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クロ  作者: 里見 カラス
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6.四分の一野良

 制服のポケットから携帯を取り出すと、折りたたまれた携帯のサブディスプレイがメールの受信を知らせていた。


 送り主は友人の真綿美冬、クラスが同じになってから、遊びに行くときには大概美冬と一緒で、次の土曜日の夜には夏祭りに行くことになっている。


 メールの内容は、当日に浴衣を着て行くのかを確認するものだった。学校で夏祭りの話をしていた時には、服装の申し合わせは特になく、洋服のつもりでいた私は驚いたが、すぐに浴衣の方が楽しそうだと思い直して、浴衣を着て行こうとメールを返信した。


 母が帰ったら、早速浴衣を出してもらわなければと考えながら、携帯を閉じて顔を上げると、クロと目が合った。


 ソファの上でこちらをずっと眺めていたのだろうか。


 そういえばクロはいわゆる半野良とは少し違う。餌だけを貰いにやって来る普通の半野良とは違い、クロは餌の時間でなくとも家の中で過ごすことが多かった、大概はリビングのソファの上で、借りてきた猫よろしくじっとしている。あまり歩き回らないし、くつろいでいる風でもない。


 外に出るときには網戸を勝手に開けて出ていくので自分の意思でここにいるらしいことは分かるが、いまいち警戒されているようだ。


網戸はしばらく、気付いた者がそのつど閉め直していたが、母がテレビでやっていたとかで、窓枠に長いゴムをとりつけ、独りでに閉まるようにした。


 家の中は、四分ノ一ほど野良なクロの加わった生活が定着し始めていた。

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