襲撃
アメリアたちは決闘する気に満ち溢れているようだが、俺としては許可できない。
ひつぎの力は未知数であり、また魔物を倒した時の動きから、制御できていないことが伺える。
会長は弱くないし、強い方であると言える。けれども、それはあくまで一般生徒と比べると、であるのだ。
会長の強さはその魔道具にある。
彼女の鎖鎌は強力だ。ともすれば、アメリアの崩鎌よりも強いだろう。
だが、それでも彼女は俺に敗北した。
まだ『会話』のスキルを発現していなかったときの俺に負けたのだ。
あの時はお互い魔力解放などのテクニックがなく、ストックの撃ち合いと武器による攻撃がメインの戦闘となった。
あれからどれだけ会長が成長したのかは知らないが、常軌を逸するほどの強さは持ち合わせていないだろう。
また、ひつぎも心配である。
彼女は強いのか弱いのかもわからない。決闘が始まれば、あっという間に会長にボコボコにされる可能性はあるのだ。
魔物が倒せる以上、弱くはないのだろうが。
以上のことから、俺は決闘に反対である。決闘は対等な条件で行うべきだ。
というより、生徒間で決闘は行わないべきである。
『重圧の枷』という使い魔の記憶を見て以来、決闘という単語はあまり好きになれない。
「おい、止めておけよ。それに誰か来てるしさ」
気配を感じる。
数人の人間がこちらに向かってきている。人前で決闘騒ぎをするのは少々恥ずかしい。
「それもそうですわね。それにしても、この気配は中々物騒ですわ」
「お前、普通の人間なのに気配とか読めるのかよ」
「わたくし、七最天ですのよ?」
それならば納得できる。
「ですが、見ず知らずの方に殺気を向けられるのは気分の良いものではありませんわね」
「だな」
俺たちの元に向かってきているのは、全てが魔法使いである。まあ、当然なのだが。
そして、何よりもの問題は彼らが殺気を持っているということであった。
目的は不明だが、その意思は強そうだ。
俺とアメリアがいる以上、下手な相手には遅れはとらないが、魔法は未知の宝庫である。
固有魔法を使われれば、結果はわからない。それに、アメリアはおそらく対人戦を苦手としているだろう。
手加減ができないのだ。
いや、手加減をしないのだろうか。だとすれば、彼女は強いだろうが。
あまり人を殺して欲しくはない。
が、そうしなければいけないならば、戦い殺すしかないだろう。知らない人間のために、大切な仲間を失うつもりは毛頭ない。
今逃げても意味がない。
この中の誰を目的として近づいてきているのかもわからないのだ。
俺かアメリアか。
会長かひつぎか。
迎え撃つ為に、俺たちはその場に留まった。ゆっくりと緊張の時間が過ぎて行く。
そして、そいつらは現れた。
学校内で見た顔が少しあった。あれはーー教師である。
「七最天と生徒か」
と、教師の一人が俺たちに声を掛けた。彼らの手には魔道具が握られており、戦闘の準備はできているようだ。
「学長の命令だ。その女を渡して貰おうか」
「学長ですって? この学園の学長は現れないことで有名ですが?」
「ああ。俺たちも初めて指示を出されたよ。それだけ重大な任務だということだ」
その女、が誰を指すのかは一目瞭然であった。その視線の先はひつぎを強く捉えている。
「ひつぎ、訊くぞ。お前は学長とやらと知り合いか?」
「わかりません」
「お前はあの教師たちについていきたいか?」
「……」
「お前の意見を言え」
「……いいえ」
「じゃあ、決まりだ」
俺はクロウリーを構えた。
当然、その矛先は教師たちへと向かわせる。
「歯向かう気か?」
「授業をして貰うだけですよ」
クロウリーに命じるのは、敵を拘束する魔法である。殺しはしない。
「渡さないと言うのならば!」
眼鏡を掛けた教師が踏み込んでくる。その速度は魔力解放によって、驚く程の加速を得ていた。
常人では捉え切れない程の速度。だが、俺は常人ではない。
「魔杖クロウリー、ストック消費!」
石弾を放つ。
それを目眩ましとして、こちらも一気に近づいた。動きを鈍らせた教師へと杖を凪ぐ。
これで一人だ。
「くっ!」
『神罰アメリア・エクシスが定めよう。その光はーー』
アメリアが詠唱を開始した。
慌てた教師たちはアメリアへと虚無を使って殺到するが、会長が一歩前に出た。
「空鎌メルバ、ストック消費」
分銅とともに魔法が射出された。二人の教師がそれを阻止する為に、魔道具を振るった。
停止した教師の背後から、俺が襲いかかる。一人を杖で殴り倒し、もう一人には軽い魔石を解放した。
倒れた三人の教師へとクロウリーの魔法が発動する。三人の教師はそれだけで動きを止めた。
うちの学校の教師は強い。
が、それはあくまで一般生徒の延長線上でしかない。
アレイスト先生のような元最天の教師でもなければ、俺たちはそうそう止められない。
「次は誰だ!」
残る教師はあと一人だけ。
けれども、俺は予感する。この教師はかなり強い、と。
最天に匹敵する力を持つ、と。
その老人は籠手に包まれた腕をこちらに差し出しながら、皺だらけの顔を歪めた。
「ふふ。若い力は素晴らしいな。僕としても、最天の強さは誇らしい。元最天としてな」
「元、最天!?」
「何代前かは忘れたがな。今はしがない、教師なのだがな」
視認できる程の魔力を纏いながら、老人はその刻まれた皺を更に深くする。
「オリザキよ。お前もパワータイプか? ふふ。実に楽しみだな。僕と張り合えるか?」
俺と老人は同時に同じストックを消費した。そう、『重圧の枷』である。




