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短編集

あいつが死んだとわたしは聞いた

作者: 巫 夏希

 あいつが死んだ、って聞いたときはしばらくセミの鳴き声も遠くどっかに消えていったようだった。

 あいつはわたしの親友で、友達で、ただ一つの存在で。ただ、なんて言えばいいのかな。世間一般では、これを幼馴染というのかもしれない。

 あいつとはいろんなことがあった。田舎の学校だからクラスも一つしか無くて、当然あっという間に仲良くなる。私たちが仲良くなることは当然だったのかもしれなかった。

 毎年開催されてた夏祭り。毎年どちらかがさそってた。わたしがさそった次の年は、あいつがわたしをさそう。簡単な約束だったけど、それはずっと守られ続けてた。

 今思えば、それってとても幸せだったんだな、と思いながら。

 あいつの話を聞くと、どうやらあいつは一人で死んだらしい。会社に来ないのを不審に思った上司が家を確認したら……ってことだった。

 あいつとわたしは高校までずっと同じだった。田舎だからどんどん高校までの距離は離れていってたけれど、それでもわたしたちの仲は変わらなかった。

 あいつが都会に行くと言いだしたのはそれから少ししてのことだった。わたしは都会なんてこれっぽっちも考えてなかった。この村で、この場所で、この日常で、あいつと一緒に居られればそれでいい。子供っぽい理屈だったけど、わたしにとってはそれが一番の理想だった。

 あいつはいつも一番最初にわたしになんでも話してくれた。簡単なことなら昨日のテレビの感想。難しいことを言えば上司や都会についての感想や文句。わたしも話したくていろいろと話すのだけど、それでも都会の情報量にはかなわない。だから、気付けばわたしは聞き手に回ってた。

 それがなんだか、寂しかった。

 あいつはいつもわたしに話してくれたのに。

 わたしなら、あいつのことを解ってあげられたのに。

 それでも口数が減ったり、元気がなくなってきてるあいつの様子を見てると、なんだか不安になってたのは事実だった。

 ねえ、だいじょうぶ?

 わたしはあいつに語りかけた。

 けれど、あいつはいつもと同じように、だいじょうぶと言った。

 そんなんでわたしのことを出し抜けると思ってたのかよ。笑っちゃうくらい、ダサいよ。

 変なことくらい、わたしだって解る。だってわたしはあいつとずっと一緒にきたのだから。

 風が吹き付ける。この先は何も見えない。けれど、確かに希望はあった。

 わたしは笑って、どこにもいないあいつに言った。

 待ってろよ、会ったら一目散に殴ってやるぞ、って。

 そうしてわたしは笑顔で足を踏み外した。こうしてまっさかさま。救いの無いものがたりはこれにておしまい。めでたしめでたし。


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