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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章
402/491

魔王の本気

 人と狐が融合した様な姿の蒼炎の分身ドッペル


 黄緑色の外套を被った様な姿の暴風の分身ドッペル


 壮麗なる女神の様な神々しい姿の激流の分身ドッペル


 巨龍と人が融合した様な姿の異形の分身ドッペル


 生ける災害(リビングカラミティ)にカビが生えた様な姿の腐乱の分身ドッペル


 望子をそのまま魔族にした様な姿の闇黒の分身ドッペル


 元々要領が良く、ひとたび見聞きすれば頭でも身体でも覚えてしまえる望子が顕現させる六種類の分身ドッペルは最早、一個の軍隊と呼ぶに相応しい程の物量と練度を併せ持っており。


(やむを得ん、数体だけならば──)


 ウルの分身ドッペルはまだしも、フィンが顕現させる本体と遜色ない実力を持つ分身ドッペルと組み合わせられると如何なコアノルといえど全てを捌き切るのは難しく、このままでは戦況を覆されかねないと判断した結果、二桁に届かない程度ならばと一瞬の隙を突いて脳を埋め込み、支配権を奪ったその瞬間。


「!! 皆、今だよ! 支配された分身ドッペルを狙って!!」

『っ、うん!!』

『オッケー!!』

『ッしゃあ!!』


 その隙を見逃さなかった──というよりは、その隙が出来る瞬間と地点を予測して注視していたキューからの指示を受け、望子とウルとフィンの三人はあらかじめ充填して温存していた魔力を一斉に、そして一点に集中させる形で放出し。


『『『────……ッ』』』


 三人の攻撃を一点に、つまり模倣された魔王の脳が埋め込まれた頭部に受けた分身ドッペルたちが一瞬で焼失していく中にあり。


『〜〜ッ!! ぐ、お……ッ!!』

「効いてる……! いけるよ!」

『でも何でだ!? 何でこれが有効打になる!?』


 キューの読み通り、コアノルが思わず攻撃の手を止めて頭を抱えなければ耐え切れない程の痛痒を感じていると分かる苦悶の声を上げ始めたのはいいものの、どうしてこうなるのかが未だに理解出来ていない様子のウルに対し。


「あれは、土の邪神の力で模倣した物とはいえ細部に至るまで完全に〝魔王自身の脳味噌〟! フィンたちの分身ドッペルの支配権を奪う為には模倣の妥協なんて出来ない! そのせいで、あれに対するダメージは魔王本体の脳味噌にフィードバックしていくんだよ!」

『……成る程な!』

『絶対分かってないでしょ』


 コアノルが分身ドッペルに埋め込んでいた脳は、まさしくコアノル自身の脳そのものと呼べる程に精巧な模造品であり、そうしなければウルのはともかくフィンや望子の分身ドッペルなど支配出来る訳もなく、さりとて精巧すぎるせいで避けられないダメージのフィードバックが原因だと看破し。


「そして、もう魔王は浅い物ならともかく深い傷を一瞬で治すなんて芸当は出来ない! 自分の力を分けてまで生み出してた有象無象の魔力を回復薬ポーション代わりにしてたんでしょ!? けど、その部下たちはもう一体も残ってないんだから!」

『成る程な!』

『あぁ今度は分かってるっぽい』


 加えて、デクストラや三幹部を除いた有象無象と呼んで差し支えない部下たち──おそらくローアは含まれていない──には、その存在を消費する事でコアノルの負傷や魔力の消耗を癒す事が出来る、いわば予備電池的な役割も担っていた筈だと確信めいた憶測を突きつける様なキューの解説に、ウルはどうにかこうにか理解出来た様子で頷いていた。


 ……逐一フィンが挟んでくる茶々入れは無視しつつ。


『ッ、貴様ら、ようもここまで……! く、ははは──』


 その一方でキューの解説が図星だった為か、それとも単に負わされたダメージが思った以上に響いている為かは不明瞭であるものの、ズキズキとした痛みが特に強いと見られる頭に片手を当てた状態で苦悶の声を上げつつ、それでも昏い笑みを湛えてみせたコアノルは腕と羽を一気に広げて熱波と瘴気を同時に放って近くに居た分身ドッペルを焼失させてから。


『──……良かろう、ならば見せてくれる。 恐るべき魔王にして、間もなく世界を支配する妾の真価というものを!!』

『うわっ!! な、何!? 地震!?』

『こんなタイミングでか!?』


 ふわりと浮かんだかと思えば角を天井に、羽を壁に、そして尻尾を床に勢いよく突き刺し、これから見せる力こそが己の本気だと叫んだ瞬間、何とも都合の良いタイミングで怒号の様な地響きと共に宙に浮いている筈のフィンすら揺らす程の地震が発生。


「床が、壁が、天井が──違う! 城が揺れてるんだ!!」

「ど、どういう──きゃあっ!?」


 何事かと前線に立つ望子たちが動揺する中、大地に根を張る植物から派生した存在であるからか、キューは震源地が大陸ではなく魔王城そのものだと看破した上で近くに居た不調気味のカナタだけでもと守護しようとしたのも束の間。


 魔王は今までで最も暗く昏く闇い狂気の笑みを湛え──。


『……教えてやろうではないか、ミコ及びその他の有象無象ども。 この城は妾の棲家であり、象徴であり、そして──』











『──盾であり鎧であり、剣でもあるという事を!!』

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