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その拳、魔法より強し  作者: 一崎
その拳、魔法より強し
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保健室

 さて、俺は眼鏡の案内によって、無事保健室に到着していた。だけれども、ここが本当に保健室なのかどうか、俺にはまだ定かではない。

 というのも、この保健室は保健室らしさというものが完全に欠如しているのだ。

 まず、保健室の象徴のようなアイテムであるベッドが存在していない。

 それから、保健室特有の、あの薬品臭がまったくしないのだ。それもそのはず、この保健室には、それらの薬が一切用意されていなかった。


 どころか、この部屋にあるのは机と椅子がワンセットだけなのだ。

 その保健室唯一の備品の上には、白衣を着た男が座っていた。


 「おやおや、ようこそ、生徒。よく来たねぇ、僕の研究室へ!」

 

 白衣の男は、心底嬉しそうに両腕を広げて、自慢の玩具を見せるような仕草をしている。怪しいことこの上なかった。だからこそ、俺は、


 「おい、眼鏡。ここは保健室じゃないようだ。帰ろう」

 

 踵を返して、俺は眼鏡称保健室から出ようとした。けれども、眼鏡が俺の学ランの袖をぎゅっと握って、阻止してきた。止めろよ、そういうかわいい動作は女以外はしないでくれ。


 「大丈夫だよ。ほら、見てよ。白衣着てるよ、白衣」

 「お前、白衣着てるのは医者だけじゃねぇからな」

 

 学者だって着ているし、コスプレイヤーだって着ている。あと、昔見た露出狂も白衣を着ていた。直後、ぶん殴ったが。


 「とにかく、俺は帰るからな。あんな怪しい奴とは一緒にいれねえ」

 「それ、探偵ものだったら次に死ぬ奴の台詞だからね。それよりも、アイザック先生! 急患です。この人、指の骨が折れてます」


 ふむ、とアイザックと呼ばれた先生が一度頷く。それから自身の顎に手を添えて、何かを考えるような素振りを見せた。しばらく悩んだ後に、アイザック先生は質問した。


 「ところで、そこの眼鏡君。きみの名前とクラスは?」

 「一年Аクラス。グリム・グレイムです」

 「それでグリムくん。きみ、もしかして部外者を学校に入れたのかい? ぼくはね、部外者は治療しないんだ。なぜなら、怪しいからだね」

 「いえ、本人はこの学校の生徒だと言っていた気がします」


 堂々と言う眼鏡。お前はもっと人を疑った方がよい。


 「でもね、グリムくん。それは不可解だよ。だってね、ぼくはそんな生徒見たことがないんだ」

 「そりゃあ、この学校は生徒がたくさんいますし、見たこともない生徒もいる筈です。それでは、彼がこの学校の生徒ではないという根拠にはなりません」


 アイザック先生相手に、一歩も引かない眼鏡。さっき会ったばかりだが、俺だって少しくらい眼鏡のことをわかったつもりだ。普段のこいつは、気弱で臆病なのだろう。だが、それと同時に誰よりもお人よしなのだ。クラス委員ぽいやつなのだ。こいつは見ず知らずの俺の為に、ここまで頑張ってくれている。


 本当にいい奴なのだ。


 「もういいよ、眼鏡。ありがとよ」

 「よくないよ、折れているんだから。あと、眼鏡はよくないよ」

 「いいんだよ、眼鏡。病院行って来るからさ」

 「病院までどれだけかかると思っているの? あと、眼鏡はよくないからね」


 たった五分くらいだろうに。むしろ、この保健医に見せるよりも確かだろう。というよりも、俺は男の保健医というだけでもう駄目だ。セクハラかもしれないが、俺は保健室には女の教師じゃねぇと許せない。

 もうこの際、お年寄りだろうと構わない。

 男は駄目だ。なんか嫌だ。


 「アイザック先生、意地悪を言わないで早く治療してあげてください。折れてるんですよ」

 「でもね、部外者は困るんだよ。ぼくはこの学校の生徒、一年のAクラスの一人を除いて全員を把握しているけれど、彼のような目付きの悪い子は知らないんだ」

 「それはぼくですか!? ぼくだけピンポイントで範囲外ですか!」

 

 眼鏡絶叫。

 まぁ、確かに眼鏡は地味だからな。気にしているのだろうか。だが、眼鏡は見た目はよい方だし、性格なんて完璧だ。だから、頑張ればモテると思う。

 めげるな、眼鏡。

 

 あと、俺はそこまで目付きは悪くない。寝起きに鏡を見て、あまりもの目付きの悪さに思わず悲鳴を上げたことがあるが、そこまで悪くはないのだ。 

 妹になんかは、愛嬌があると言われているのだ。

 いや、信用できねぇな。妹、あれは駄目だ。あいつ、俺のリーゼントべた褒めだったからな。その所為で、あれのダサさに気が付くのが遅れた。せめて一カ月くらいで気付くべきだった。くそ。


 閑話休題である。


 「ぼくは全ての生徒を把握しているよ。もちろん、グリムくんのこともね。え? では、どうして名前を尋ねたかって? それはね、急に名前を呼ぶとみんな驚いちゃうからだよ。ぼくは優しい大人だからね」

 「えー」


 眼鏡が疑いの眼差しをアイザック先生に向ける。俺もそれは同様であり、アイザック先生を半分睨んでいた。

 

 「信じて欲しいなぁ。じゃあ、一年Aクラスのグリム・グレイムくん。きみは剣属性で、魔法特性は透過、だよね?」

 

 は? この教師は何を言っているんだ? 俺にはちょっと理解できない。進学校では当たり前の会話だったりするのだろうか。いや、本当にちっともわかんねぇ。


 「ど、どうしてそれを……」

 「言っただろう? 知っている、って」


 でも、と低い声を作りながら、アイザック先生が俺を指さした。


 「彼は知らない」


 まるで恐ろしい事実を告げるかのように、アイザック先生は言う。だけれども、そこまでのことか? いや、確かに不審者が校内侵入してたら一大事か。


 


 

 

私が診断書メーカーで作った設定使おうと思います。魔法の設定です。

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