違和感
ようやく、自動字下げの使い方がわかったので、次からはちゃんとします。嘘じゃないです。
俺の名前は折崎哀人である。
見た目は普通。今は、である。
一時は女にモテたいあまり、ファションを追求したのち、リーゼントと化した。
俺は不良だった。だから似合うと思ったのである。
気の迷いである。
さて、そんな馬鹿なことをした俺は、当然だがお頭もよろしくなかった。
中学では、進学は絶望的であると先生に言われた。
凄く見下した感じで言われた。そこからの俺は凄かった。勉強したのである。
結果、今、俺はここにいた。
「でけぇな、おい」
感動やら何やらで、俺は馬鹿面を引っさげて、校門を見上げた。
俺が入ったこの高校は、中々良いところのようであり、校門からして立派であった。装飾過多で、無駄に学費を使われている感が凄い。
この高校、私立紅葉学園は結構な進学高なのだ。俺、頭よい。勉強したからなぁ。死ぬ気で。
俺は着慣れない、新品の制服に戸惑いつつも、校門を潜り抜けた。
俺の意識は一瞬で切り替わった。いや、別に何も無かったが。何となく、心機一転である。
俺はこの学校で変わるのだ。具体的には、モテモテになるのだ。
そう思い、俺は一歩を踏み出した。
そして、その直後に停止した。いや、させられたとでも言おうか。
「おかしいだろうが」
俺の目に広がったのは、明らかにおかしな光景だった。
人がたくさんいた。これは別に不思議なことではない。学校だから、当たり前である。
おかしいのは、その人間だ。
まず、制服が違う。ここは私立紅葉学園の筈だ。だというのに、みなが着ているのは俺とは違う服。
「どういうことだ?」
「ちょっと、そこの人! どうしたの? この学校の生徒じゃないみたいだけど」
「あぁん?」
急に話しかけられた。俺はびっくりして、思わずドスの効いた声を出す。
いけねぇ。俺は今、普通の一生徒なのだ。
気を取り直して、
「すまん。で、今何て言った?」
「ひ、ひぃぃ。すいません!」
「いや、怯えんなよ。訊いただけだ」
「何を訊いたのでしょうか!?」
俺に話しかけてきた男は、すっかりビビってしまっていた。話が進まん。
だから、俺からきちんと質問をする。
「お前、今俺がこの学校の人間じゃねぇって言ったよな? どういうことだ?」
「え、もしかして、この学校の生徒なんですか? ですが、制服が違いますし」
そうだ。そこなのである。
俺の制服は、どこにでもあるような学ランなのだ。ちなみに、俺はこの学校が学ランだというので、この学校を目指した。
折崎哀人はファショナブルなのである。
だが、一方で、この眼鏡が着ているのは何なのだろうか。
「お前、良い服着てんな」
「え、あ、そう? な、何か照れちゃうなぁ」
この眼鏡、単純だ。だが、よい奴だ。俺にはわかる。頭がよいからな。
ともかく、眼鏡の服装である。
純白のシャツは美しく、その首元はクロスタイにより留められている。そのシャツの上から羽織っているのは、豪華なコートだ。
どう見ても、制服とは思えない。が、この学校の生徒と思わしき男は、全員この格好である。
「なるほどな」
小さく呟いて、俺は思考を開始した。
そして、すぐにとある考えに至る。ドッキリ、である。
俺はもしかすると、学校の先生とかに騙されたんじゃねぇのか? だから、制服が違うんじゃねぇか? 俺の中学のときの担任は最低な奴だった。受験落ちてたやつに、合格したと嘘を吐いてぬか喜びさせたことを武勇伝にしていた奴だ。
俺も同じことをされたのか? いや、きちんと書類も届いた。合格発表には行ってないが、きちんと合格通知は着ていた。
それでも、もしかすると、という考えが浮かんだ。
だとしたら、ふざけんなよ。
俺は即座に思い出す。
俺が学校に入れると決まって、泣いて喜んだ母さんの顔。
馬鹿にしつつも、嬉しそうに微笑んだ妹の顔。
俺はいいんだよ。何されたってよ。
でもよ、あんまりだろうが! こんな、こんなことってありかよ。
「ふざけんなよ!」
怒りだ。俺はすぐにキレる。
俺は思わず、近くにあった壁を勢いよく殴りつけた。
大きな音が、木霊する。それで注目を集めてしまったのだろう。この学校の生徒たちが、一斉に立ちどまって、俺を見る。
「ど、どうしたの?」
眼鏡は怖がりつつも、俺を気にかけてくれる。いい奴だ。
「いや、お前は悪くねぇ。悪かったな。騒いで」
「いや、構わないけど。って! きみ、手。手が」
「ん?」
眼鏡に言われて、拳を見やる。折れていた。
「あ、気にすんな。ちょっと痛いだけだから」
「き、気にするよ! さぁ、こっち来て。保健室行こう」
「よくわからないが、学校より病院行くよ」
「病院? そんなのないでしょ。ここには」
眼鏡、錯乱中。
学校から出ればあるだろうが。ここからなら歩いて五分だよ。
だが、眼鏡のお陰で大分落ち着いた。俺はキレると、すぐに口調が荒くなる。
それもずいぶんと収まった。
折角だ。眼鏡の好意を無駄にしたくない。俺は眼鏡の後をついて行くことにした。
「さ、こっちだよ」
眼鏡は小走りで、前を行く。あいつの銀色の髪が、風になびいていた。
だから、俺は余計に理解する。この学校のおかしいところは、たくさんあった。
まず、制服が違う。
そして何より、ここにいる全員が、
「日本人じゃねぇ」
前を行く眼鏡には、聞こえなかったらしい。あいつはどんどん保健室に向かっていた。