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002

 僕は異世界に転生した。


 そして、目の前には僕を起こしてくれる貧乳ツインテール美少女がいた。


 僕は呼吸をするように反射的に宣言した。


 結婚してください、と。


 それに対し、彼女は答える。


「お兄ちゃん……。血魂式はこれからだよ」


 ーーあああああああああああっ?!

 ーーなんて素晴らしいんだ、この世界は!!!!


 内なる魂は、聖処女に再び再開したフランス元帥を彷彿とさせる狂気的な雄叫びを。

 さながら、時を止める吸血鬼のようなポーズで叫んでいた。


 近親者との恋愛は各国では大方、法律という超えられない防護壁があるのだが。


 だが、この世界にーーそれらを拒むものは何もないのだ。


 ーーだって、ここは異世界だもの。


 あまりの嬉しさで、妹から「大丈夫?」と声を掛けられるまで三白眼だったらしい。

 全くーーこれじゃあ、楽しい楽しい結婚式が台無しじゃないか。


 僕はこれから愛を結ぶ相手と朝食を食べようとしてるのだが。

 妹は小さな冷蔵庫らしき物から何かを取り出して、テーブルに並べていく。


 まぁスラム街みたいに必要最低限な物しかない部屋だなって思ったけど……ね?


 所々欠けた皿の上にフルーツのないショートケーキ(正確には、スポンジ生地に生クリームらしきものが塗りたくられている)が一切れだけである。

 コップの水垢も少し目立つ程度に残っている……。


 だが、妹の作ってくれた料理は神聖な聖遺物だと魂に刻み。

 徐にスプーンのようなもので(すく)って、それを口に入れる。


 口触りのよくない生クリームはそこまで甘くなく、あまり好んで食べたくなるものではない。

 そして、生地は乾いたスポンジのようにパサパサで水分が欲しくなる。


 端的に言うと、美味くもないが不味くもない。


 昔、同級生の女の子が作った手料理を美食評論家のごとく詳細に酷評したら、メテオインパクトを頂いたことがあったがーーーー。


 つい最近までーーあらゆる美食を堪能して肥え太った味覚は、思わず尋ねてしまう。


「えっ、これって……」

「今日で最後になるかもしれないと思って……。甘いお菓子なんて初めて食べちゃったからかな、泣きたくなんかないのに……」

「それって、どういう……」

「だって私達、血魂しないといけないから……」


 ケーキを食べるのをやめると顔を伏せ、大粒の涙を流す。


 女の子の泣き止ませ方が分からずに、泣き崩れる妹を思わず抱きしめる。

 少女の暖かな体温と聖水が僕の胸元を侵食していく。


 少女の聖水はプライスレスなので、あの料理のことを忘れてーーこのまま時が止まればいいのになんて、僕は新たな異世界に酔いしれていた。


 本当、側から見たらーー泣いている妹を前に精神を高揚させて気色の悪い笑みを浮かべている変態なのだが、ポケットに一枚の紙切れが入っていてーーようやく認識する。


 この体は、他の誰かの体なのだと。


「ごめんね……。お兄ちゃんだって辛いのに、私ばっかり甘えちゃって。血魂式まで余裕があるから、ちょっと一人にさせて欲しいな」

「あぁ、誰にも言わないでやるから。ゆっくりしてな」

「今日のお兄ちゃんっていつもと違うね。なんだか、別の人みたい……」

「えっえええ、え? そっ、そんなわけないじゃないか。わっ、わ笑わせるなよ」

「だよね? 血魂式の準備とかしてくるよ、お兄ちゃん」


 ーー女の勘って、凄いな。


 少しだけ笑顔になった妹を俺の嫁と勝手に決めて、僕は左手ポケットの手紙を取り出す。


 小さくも大きくもない粗めの手紙を何も考えずに、妹カタルシスに浸りながら読み始めることにした。

 今後の登場単語


コア


 化器や神徒、はたやーーあらゆる道具の動力源やCPUとなっている元は透明で正八面体のクリスタル。

 用途によって色を変色させ、様々な用途に転用可能。


 そして、エネルギー資源の枯渇したこの世界にとって必需品であり、無くてはならないもの。

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