の亜人族デミたちの覚悟に絶句する中。


『……良かろう。 貴様らは因縁などと言うたが、妾にしてみればミコを欠いたなど千年前の戦における敗北の八つ当たりにさえ成り得ぬ。 強いて言うなら──〝環境美化〟よ』


 その覚悟の重さを認めたからなのか、それとも単に片腕を始めとした身体の一部を欠損した影響で明らかに弱体化したと踏んだからなのか、かつての強敵たちを前にコアノルは再び戦闘態勢に移行、眼下に群がる一行の排除を〝ゴミ掃除〟だと曰い。


「はッ、ほざくじゃないか! 魔族ゴミの王の分際で!」

「遅れるんじゃないよ若造ども! ついてきな!」

「「「『『『ッ、応!!』』』」」」


 ゴミと言った方がゴミなのだと、そんな子供じみた考えがあった訳ではなく、ただ単に魔族が世界の敵だという絶対的な思想のもと、リエナとスピナが叫んだ号令を受け、ピアンやルドのみならず一行全員が一丸となり、再び魔王へと挑む。


 ここからの戦いは全て、〝時間稼ぎ〟と理解したうえで。

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