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その拳、魔法より強し  作者: 一崎
その拳、魔法より強し
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乱入者

 ひつぎの想定外の言葉に、俺は思わず問うてしまう。ひつぎに意識はあるのか、と。


 ひつぎは特に何も言うことはない。質問には応えてくれない。


「もしも、意識があるって言うのなら、今すぐ馬鹿なことは止めろ」

「馬鹿なこととは何のことでしょうか?」

「馬鹿なことは馬鹿なことだ。意味もなく人を傷つけやがって。お前、俺の担任の先生がいなけりゃ、何人殺していたと」


 思う、という言葉には続けられなかった。俺の腹に銃弾が減り込んでいたからである。

 それも一発ではない。


 無数の弾丸が、一斉に俺の腹を貫いたのである。


 高い威力に、唇から血が溢れた。何発か貫通してしまったようだ。


「想定通りですね。こんなにあっさりと騙されて」

「っ。ひつぎ」

「私はミアです」


 両碗が俺へと狙いを定める。引き金を引き動作もなく、一斉に銃弾が放たれる。


「魔石解放!」


 防御の魔石で急場を凌ぐ。


 魔力解放で弾くように足を動かし、地面を駆けていく。デタラメな動きで銃弾をかわしていく。


「話を聞け、ひつぎ!」

「主様。一度魔道具として所有されてしまえば、魔道具は主人に絶対的な忠誠を誓います。貴方の言葉は届かないかと」

「でも、意思があるなら!」

「それも定かではありませんね。それに意思の有無は無関係でしょう。仮に主様が悪人でも、私は貴方に従いますから」


 クロウリーは魔道具だ。だから魔道具のことについては彼女の言うことが全面的に正しいのだろう。

 だが、従いたくなかった。


 ひつぎは少し変な奴だった。だが、だ。決して、このようなことをする奴ではなかった。


「主様。このままでは貴方が傷付き続けるだけです。対象の破壊、または強制停止を行ってください」

「ちっ!」


 大きく舌打ちを漏らしてから、俺はストックを消費した。

 石弾のストックにクロウリーを触れさせて、一気に魔力を爆発させる。

魔力をぶち込む(マギ・エンチャント)


 石弾がひつぎの元へと一直線に駆けていく。石弾はひつぎの放つ弾丸を尽く粉砕していく。


 更に、


「魔杖クロウリー、ストック消費」


 岩を生み出す。

 その岩は薄い刃の形を模していた。全長は三メートルである。


 その石刃にも、同様に魔力を付与する。


 爆速で岩の刃が凪がれた。


「重圧の枷だ」

『魔杖クロウリーが定めようーー』


 ストックで使うよりも、詠唱した方がより威力を生み出せる。

 俺はひつぎへと接近する。


 一度話す為には、クロウリーの言うように、昏倒でもさせて拘束せねばならないだろう。無理矢理にでも捕まえる。


 と、俺が意気込んだ時だった。


 悲鳴が響く。

 悲鳴の方を見やると、そこにいたのは見知らぬ女性とアイザックであった。


 アイザックは女性の身体を掴み、そのこめかみに拳銃を突き付けている。


「止めて貰おうか。僕のミアをこれ以上傷付けないでくれ」


 混乱はまだ解けていないようだ。自分からひつぎに俺を襲わせておいて、よく言えるものだ。


 また、錯乱した調子で、女性のこめかみに当てた拳銃の引き金を引いた。


 パン、という発砲音。

 銃弾が女性の頭を貫いた。直後に、再生する。


「も、ももももうやめてええ!」

「うるさいなあ」


 再度、発砲。


「やあ、この女性こそ、きみをこの学園に連れてきた張本人だよ」


 アイザックが捕まえている女性は八十代といった所だろうか。

 アメリアが昔調べていたが、流石にそこまで過去には遡れていなかったようだ。


「この人は便利なんだよ。ちょっと拷問すれば、すぐに力を貸してくれる。うふふ。そして、今も人質として、役に立ってくれている」

「てめえ!」

「さ、諦めて死んでくれないか?」


 思わぬ方法で逆転されてしまった。いや、元から俺が不利ではあったが。


 そもそも、あの女性は何処から現れたのだろうか。

 俺を連れてきていた、ということは空間転移の固有魔法使いなのだろうが。


 あの女性を助ける術はあるだろうか。

 攻撃しても、意味はない。俺の手であの女性の命を終わらせてしまうだけだ。


「さあ、やってしまいなさい、ミア」

「はい」


 戸惑っていると、ひつぎが俺へと攻撃を再開し出した。


 このままでは流石に死ぬかもしれない。

 背中に嫌な汗が伝う。


 半ば絶望している時、


『騒々しい。我が魔道の障壁となる者は何処だ』


 凛々しい詠唱の声が聞こえた。


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