天狗と妖鬼が帰った後、ダンジョンの奥深くでは強大な魔物たちが集まっていた。
天狗と妖鬼が帰った後、ダンジョンの奥深くでは強大な魔物たちが集まっていた。
「20年近くなかったダンジョン攻略が始まったのね?」
綺麗な黒髪の女がワインを啜る。
「ちっ、どうする?相手は一層に侵入する術を持ち、下位吸血鬼を壊滅させる実力まであるってことだろ。なんかのはずみでコアを破壊されたら事だぞ。俺が殺してきてやる!」
男のような口調で話す荒々しい恰好をした赤髪の女性が机をたたいた。
「落ち着け、リリ。ダンジョンの魔物が破壊されたのは痛手だが、スケルトンやゾンビ、下位吸血鬼は簡単に生み出せる。コアには十分にポイントがたまっているからな。対して痛手はない。俺たちがやらないといけないのはこれ以上ダンジョンの侵攻をされないことだ」
金髪の男がレイピアを取る。
「我々は防衛体制に入り、情報の収集を図る。いいな」
「「はっ」」
大理石の机の周りに立つ吸血鬼たちが胸に手をあて、軽く頭を下げた。
あれから一か月、天狗の体もすっかり回復していた。
「それにしても、天狗でも手こずるほどの敵とはなぁ・・・・」
河童が信じられないと首を振る。
「相性が悪かったとも言える。天狗は風を操り、敵を葬るが・・炎に風を当ててもな」
烏天狗が答える。
「ああ、逆に燃え盛るな。全く、難儀な敵だ。我々天狗族ではない妖怪がともに行くべきだったな」
俺と天狗はみんなとは少し離れた場所でこれからについて話していた。
「あれからひと月、そろそろ攻略に入ってもよろしいのでは?」
「ああ、お前の傷も癒えたことだしな。だがその前に、創造する必要があるな」
意識をコアにリンクさせる。
ダンジョン内であれば、何処でも魔物を生み出すことができるのだ。
「召喚 雪女」
氷の竜巻が巻き起こり、中から麗らかな背の高い女が出てくる。
「若様」
「ああ、妖鬼だ。よろしくな」
「はい。なんでもお申し付けくださいませ」
雪女がふわりと笑う。
雪女だ、冷たい笑みを浮かべるものだと思ったが、意外とそんなこともないな。
「お前は火魔法を防ぐことができるか?」
「はい。消すことは可能です」
「わかった。よろしく頼むぞ」
俺はさらにダンジョンコアに念を込めた。
「階層 鉱山を作成」
―鉱山層作成 必要ポイントは20万ポイントです
「やれ」
―上層と下層を入れ替えることができます。
「森を上にしてくれ」
なぜ鉱山を作ったのか。それは武器を生成するためだった。妖鬼になってからというもの、槍を使ってもぽきぽきと折れてしまい、おれない鉄製の武器が必要だったのだ。
「それじゃ、上に行こうか」
天狗、雪女、俺は上の階層に向かった。
真ん中の階層は洞窟のエリアになっていた。
「恐らく、ここから様々な鉱物が取れるんだろう」
天狗が興味深そうに見つめた。
「若様!」
烏天狗たちが転移してきた。
ダンジョン内であれば、入り口と出口に妖怪たちは転移できる。
「これは一体・・」
「鉱山エリアだ。といっても、鉱山の中という意味で、実際に山ではないが」
俺は再びダンジョンコアにリンクさせた。
「召喚 鈩爺」
黒い竜巻と共に槌をもった老人が現れた。
「鈩爺、俺はこのダンジョンの主だ。よろしく」
「ああ、お前さんの武器を作ればよいのじゃな。ここはなんじゃ?」
「採掘ができるようになっている。必要なものは準備しよう」
「なるほどな。それなら、鍛冶場を作ってもよい場所と、きれいな泉を用意してくれんかの?」
「任せろ」
ダンジョンコアに鉱山層に鍛冶場が作れる場所とそこに泉を湧かせる。
転移ができる入り口付近に作成した。
「おお、これなら鍛冶場も作れそうじゃな。水も・・・・・悪くない。すぐに取り掛かるかのぉ」
「鉱石を取ったり、水を汲んだり、助手がいた方が助かるだろう」
「そうじゃな、力仕事が頼める輩がいると助かるのぉ」
「召喚 小妖怪」
一万ポイントを消費し、さらに小妖怪を作りだした。
広くなって、少し静かになっていたダンジョンが再びにぎやかになる。
「こいつらに手伝わせる」
「おお、よしよし。それじゃあ、早速鉄鉱石を掘り出すかのぉ」
鈩爺が洞窟の中に入っていく。
「見えにくいな。 召喚 鬼火」
夥しい数の鬼火が洞窟内にあふれていく。
「ここらでいいかの」
鈩爺は壁に槌を振り下ろす。
すると、ゴロゴロと岩が出てくる。
「これに鉄が含まれとるんじゃ。これを炉に入れ、鉄を作らにゃならん。そこまで時間がかかるわけじゃないからのぉ。お前さんにあう刀を考える。取り合えず、これを運んでおいてくれんかの?それと炭がいるのぉ、小妖怪たちや、どこかから薪を調達してきておくれ。若はわしについてきてくれ」
そうして、俺たちは鍛冶場に戻ってきた。
「武の器、武器とはそのものの器にあったものを選ばなくてはならん。そのものに細胞レベルで合致する武器を選ばなくては折角の器に合わんからのぉ」
「武の器・・・どうすればわかるんだ?」
「簡単よ。わしはな、伝説に残るような武器は作れんが、そのものの器を図るということにおいてすべての鍛冶をするものの頂点に位置するのじゃ。おぬしに会ったとき、すぐにビビット来たよ」
「何が見えたんだ?俺の器はなんだ?」
「さぁ、わからんのぉ」
「はぁ?!」
わかるっつったり、わからないっつったり、こいつボケてるのか?
「ボケとらんよ」
「地獄耳だな」
「るさい! まぁ、鉄を打ちながら、お主の器に、鋳型にイメージを流し込んで、鉄を何度もたたいてやっとこさ形になるのよ。今の時点では何とも言えんがの。三日もあれば、できるから待っとってくれ」
面白いな。そういう考え方もあるんだなぁ
「まぁ、おれは武器のいろはなんてのはわからないからな。お前さんに任せるぜ、頼んだぞ、鈩爺」
「っ!!!」
鈩爺は体に電流が走ったような感覚に襲われた。
「これじゃ、このイメージを流し込むのじゃ、こうしちゃいられん!」
鈩爺はいそいそと鍛冶場を整え始めた。