A2 研修その一
電話が来た。内容は今から来い。研修をするから。らしい。
不安しかない。仕事の内容を全く聞かされてないからだと思う。
確か……ぶっ殺すとか言ってたような気が
ああ!とにかく行くしかない!
すぐに部屋を飛び出しあの場所へと。
「今日は青色なんだ。」また建物の色は変わっていた。この間は白だったのに、今は青になっている。
俺は同化しているドアを見つけ、少しづつ開けた。
「あ、来てくれたんだ……」
中に居たのは大賀さん一人だった。
「研修って何をするのですか?」
気楽に聞いたのだが、顔を逸らした。
そして、突然泣き出した。
「ねぇ……目の前で人の死を見た事がある?無いよね。そうだよね……」
分からない。何故泣いているのか俺には分からない……
「あ、ごめんね。じゃあ研修を始めようか……」
手で目を拭いさっき泣いていたとは思えない程の笑顔でこっちを見た。
「こっちきて!」
手を振ったのでその場所へと行く。だが、そこには異次元が広がっていた。
「ようこそ。別世界へ。」
大賀さんはそう言った。さっきまで部屋だったのに、そこは空間が歪んじゃって先も見えない。混沌とかそんなもんじゃない。これは恐ろしき夢の様であった。
「とりあえず入って!」
大賀さんは別世界に入っていく。入らない理由には行かないので、俺も恐る恐る入って行った。
「……森?」
「そう森!」
目の前には木が生い茂る。不思議だ。さっきまで確かに部屋に居たのに、今は森に居る。
すると、大賀さんは突然空に手を伸ばした。
「来い!リーキュアセス!」
その瞬間、体は光に包まれ、私服の様なスーツ姿から、黒い鎧へと変わってゆく。
「ふぅ……装着完了っと。さて、君だね。ん~何か好きな言葉を言えば良いんだけど…」
突然、好きな言葉と言われても全く思いつかない。とゆうかなんで手を挙げたら、変身出来るのか?!理解が追いつかない……
「已己巳己ってのはどうですか?」
咄嗟に思いついた言葉だ。しかし、両手でバツマークをし、
「ダメ。なんか漢字はダメみたいなんだ。」
と返事をした。
基準がよく分からない。
「ほら、なんか好きな言葉だよ!漢字以外で!」
そこでまた咄嗟に思いついた言葉を言った。
「ジャスティスメーカー……ってのは?」
それを伝えると、手で丸を作った。
「それいい!じゃあ早速変身してみよう!まずは手を挙げて」
言われるがままに手を挙げた。
「そして、武器と鎧が降ってくるのをイメージして言うんだ。その言葉を。」
イメージ……降ってくるイメージ…
「来い!ジャスティスメーカー!!」
力の限り、叫んだ。そして、体が熱くなるのを感じた。だんだん足から重くなっていく。
そして、冷めた時にやっと目を開けた。
「すごい!すごいよ!一発で成功しちゃうなんて!変身もかっこいいし!」
どうやら俺の変身は赤色らしい。腕から足まで赤色でる事は間違いない。いつの間にか握っていた武器は見たことない形をした、槍のような剣だった。
「あれ?その腰に付いてるのは?」
腰にはなぜかあの欠けた十字がぶら下がっていた。何処から来たのだろう。
「証は所有者から離れない……か。ま、いいや!戦うよ!」
「え!?何とですか?」
「あれだよ!あれ!」
指さす方向にはドロドロに溶けた、人形の何かがいた。
「ま、スライム的なの。あれを今から殺すからね。ちょっと見てて。」
スライムに向かって大賀さんは走った。そして、上空に飛び上がりスライムを真っ二つにした。
「ねぇ?簡単でしょ?」
飛び散ったスライムの破片を振り落としつつ笑う。
心の中では逃げ出したいぐらいだったのだが、なぜかそうはさせてくれないらしい。
それはこの十字のせいか。なんだか熱くて……たまらないんだ。
そうだ。生きてるのか。
この十字は証なんかじゃなくて生きてるんだ!
「行ってきますね!」
俺はそう告げる。
ゆっくりとゆっくりとスライムに近づくと、スライムは睨んだ様に感じられた。俺はそれにそっと左手を添えた。
「なんだ。確かに簡単かも。ぶっ殺すなんてさ。」
天から刃が降るように俺は武器を振り下ろした!歪む物体、飛び散るスライム。なんとも簡単に一つの命は吹き飛んだ。
「狂気がある。それは諸刃の剣となるよ。」
千賀さんはそう言った。
こうして研修の一日目は終了した。