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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
第九章
206/492

魔道具店にて

 ──それは、二日前の出来事。


 本来、銀等級シルバークラスの冒険者であれば特定の街に拠点を持っていても不思議ではないのだが、『管理が面倒だから』という理由で宿屋と長期滞在の契約を交わしているアドライトの下へ亜人族デミが一人、訪ねてきた。


 ……その亜人族デミはドルーカの街にて魔道具店を営む狐人ワーフォックスの弟子、正確には見習いである有角兎人アルミラージであり、『店主が話したい事があるらしくて……今から向かってもらってもいいですか?』と伝えてきたかと思えば彼女はすぐに『私は別に用があるので』と言って去ってしまった為、単身で店まで向かう事に。


 そして店の扉を開いた先にて、いかにも凶暴そうな魔獣や魔蟲の素材を弄っていた……鮮やかな紺の色打掛を着こなし、同じ色のもふもふの九本の尻尾が特徴的な狐人ワーフォックス、リエナが彼女に気がついてから着席を促して、しばらく作業が終わるのを待った後──。


「──私に、魔道具アーティファクトの調査を?」


 換気の為か開かれた窓から聞こえてくる住民たちの賑やかな声が気にならなくなる程、集中してリエナの話を聞いていたアドライトが、おずおずと尋ねるも。


「あぁ、あんたに受けてほしいんだ。 大した実力も無い癖に威張ってる様な奴らには任せられないしねぇ」


 当のリエナはふところから取り出していたシンプルな形状の煙管キセルに青い炎で火を着け、それを咥えて紫煙を燻らせつつ……まるで『雑魚に用は無いんだ』とでも言いたげに、この場にいない不特定多数を煽ってみせる。


 尤も、仮にこの場に彼女の言う連中がいたとしてもリエナは特に言い憚る様な事はしないだろう。



 ……それが許されるだけの力を持っているからだ。



 アドライト自身も充分に彼女の力の強大さは理解しているし、そうでなくとも彼女の事を心から尊敬してはいるのだが……まぁ、それはそれとして。


「……そう言わないであげてほしいな。 貴女から見れば私も含め有象無象にしか映らないのだろうけど、あれでも皆……自分たちなりに頑張って──」


 リエナという強者を尊敬する一人の亜人族デミである前に……彼女も現役の一冒険者である以上、弱いなりに努力している街の同業者たちを悪く言われるのは憤懣やる方ない……とまではいかないが、『素直に認める訳には』とでも言わんばかりに反論しようとした。


「──あの時の二人も?」


「あの時? ……あぁ、いやあれは……違うだろう」


 しかし、そんな彼女の言葉はリエナの一言で遮られてしまい、『何の事やら』と首をかしげたアドライトはだったが、一瞬でリエナが言いたい事を察し、痛いところを突かれた……とはならず、それを否定する。


 それもその筈、彼女たちの共通認識である『あの時の二人』とは……かつてドルーカを訪れ、召喚勇者一行、特に望子に対して因縁をつけた事で返り討ちに遭っただけでは飽き足らず決闘まで申し込み、無様に敗北を喫した男女一組の冒険者の事だったからだ。


 ちなみに、二人は既に冒険者の免許ライセンスを永久に剥奪されたうえでドルーカへの入街を禁じられている為、何処で何をしているかは彼女たちにも分からない。


 だが瞬間的にとはいえ、その二人がドルーカで活動せんとしていたのは揺るぎない事実であり、若干だが狼狽する様子を見せていたアドライトに対してリエナが『冗談だよ』と口にしながら、くつくつと喉を鳴らして笑ってみせた事によりアドライトはホッと安堵の息をついたが……それも無理はないだろう。



 彼女の目の前にいる扇情的な風体の、一見すると長年その道に身を置いている娼婦の様にも思える狐人ワーフォックスは、銀等級シルバークラスである自分を遥かに上回る強者であり。



 ……この世界にて最初に発生した魔族との戦いの時から唯一、この時まで生き残っていると聞いた──。




 ──単独ソロでの、元白金等級(プラチナクラス)




 紛れもない、最強の冒険者の一人だったのだから。


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