幽体離脱の周波数❖4
目の前には綻陽がいた。
なにか、長い夢を見ていた気分だ。
いや、これも夢の一幕のような感覚。
体は嫌に重いけれど、地縛霊のようにしてこの世界にいるには、仕方のないことなのだろうか。
綻陽は俺を覗き込むようにして、顔がとても近い。その目が見る見る内に丸くなり、抱きついてきた。
「んぅ!?」
息ができなくなる。綻陽の身体に上から押さえつけられてしまったのだ。それよりも驚きなのは、綻陽に触れることができたこと。
俺はそれが、とても嬉しいと思った。
「良かった…! 私、殺しちゃったのかと思った…!!」
綻陽は無我夢中で抱きついて離さない。どうやら膝枕をしてくれていたらしく、抱きつかれると綻陽の髪が俺の腹をくすぐる。膝と胴に顔全体が包まれて動けない。俺は上手く力が入らない腕に力を込めて綻陽を軽くタップした。
「息が、出来ん……!」
「あ、ごめん」綻陽は我に返り体を放す。
「どれだけ、寝てた?」俺は綻陽の膝枕の上で苦労して寝返りを打つ、背骨が石のように凝り固まって痛む。
「三日間、回復も遅くて」
「三日…そんなに……」何か、夢を見ていたような気がするが、今では思い出せない。
「それより、綻陽こそ、体は大丈夫なのか?」
「えぇ。真白さんを食べたおかげで、こっちはもう大丈夫」
「なら、良かった」
綻陽は小さく、馬鹿。と、呟いて俺の頬をを撫でた。




