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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
第六章

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謝罪する勇者一行

 ウル、ハピ、そしてローアが門に辿り着いた時、望子は普段見せない表情で……具体的には、可愛らしく頬をぷくっと膨らませた状態でフィンを拙い口調で怒鳴りつけており、その一方で望子を溺愛しているフィンは、何故自分が望子に怒られているのか分かっていない様子を見せていた。


 ここでは何ですしどうぞ中でお話しをと門兵に言われて案内された屯所にて、望子だけでなくウルたちにも散々説教されたフィンはといえば──。


「すみませんでした……」


 未だかつてない程に落ち込みっぷりを見せ、椅子に座ったまま上体ごと頭を下げて謝罪していた。

 

「もぅ! だからちょっとまってっていったのに! いるかさんなんてしらない!」

「うぅ……みこぉ……ごめんってぇ……」


 そんな彼女へ追い討ちをかける様にぷんぷんと怒りを露わにして目を合わせようともしない望子に、フィンは目に涙をいっぱいに溜めて望子の小さな身体に抱きつき許しを乞おうとする。


 彼女にとってはウルたちや門兵に注意された事実よりも、こんな些事で望子との仲に亀裂が入ってしまう事の方が余程重大で深刻な問題なのであった。


「い、いや、こちらも早合点してしまいましたし、そちらが一方的に悪いという訳でも……」


 それを見ていた門兵の一人……リアムと名乗った細身の青年が苦笑しながらも、明らかに年下の少女に縋りつく亜人族デミを見かねて控えめな口調でそう告げる。


「……遠くに見えた青くて綺麗な海がとっても魅力的で……自分を抑えきれなくてぇ……」


 しかしそれでもフィンは望子に抱きついたまま、涙声で彼女なりの言い訳を口にし続けていた。


「まぁ仕方ないさ、あんた人魚マーメイドだろう? ましてやリフィユざんを越えて来たというなら、しばらく大きな水場なんて無かったんじゃないか?」

「……!」


 そんな折、ここまで黙って話を聞いていたもう一人の門兵……リアムとは対照的に体格の良い男性のオーウェンがグズグズと泣くフィンに向けてそう言った事で、彼女はその通りだと言わんばかりにこくこくと頷き、再び望子に覆い被さる形で抱きついてしまう。


「じゃあ、今回はお互い様だって事で。 次からは気をつけてくれるとありがたい。 それと、お仲間もな」


 それを見た彼はうんうんと首を縦に振って、話を一段落つける為に手をパンッと叩いてそう告げた。


「きをつけます……」

「悪ぃなほんと、この馬鹿が迷惑かけてよ」

「私たちからも言い聞かせておくから」


 彼の言葉を受けた望子がペコっと頭を下げて謝罪した事で、それに続く様に二人の亜人ぬいぐるみもそれぞれフィンの頭と肩に手を置いて頭を下げる。


「くはは、形無しであるなぁフィン嬢」


 その一方、正真正銘の魔族であるローアだけは、望子たち以外に頭を下げたくは無いのか茶化すかの如くそう口にしてフィンを無駄に煽り、当のフィンはそんな彼女を涙目で睨みつつぐぬぬと唸っていた。


「それであんたらは……冒険者って事だったが、ひとまず免許ライセンスの提示を頼めるか? 本来順序は逆なんだが」


 ここで漸く本題に入れそうだと判断したオーウェンが、先に名前と職業を聞いてしまった事実を口にしつつも手を伸ばし免許ライセンスの提示を要求する。


「あぁ……ほらフィン。 いつまでも凹んでねぇでとっとと出せっての。 お前以外は全員準備してんだぞ」

「……はぁい」


 ウルがそう声を上げたのを皮切りに、望子たちはあらかじめ用意していた免許ライセンスを彼に手渡すも、フィンだけは海に意識が持っていかれていた為、緩慢とした動作でゴソゴソと革袋を漁り、他の四人より少し遅れて免許ライセンスを提示した。


「それじゃ失礼して──ん?」

「……何か不備でも?」


 オーウェンが彼女たちから受け取ったそれを確認しようとした瞬間、何故か淡く光を放つ免許ライセンスを凝視してしまい、それを不思議に感じたハピが出されていた飲み物から口を離して問いかける。


「いやそういう訳じゃ無いが……これは……」

「先輩? どうしました──え、これ……」


 オーウェンは唖然とした表情のまま手元の免許ライセンスと彼女たちとを交互に見遣ってそう呟き、オーウェンの後輩にあたるリアムが覗きこんで心配そうに声をかけたが、彼も同じ様に視線を止めて固まってしまう。


「……? 何だ、何かあったのか」


 そんな二人の門兵に何が起きているのか全く理解出来ずにいい加減やきもきしていたウルが腕を組み、その腕を指でトントンと叩きながら怪訝そうな表情を湛えて急かすかの様に尋ねてみた。


「え、あ、えっとですね……」

「あの、もしかして……またなにかわたしたちに、だめなところが……?」


 それでもなお煮えきらない様子で返事をしたリアムに、また何かやっちゃったのかなと考えた望子が、男性二人に対しおっかなびっくり問いかける。


 するとオーウェンは一呼吸置いてから、そうじゃないと言わんばかりに首を横に振って──。


「あんたらは……ドルーカの領主様と懇意なのか?」

「「「「「……?」」」」」


 たった一言、確認するかの様にそんな疑問を投げかけつつ、免許ライセンスの内一枚である望子のそれを彼女たちの前に差し出したものの、質問の意図が理解出来ない彼女たちは一斉に首をこてんとかしげ、真剣な二人の門兵とは対照的にきょとんとした表情を浮かべていた。

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