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その拳、魔法より強し  作者: 一崎
その拳、魔法より強し
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六最陣

降臨の刻を待ち望んだ(来るのを待っていたぞ)知恵の社(図書館)を崩壊されるとは想定を超越されん』

「やはり」


 ゾロア先輩の言葉に対して、アメリアが呟いた。だが、今はそのようなことよりも、ゾロア先輩との戦いの方が重要である。


『新たなる魔の脅威に期待しよう。我に魔の道を教えたまへ」


 最天が全員陣形を整えた。

 最も近距離戦に優れたリリネットが真正面に位置し、その両隣には俺とクロネ先輩が並ぶ。


 俺は囮と遊撃を担当し、クロネ先輩はリリネットに次ぐ近距離能力とスキルによる翻弄を担当する。


 中間にはルベルト先輩が君臨する。多彩な攻撃、支援を得意とする彼の間合いだ。


 最後尾には、遠距離火力であるアメリア。

 回復と長距離戦を得意とする一年が陣取っていた。


先を刮目せよ(見立てが甘い)


 ゾロア先輩が消えた。


 直後に、俺の背後で轟音が轟いた。ゾロア先輩は、最天の中で最も近距離戦が苦手で、なおかつ回復役という重大な役目を担う一年に襲いかかったのだ。


 だが、


「いい、わかるさ。貴様のことくらいな。私が知らずとも、オリザキが知っている」


 ゾロア先輩の長杖とクロネ先輩の剣が鍔迫り合っていたのだ。


 ゾロア先輩は驚愕の色に目を染めた。


「見切られた、だと?」


 ゾロア先輩の性格は知っている。彼は誰よりも知識について執着している。戦闘における基礎知識くらいは持っているだろうし、またその知識があればその知識通りに動くのがゾロア先輩だ。


 そう、彼は最善の動きをする。教科書通りの完璧な動きだ。


 だからこそ、見抜ける。


「スキル斬撃放射」


 クロネ先輩の魔剣から斬撃が放射された。切断能力を持つ光を受けたが、ゾロア先輩は口角を吊り上げるだけだった。


 その表情は苦悶の色に変わる。


「甘いのです」


 横合いから現れたリリネットが、ゾロア先輩の顎を蹴り上げたのだ。彼が空中で体勢を整えようとした瞬間、数多の宝石が舞った。


「魔石解放」


 ゾロア先輩の片腕が引き千切れる。

 魔石の爆発によって周囲は煙に包まれていた。その煙の中から転移を使ったクロネ先輩が出現する。


「スキル斬速上昇」


 叩きつけるようにクロネ先輩は剣を振るった。落下したゾロア先輩に、リリネットが踵落としを見舞う。


「赤の木漏れ日」


 無詠唱での赤の木漏れ日が放たれた。

 リリネットが炎に包まれながら、それでも攻撃を命中させる。


「ぐっ! だが、持久戦では俺の方がーー」

『全ては過去へ遡る。乖離の鼓動』


 リリネットが傷を負ったのと同時に、回復魔法が行使されていた。リリネットがその場を飛び退き、そして、そこにアメリアの最上級魔法が叩き込まれた。


 ゾロア先輩が吹き飛ぶ。


「ありえない! 最天がこれ程までに連携できるはずがない」


 最天の能力はどれも強力で、また周囲への被害も尋常ではない。魔力干渉も考えると、連携は不可能とゾロア先輩は読んでいたのだろう。


 だが、それは『六最陣』によって解決していた。六最陣の能力は単純である。


 六最陣ーー魔石を使った者同士の思考をシンクロさせる魔法である。


 だからこそ、俺には他の五人が考えていることが手に取るようにわかる。

 彼ら全てに指示を出すのは、俺である。


 七最天の全員と共闘した経験があり、なおかつ彼らの力を直で感じたことのある俺にしかできない仕事である。


「ゾロアよ。お主が幾ら化け物であろうとも、手足が十二本ずつある化け物に勝てるのか?」

「そういうことか。思考のシンクロか」


 ルベルト先輩の言葉を耳にして、ゾロア先輩は即座に魔法の効力を理解して見せた。だが、知ったところでどうにもならない。


 クロウリーの魔法が発動して、俺の肉体に黒い靄がかかる。認識妨害の魔法である。

 俺はリリネットと共に、魔力解放で駆け出した。


「風刃」


 風の刃が放たれた。それは俺とリリネットを狙ったものである。

 だが、俺たちは減速しない。


『切断せよ。水刃』


 アメリアの魔法が起動した。その水の刃は『風刃』を相殺はできなかったものの、軌道を逸らすことに成功していた。


 ゾロア先輩が長杖を構えた。接近戦を挑むつもりだろうか。


「スキル距離切り」


 クロネ先輩のスキル距離切りが発動した。リリネットとゾロア先輩の間の距離を切断したのだ。


 リリネットが拳を振るう。

 ゾロア先輩はそれを正面から迎撃した。拳と長杖がぶつかり合う。


 そこに一年の光矢が放たれた。ゾロア先輩の四肢が貫かれる。


「小賢しい! 堕天の空」


 ゾロア先輩が回避を行おうと、空に飛ぶ。けれども、彼の背後から一つの影が現れた。


『流星通し』


 ルベルト先輩が魔石をかなりの量消費して、『流星通し』を行っていた。


「断空者の拒絶!」


 ルベルト先輩は透明の壁に衝突した。

 ルベルト先輩を止める為に、ゾロア先輩は『断空者の拒絶』まで使ったのだ。


 今の一瞬だけ、彼は無防備だ。


 リリネットが突貫した。


「魔王は身体能力も一級品だ!」

「認めるのです」


 獣のような捉えどころのない動きで、リリネットはゾロア先輩に肉薄する。リリネットが鋭い蹴りを放ち、ゾロア先輩も拳を放った。


 拳がリリネットに命中した。彼女は嘘のように背後へと吹き飛んだ。


魔力をぶち込む(マギ・インパクト)

「っ! 騒然たる鎮魂歌」


 今まで目立つ動きをしてこなかった。それはこの一撃を命中させる為だ。


 ゾロア先輩の魔法が視覚妨害魔法により外れ、俺の拳がゾロア先輩の頬を捉えた。


 俺の奥義が発動する。

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