十三 どういうこったー
最近、ちょっと、身体の調子がおかしい。
集中してない時は頭がボーッとしたりだとか、身体が火照ったりだとか。
あと、気付いたら、空をジッと見ていたりとか。
何だろうな、これ。
今だって、屋上で空と弁当を食べているんだが、落ち着かない。別に嫌なわけじゃないんだけど。
俺が作って来た弁当を、食べんのは早いながら、とても美味しそうに食べてくれている。
早弁用に、と思ってたんだが、空の中では陽子さんに作って貰った弁当が早弁用になっているみたいだ。
ま、嬉しそうだし、どっちでもいいか。
「あー、美味かった。ごちそうさん」
「ん、それなら、良かった」
「……海、どうかしたか?」
「ん?」
「いや、暗いわけじゃないんだが、なんかフワフワしているというか……」
あー、俺が聞きてーわ。
また暁さんの知り合いに診て貰った方が良いのかねぇ。
でも別に気分が悪いわけでも体調を崩しているわけでもないから、異常なし、としか言われなさそうだ。
何はともあれ、まずは空に相談してみるか。ただ、もう昼休みは終わりに近いし、今からは無理だな。
「空」
「なんだ?」
「意見が聞きたいから、今日うちに来て」
「そうか。分かった」
ここんとこ、空は俺の近くにいる事が多い。
前まで結構頻繁にやってた、妖怪を退治に行くアプリも、あまりやってないみたいだ。
なんか悪いなー、と思いつつ、嬉しい俺もいる。ほんといい奴だよなぁ。でもあんま束縛すると、そのうち離れてっちゃうかな。
むむむ。それはやだな。
放課後になって、俺の家までの帰り道。空と横に並んでゆっくりと歩く。
身体が縮んで、パーソナルスペースも縮んだのか、歩いているとちょこちょこ肩が当たったりする。
今は身長差が頭一つ分くらいあるから、肩同士が当たるわけじゃないけども。
「もう結構あったかいなー」
「だな」
なんて他愛のない事を話していたら、例の公園に差し掛かった。そう言えば、結局あの後に公園に入る事はなかったな。
まだ日も高いし、少しくらい寄り道をしても大丈夫だよな。
「空、ちょっと公園に寄らない?」
「ああ、寄ってくか」
公園の中には、同じように散歩をしている人が結構いる。年齢層も年下の子達から爺さん婆さんまで様々だ。
俺と空も、小さな頃からたまに遊びに来ている。一番奥にある一番大きな木では、よく木登りをして遊んだ。
そうすると、管理人みたいなおっさんが『女の子は木登りなんてしちゃ駄目だよ!』なんて怒るんだ。
『俺は男だ!』って返すんだけど、毎度信じて貰えなかったなぁ。
挙句、『お兄ちゃんも妹にちゃんと注意しなさい!』なんて空が巻き添えを食うところまでがテンプレートな。
今となっちゃ、ほんとに女になっちまったから、怒られても何も言い返せない。皮肉なもんだ。
まぁ今はスカートだから登る気もないけどさ。
ところで──この前はやけに気を引かれたこの公園。
なんであんなに、ここに入ろうと思ったんだろうか。
一通り見て回ってもその理由は分からない。
「そろそろ行くか?」
「ん」
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「んで、昼間の話の続きなんだけどさ」
「おう」
家に帰り着き、俺は自分の勉強机の椅子に、空は俺のベッドの縁に腰を下ろした。
「正直俺にも良く分かんないんだよ」
「そう、なのか」
「で、暁さんの知り合いに診て貰うのもありかなって」
「体調が悪いのか?」
「違うと思うんだけどなぁ……まぁ、適当に症状を挙げてみる」
頭がボーッとする事がある。
ついでによく眠くなる。
熱があるわけじゃないのに火照る。
なんか胸がもやもやする。
ちょこちょこ腹が減る。
喉もよく渇く。
あ、力が抜ける事もあったな。
あれ?なんか風邪の初期症状っぽい?
「……そう、か」
空は顎に手を当てて思案顔だ。
いや、相談しておいてなんだけど、悩む必要なくね?
これ絶対風邪だろ。
「海、ちょっとこっちに来い」
空は一頻り考えた後、手招きをした。
なんだろう。首を傾げながら、空の方へ近付く。まぁ、部屋ん中だから二、三歩だけども。
空の目の前に立つと、空は俺の手を取って引っ張った。すると当然、引っ張られた俺は空へダイブ。あ、もちろん空を飛んだって意味じゃないぞ。
──ん、ちょっと、え、いや、どういう事だ。
俺の目の前には空の首筋がある。
踏み止まったので、辛うじて身体が密着する事はなかったけど、今の姿を誰かに見られたら勘違いされる事間違いなし。
まぁ、玄関に鍵は掛けてるし、父さんも母さんも居ないんだから誰に見られる心配もないけどな。
空の片手が俺の頭を撫でて、もう片方の手は背中の上に乗っている。こいつ、手ぇでかいなー。
さらさらと撫でられる感覚が心地良くて、背中に添えられた手が暖かくて、頭がつい、ボーッとしてくる。
なんだろう。なんでだろう。
普通なら、こんなに近付く事って、ないだろ?寝惚けて抱き付いてた事とかはあったけどさ。今は、普通に抱き寄せられている感じだぞ?
男同士だったらこんなの、おかしいだろ?
なのにさ、嫌悪感とか、ないんだ、これが。
ん、と身を捩ると、空の手が触れてる背中が擦れて、お腹の辺りから背中を通って、頭まで軽い電流が走った。
どんどん身体から力が抜けていって、ベッドの縁に座る空に、撓垂れ掛かっていた。
そしたら、空は背中にあった手を回して、ぎゅ、と力を込めた。んーむ、なんだろう、これ。
甘えて、いいのかな。甘えて、いいんだよな?
目の前には空の首筋がある。
すーっと大きく深呼吸をすると、空の匂いが鼻腔いっぱいに広がった。
ああ、えーと。えーと。どうすればいいんだろう。
融けた脳味噌で考えを巡らせる。
いや。いや。
こう言うのは、本能に任せた方が上手く行くんだ。
だから、俺は頭を空っぽにして
──空の首筋に、牙を突き立てた。
口内にナニかが流れ込んできた、その瞬間に。
頭に鉄球を叩きつけられたような衝撃と、途轍もない快楽と、多幸感で、俺の意識は、一瞬で吹き飛んだ。
この辺りが書きたかったと言っても過言ではない。
ここら辺で折り返しにして、間延びしないよう完結させたいところです。
書き溜めは二十まで出来ているのですが難産の連続です(´▽`;)




