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ーー僕の人生って、なんだったのだろう。
一時でもクラスの人気者になることはなく、高校受験に失敗した。
それでも必死に勉強して大学進学を目指すが金銭面の問題がついて回り、仕方なく就職をした。
就職先はブラック企業で、安い賃金にサービス残業。
夜遅くに帰宅して、誰のために生きているのか分からない生活を送っていた。
そして、過労により体を壊した僕はーー二十歳にして無職となった。
いっそのことーー異世界に転生して可愛いヒロインを現代知識で稼いだ金ではべらしたいが、そんなにうまい話はなく、僕の貯金残高は九千五百円であり、僕の価値はそれと同義なのである。
水着になってスーパーの精肉コーナー並べられたとしても、高過ぎて買ってくれる人は一人もいないだろう。
だからといってーー自殺しようと色々なスポットに回ってみたが上手くいかず、携帯ゲーム機で時間を潰す日々である。
こんなどうしようもない僕にもーー特技らしきものはある。
らしきものということに語弊はなく、それ単品では意味を成さないからである。
相手の行動を見切る力ーー見切りが他の人より上手いのが唯一の取り柄だ。
武道・格闘技で、相手の動きや構えなどからその技や出方などを判断することと言った方が分かりやすいと思う。
だが、判断ができた所でーー攻撃を回避できるだけの運動神経が無ければ意味がない。
その特技を活かせることを挙げるとしたら、ハンティングゲームが人より上手いというだけである。
最強クラスの敵でさえも無傷で倒せたことを友人に自慢していたが、社会人になっては過去の栄光でしかない。
ーーそんな僕の人生も、今日で終わる。
人生のゲームオーバーという奴だろうか。
薬局やドラッグストアで集めた様々な市販の薬とドクぺを混ぜた魔法の液体があれば、楽に別の世界に行けると思ったのだ。
ゲーム内にある元気になるイカれた薬に些か似ているが、気にしないでおこう。
そして、僕は最後の晩餐を済ませてビールジョッキでゴグゴクと喉越しよく飲んで(お酒は苦手で全く飲めないのだけれど、気分だけは味わいたくて購入したものである)空っぽになったそれを見て、テーブルに置く。
その後、僕は穏やかな眠気に誘われる。
これで、僕という何の変哲もない一人の命が終わる。
ーーせめて、来世になったら英雄にでもなってくれよな。
誰にいうわけでもなく、僕はそう呟いて眠りにつく。
次に起きるわけでもないのに、何を言ってーーーー。
眩い朝の日差しが差し込む見知らぬ部屋で、貧乳ツインテール美少女が僕のために泣いてくれている。
突如として抱きしめたい衝動に襲われるが、僕の体は幾分幼くーーなっていた。
十代後半くらいだろうか。
デブではないのは幸いだった。
そんな現状確認をしているとーーーー。
「起きて……お兄ちゃん。起きないと殺されちゃうよ!!
ねぇ、起きてってばっ!!」
「結婚してください」
「お兄ちゃん……。血魂式はこれからだよ」
「なんですとっ!!」
僕は異世界転生に成功したようです。
今後登場する単語について
化器
コアと呼ばれるクリスタル状の結晶を原動力とし、近接形態と射撃形態の二種類が存在する。
また、コアから魔力を放出することによって魔弾による射撃攻撃が可能となり、主力の戦力として期待されている。
それゆえ現段階において、魔力量で兵士の優劣が決定される。
今後、新たなる情報が開示されていきます。
魔導士
デルタ因子を自らの体に取り入れることで、魔力を生成でき、なおかつ強靭な肉体を手にした人物の総称。
メリットが大きい分、デルタ因子に適合しなかった場合は、激しい発汗作用の後に遺伝子レベルでタンパク質が組み替えられーードラゴンに変化してしまう。
魔力
この世界において、どんな人間でも少しは持っている体力や生命力といったものとは全く違う分類のエネルギー。
魔力の量は人それぞれである。
神徒
この世界において、正体不明の外敵であり、人類を脅かす脅威。
コアを原動力とし、人のみを執着的に殺し、コアを破壊しない限り、活動し続ける。
神徒の持つ化器をワイバーンが使うことも可能である。
ドラゴン
デルタ因子の投与に失敗した者の成れの果て。
人の意識があるかどうかは不明。
ただ、人間を庇うなどの行動を行った種も存在する。
神徒によって付けられた制御装置により、操り人形になってしまうために龍化する前に殺処分される。
適合率が高い者が失敗した場合ほど、強さや魔力耐性を有する。