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その拳、魔法より強し  作者: 一崎
その拳、魔法より強し
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アメリア家での夕食

 ドアが開き、やってきたのは貴族であった。いや、それはアメリアの家族なのだから、貴族であることは当然ではある。


 というよりも、アメリアの家族は貴族の中でもかなり上位に位置していると聞いている。


 メイガスのメイザス家やグリムのグレイム家よりも、格は高い。

 ルベルト先輩やフランソワさんには及ばないものの、遠い家だということは理解している。


 入ってきたのは、男が一人。女が三人である。うち一人はメイドであろうか。


「そうか。貴方たちがアメリアのお友達ですか」


 第一声を紡いだのは、アメリアの父らしき人物であった。

 俺は慌てて立ち上がり、挨拶をする。

 とはいえ、俺はこういう貴族のルールなどには疎い。無礼を働いていないか、内心心臓が飛び出しそうな思いである。


 俺に続いて会長とひつぎも挨拶をした。


「ああ、いや。改まらなくて良い」


 アメリアの父はそう言うと、椅子に腰掛けた。その動作は何気ないが気品があって、何処と無くアメリアを彷彿とさせる。


「私はエインス・エクシスだ。アメリアが世話になっているね」

「いえ、私の方がアメリアさんにはお世話になっていてーー」


 俺が必死にアメリア父と会話をしていると、アメリアが口元を押さえて微笑を浮かべた。


「私、アメリアさん、ですって」

「何だよ。文句あるのかよ」

「いいえ」


 失笑を堪え切れず、と言った様子で、アメリアは必死に己が口を押さえつける。

 その様子を見て、目を丸くしているのがアメリアファミリーであった。彼らは一様に、宇宙人にでも出会ったかのような表情で、アメリアを凝視していた。


「まさか、アメリアが笑うとは」

「驚きですわー」


 アメリア父の言葉に、俺たちよりも少し幼い少女が答えた。彼らは俺を見て、


「アメリアを笑わせるとは、コメディアンの方なのでしょうか?」

「違います」


 あらぬ誤解を受けてしまった。


「この方はわたくしと同じ七最天ですわ」

「ほう! それは興味深いな。我々エクシス家としては」

「そうでしょうね」

「私としては、七最天ならばルベルト様を推しているが、新たな候補ができたことは喜ばしい」


 何の話をしているのだろうかと、俺が疑問を抱いていると、会長がこっそりと耳打ちしてきた。


「結婚相手よ。エクシス家は血ではなく、能力至上主義だから」


 能力至上主義。

 それは確かなのだろう。アメリアを養女にしているのだから。

 普通ならば、自身の家の子に嫁がせるのだろうが、おそらく男がいなかったのだろう。


 けれども、それでは完全に血が絶えるのではなかろうか。

 アメリアとこの人たちは血が繋がっていない。その上、赤の他人と結婚してもエクシス家としてのメリットは皆無だろう。


「エクシス家はより強い魔法使いを生む為の組織としての一面があるのよ」


 血ではなく、能力で貴族の座を得ている、ということなのだろうか。


「私は嬉しいよ。と、すればだ。貴方がオリザキさんですね?」

「はい」


 アメリアの父は朗らかに問うてきた。先程のような堅苦しさは一切感じさせない、実に巧妙な声音である。


「私は古い人間だ。そして、それと同時にエクシス家を束ねている身分でもある。必要ならば、アメリアには政略結婚というか、そうだね」

「……」

「良い魔法使いを生む為の母体となって貰うつもりだった」


 あまりにも酷い言葉である。貴族としては正解なのだろうが、俺としては到底看過できる言葉ではなかった。


「でも、同じ実力者である貴方のことをアメリアは気に入っているらしい。貴方次第では、アメリアに辛い思いをさせずに済みそうだ」


 外堀を埋められている気がする。

 最近は母さんも、アメリアを選ぶか妹を選ぶかを早く決めろと言ってくる。


 まるで俺には、アメリアと妹しかいないとでも思っているかのような口調である。


 一応、俺はリリネットにも一年にも好意を持たれている。それに対して、どう返せば良いのかはまだ決めかねているが。


「さて、料理も運ばれてきたようだし、どうか遠慮なく召し上がれ」


 アメリア父の言葉に従って、俺たちは食事を開始した。皆がいただきます、と挨拶をするのだが、外国でもやるのだろうか。


 というよりも、ここは色々とおかしい。

 日本語を全員が話すし、妙に動作も日本風である。


 金髪や銀髪がありふれているこの島では、妙な違和感がある。

 食事をテキパキと片付けて、俺たちは逃げるようにしてその場を後にした。

 ちなみに、料理はやはりかなり美味しかった。豪華であった。


 一つ問題を挙げるとするならば、去り際、アメリア父やおそらくアメリア妹が耳元で、「これが毎日食べられる生活を送りたくはないか?」と囁いてきた所為で、味を覚えていないのが今後の課題であろう。


 非常に疲れた。


 けれども、そこまで悪い家族ではなさそうなのでよかった。


 そろそろ眠る時間だが、俺は何処で眠れば良いのだろうか。


 アメリアと会長の瞳が、怪しく輝いた気がした。

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