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その拳、魔法より強し  作者: 一崎
その拳、魔法より強し
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七最天 ルベルト・フラシュタイン

 その男は君臨していた。ルベルト・フラシュタインという札が掛かった教室の中で、王のように君臨していたのだ。


 やたらに豪華な教室であった。真っ赤な絨毯が敷かれ、照明はシャンデリア。

 部屋の四隅には、装飾過多の燭台があり、炎が揺らめいている。


 部屋の最も上座となる場所には、玉座が存在している。そこに脚を組んで鎮座していた。


「ほう、もしやお主がアイトか?」

「あ、ああ」

「構わぬ。緊張せずとも良い。朕は満足であるぞ?」


 朕ってなんだ? 一人称なのか? まさか下ネタじゃねぇよな。違うな。よし。


「オリザキさん、紹介しますわ。ルベルト・フラシュタインさんです」

「ふむ、確かに朕は創世ルベルト・フラシュタインである。頭を上げよ」

「そもそも下げておりませんわ」

「そうか。よきにはからへ」


 よくわからんが、悪い奴ではなさそうだ。世界観に付いて行けねぇが。大体、どうして頭に王冠を乗せているのだろうか。


「さて、朕に何の用だ? 何でも言うてみよ」

「今日はオリザキさんの自衛手段を借りる為に来ましたの」

「アレか。良い。だが、仮にも七最天ともあろう者が、自衛手段を持たぬのか?」

「彼は特別ですの」

「ふむ」


 ルベルトはいやらしい顔つきを浮かべると、そのままニタニタしながら問うてくる。


「恋人、か?」

「……違いますわ」

「まあ良い。朕はこれでもお主らの先輩である。悩みがあれば、何でも言うが良い。許す」


 年上だったようだ。敬語にしなくてはいけない。俺は心持ち居住まいを正して、


「で、先輩。アレとは何でしょうか?」

「アイトよ。我ら最天は同格である。言葉遣いを改めよ。お主の風貌からして、無理をしているのがまるわかりであるぞ」


 この先輩、めちゃくちゃ良い人だ。一見すると、イケメン野郎よりも傲慢そうなのに、とても寛大であった。


「ありがとうございます!」

「構わぬよ。お主の名声は朕にまで轟いておる。何やらアメリアを笑わせ、そして泣かせたそうな。罪な男よな」

「誤解を生む言い方するな」

「構わぬ。よきにはからへ」

「俺が構うんだよ!」

「ふむ。それにしても、お主はよくやってくれている。アメリアの理解者足り得るとはな。アメリアを頼んだぞ」


 この先輩、ルベルトもまたアメリアの理解者のように見える。信頼されていなければ、彼女が誰かに頼るとは思えない。


 不遜で不敵な態度こそ崩さないが、よい先輩であることには変わりなさそうだった。


「アメリアは不器用である。転んだ時、お主が支えるのだ。それがお主という最天の義務となる」

「はい」

「では、例のモノを渡そうか。何か好みはあるか?」


 例のモノとは何だろう。俺は無言でアメリアに視線を移した。彼女は一度頷いて見せると、そのままルベルト先輩の質問に答えてくれる。


「宝石が欲しいですわ」


 この女、いきなり何を要求しているのだ。宝石は幾ら何でも高価過ぎる。


「良い」


 よいのかよ。困惑する俺を尻目に、ルベルト先輩が宝石箱を取り出した。中には眩しいほどに煌びやかな宝石たち。

 本当にくれるのだろうか。


「能力は何が良い?」

「低級魔獣を一撃で仕留められる程度のものを少し」

「ふむ。遠慮深い女であるな。全て持っていけ」


 そう言って、宝石箱を放り投げてきた。俺は慌ててキャッチした。宝石が砕けたらどうするのだ。

 アメリアは特に興味がないのか。普段通り無表情であった。

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