私の髪はもふもふじゃなくて、もじゃもじゃです。
桜の花が綺麗なあの日、私は先輩に告白されて恋人になった。でも、私達がしたあることのせいで、二人の仲に危機が訪れる。私達、このまま別れちゃうの!?
三分で読める超短編な二人のらぶらぶストーリー♡
――桜の花が綺麗に咲いていたあの日。
「君に一目惚れしたんだ。……俺とつきあってほしい」
彼の癖ひとつない黒髪が風になびく。
その日、私達は恋人になった。
彼……先輩は、美しい髪を持っていた。
私は、ひどい癖毛で恥ずかしかった。
でも、先輩が私の髪がもふもふで可愛いと言ってくれたことは、嬉しかった。
それから、私は見た目に気を遣うようになった。
そして、昨日縮毛矯正をかけた。
彼の髪には及ばないけれど、歩く度にさらりと揺れる真っすぐな髪が嬉しい。
先輩、褒めてくれるかな。
そして、待ち合わせ場所に着く。
あれ、先輩まだ来てないみたい。
しばらく待ってみるが一向に来る気配がない。
ふと、隣を見るとアフロヘアの男性が立っていた。
え、まさか……。
「先輩⁉」
嘘⁉サラサラヘアがアフロに⁉
いったい、どうして⁉?
先輩も目を大きく見開き、震えている。
「もふもふがない⁉」
もふもふって私の髪のこと?
先輩は崩れ落ちるように座り込んだ。
そして、私のもじゃもじゃに一目惚れしたこと、髪目当てで付き合っていたことを俯きながら話し出した。
もじゃもじゃに一目惚れしたなんて……。
なんて趣味が悪いんだろう。
じゃあ、もじゃもじゃじゃなくなった私には興味がなくなった?
そんな、先輩と別れたくない。
私は、悲しそうな先輩を置いてここから逃げ出した。
先輩と過ごした楽しい時間を思い出す。
先輩と別れたくないよ。
「待って!」
先輩、追いかけてきてくれたんだ。
そして、先輩は勢いよく頭を下げた。
「ゴメン、君のもふもふが本当に好きだったんだ。でも、もふもふじゃなくてもいい。どんな髪型をしていても君のことが好きだって気づいたんだ」
先輩……。
私も先輩に謝らなきゃいけないことがある。
私も先輩の髪目当てで付き合ったのだ。
先輩には興味がなかったけど、そのサラサラヘアにひかれ付き合った。
でも、今は先輩自身が好きだとわかったの。
私達は抱き合い、お互いの髪を好きになる努力をすることにした。
アフロヘアはイメチェンだったらしい。
私達はお互いが髪目当てで付き合うという、ちょっと変わった恋人だった。
でも、今は違う。
お互いがどんな髪型をしてもいい。
どんな姿でも、好きだと気づけたから。
だから、先輩が禿げても私の髪が灰色になっても好きでいるよ。
ずっと一緒にいようね。