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海と空のお話  作者: kn
31/33

後日談 一 クリスマス

季節外れですが。

本当は年内に完結させて、クリスマスに間に合わせたかったです……。


12月24日。

世間ではクリスマスムード一色で、街は色取り取りのイルミネーションと幸せそうな人達で溢れていた。

俺と空も青い光のトンネルを手を繋いで歩いている。

ただ、他のカップルと違うのはあくまで退魔師としての仕事で来ている、という点。


付き合い始めてから、初めてのクリスマス。

退魔師の仕事と言われて少し膨れっ面になった俺だが、実はクリスマスの仕事は人気があるらしい。

カップルとして街に紛れるので、パートナーを探す男女は特に嬉しい仕事なのだそうだ。

デート費用は協会持ち。良い雰囲気のデートスポットを回れるとあれば確かに納得だ。


かく言う俺達もまだ高校生。都心に出て来てデート、なんて贅沢はなかなか出来ないのだ。

まぁ勿論、仕事は仕事でしっかりとこなさなければならないのだが。


ちなみにこの時期は怪異の出る頻度も高い。

一つはクリスマスだから、と言えば察して貰えるだろうか。もう一つは年末年始と言う節目だから。

今も寂しげな雰囲気を醸し出す怪異を浄化したばかりだ。因みに普通の人は基本的に魔力を感知出来ないので、人前でもそうそうバレる事はない。

これが悪霊だったりすると危ないので、他の協会員とチームを組んで人払いをしたりする。


「海、そろそろ移動しようか」

「次は何処に行くの?」


歩き通しだから少し休みたいのだが。

と、不満が顔に出ていたのか、空が笑いながら頭に手を置いた。

くそう。このパターン多いな。


「夕食は店を予約をしているから、そこにな」

「おー、マジか!」


いや、別に色気より食い気というわけでは断じてない。


最寄駅から電車に乗って暫く。目的地の駅に着くと、少し歩いたお店に入った。

内装はクリスマスという時期を抜いても煌びやかで、結構お高そうなお店だ。


うーん、費用を負担して貰えるとはいえ、良いのだろうか。

と言うか、場違いのような感じがしてソワソワしてしまう。

服装はそれなりに気を遣って来たつもりだけど……なぁ。


「やっぱり物珍しいか?」

「あ、うん──と言うか、なんで空はそんなに落ち着いてるの……」


空はなんか場慣れしている感が出ていて悔しい。

うん、まぁ同時に頼りになるなぁ、なんて嬉しくも思ってしまうのだが。


「失礼します。焼き立てのパンはいかがですか?」


なんて酵母の甘い香りがフワリと漂うバスケットを持って店員さんがやってきた。断れるわけないやろ!

店員さんの仕草は洗練されていて、やっぱりサービスが違うんだなぁ、なんて思ってしまう。


料理はコースでちょこちょこと出て来る。

一品一品の量は少なくて、これで満足出来るのかなぁ、なんて思っていたら、メインディッシュがでけぇ。

俺のはスタンダードの大きさで、300グラムほどあるローストビーフだ。

シェフが大きな肉の塊をキャスター付きの釜で持ってきて、目の前で切り分けてくれるのだが、ステーキのような厚みに圧倒される。

つか、300グラムとか肉単体で無理して食べ切れるくらいの量だろ……。

美味しかったものの、結局俺は半分近く残してしまい、余った分は空が全部食べてくれた。

お前、一番大きな500グラムで頼んでたよね?すげー分厚かったよね?

相変わらず強靭な胃袋を持っていらっしゃる。


「ありがとうございました。またのお越しを、心よりお待ち申し上げております」


腰から綺麗なお辞儀をする店員さんに見送られて店を出た。

周りはすっかりと夜の帳が下りている。本当ならここからが恋人の時間なんだろうが、取り敢えず学生な俺達はそろそろ帰らなければならない。


帰る前に少しだけ歩こう、と言う空の手を握って、レッドカーペットの上を歩く。

周りの木々は白を基調にしたイルミネーションに彩られていて、きょろきょろと周りを見ながら歩くだけでも楽しい。

お、巨大なクリスマスツリーがある!……我ながら、昼間だって散々景色を見て回ったくせに、現金だなぁなんて思う。


「海、あれ」


空が指差す方を見ると、一際輝きを放つ……あれは、シャンデリア、かな?

近付くにつれてその大きさに圧倒された。天辺はちょっとした建物よりも高い!


「お、おぉー!」


歓声を上げる俺の様子がおかしいのか、空がクスリと笑みをこぼした。

う、むぅ……恥ずかしい……。


「大きいよな。八メートルくらいあるらしいぞ」

「ほー。空が4人半くらいだな!」

「なんで俺が基準なのか……」


キラキラと輝くシャンデリアを眺めながら、他愛もない話をしていると、空が少し、居住まいを正した。

その表情は緊張しているように見えるが……。

ま、まさか。この人がいっぱい居る場所でキスでもしようとしてるのだろうか。

確かに今日はクリスマスだし?他にしている人だって居たけど?ま、まぁ今日くらいはいいか。


「海」

「う、うん?」

「今年は色々あったな」

「……ん?まだ年末の挨拶には早くね?」

「ああ。まぁそうだな」


そりゃ、今までの常識がひっくり返って、性別まで変わって。

更に空と付き合う事になるなんて、去年の今頃は夢にも思って居なかったよ。


「こんな事を言うのも時期尚早か、とも思うんだが」


どんな話の流れだろうか。首を傾げて空の言葉を待つ。


「……前に、海が隣で笑っていてくれれば、それで良いって言ったのは覚えているか?」

「あ、あー。うん、まぁ」


心臓にクリティカルヒットしたからな!


「これから先も、ずっと」

「うん」

「一生、俺の側で笑って居てくれないか?」

「──へ?」


え、あれ。あれー?これって、あれ?なにこれ?

真っ白になる頭の中と反比例するように、顔が熱を持っていく。

あ、う。空が俺の言葉を待っている。何か言わなきゃ。

よし、クールになれ、深呼吸だ。


はぁふぅはぁふぅ、と呼吸を繰り返しているうちに、少し落ち着いてきた。

それと同時に、周りの状況が見えてきた……えっと、めっちゃ周りの人から見られてるんだけど!?

固唾を飲んで、ってこう言う感じなんだなぁ、うん。


あー、あー。うん。


「──ありがとう、空。喜んで!」


答えるのと同時に抱き締められ、周りからは歓声が上がった。

少し遠くにいて、何が起こっているか分からない人までこちらを向く。

う、ううう。恥ずかしい、恥ずかしいけど。


両手で空の頬を挟んで、爪先立ちになると、唇に軽く口付けをした。

更に一層の歓声が上がったのは……言うまでもないよな。

書き上がって即投稿していて推敲をしていないので、誤字やおかしなところがあったらごめんなさい。

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