003
手紙の字体自体は母国語だった。
まぁ確かに、妹だってアジア系の美少女だったけどさ。
あれだ、よくあるじゃないか。
異世界語がご都合主義いう世界の必定によって、僕らの浸しみやすい文章になっているだけなんだ。
僕は昔見たアニメの都合に合わせて、今の現実をそれに当てはめることにした。
そして、手紙の内容は以下の通りだった。
妹へ
俺は血魂式が嫌なので、自殺することにしました。
これから死ぬ俺に対してどう思ってたかは知らないけど、正直に言うとお前の世話をするのが疲れました。
大して体も強くない俺がどうして毎日毎日働かなきゃいけないのかと、いつも考えていた。
それに、お前だけ頭が良いからって楽な仕事ばかりしてて腹立たしかった。
腹いせに、俺が苛立ちをぶつけったって聖人君主のように正論をぶつけてくる。
はっきり言って、うざかったーーーー
続きを読まずに僕はそれをビリビリに破り棄てて、手紙の相手に憤怒する。
「お前の方がーーうざいんだよ!!!!」
何なんだよ。
皮肉まみれのラノベ主人公か、コイツは。
あんな可愛い妹と同じ屋根の下で生活できるとか、どんだけ俺得か理解しろよなクソ野郎。
それになーーどう見たってお前が世話されてそうな引きニートじゃねーかよ。
美食評論家と化した俺は以後ーー女子との関わりが殆どなく、ここに転生するまでアレだったっていうのに、何なんだコイツは。
人生やり直せるなら、兄思いの妹と毎日生活してーよ。こんちくしょう……。
目の前に居たら、一発殴り殺してやりたいってーーソイツは俺なのか。
待て……俺なのか?
えっ? これってーーそいつの体なの?
でも、自殺しましたって書いてあるじゃん?
けど、文章だって母国語じゃん?
それにーー結婚式じゃなくて血魂式じゃん?!
衝撃の事実だった。
同時に、手足の指先から絶望で凍りついていくのを感じた。
僕は婚約者ではなく、同じ血魂式とやらに選ばれただけってこと……?
だから、妹は泣いていた。
名前からして余程辛いーー軍隊訓練のようなものだろうか。
なら、泣くほど嫌なのも納得できる。
僕だって、できればやりたくはない。
でも、こんなに可愛い妹と一緒なら、まぁいっかと思えてしまう。
ペアルックの服を一緒に着る仲だもんな。
妹から寄せられている好意は本物とみた。
僕は僕ではない誰かに寄せられている好意を存分に享受する。
そして、妹の呼びかけにスキップで応じてーー家を出る。
あぁ、なんてよく出来た妹なのだろうか。お兄ちゃん結婚したいよ。
今後の登場単語について
メリウス
一面を巨大な防護壁に囲まれた都市国家。
荒廃した世界において、メリウスで生きていくのが最も堅実な生き方である。
随時、情報を開示していきます。