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クロ  作者: 里見 カラス
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4.名前は?

 しかし耳をつついたのがいけなかったのか、起こしてしまったらしい。猫は小さく身じろぎして目をあけた。緩慢な動作で頭を持ち上げて辺りを見回す。痩せているし、目が覚めたなら何か食べさせた方がいいかもしれない。


 母に相談すると、次からの食事はきちんとした餌を買ってくるようにと念を押しながら、魚肉ソーセージを渡された。それを使っていない皿に切って並べ、もう一つの皿に水をはって戻ると、猫はふらつきながらも立ち上がり、歩こうとしていた。箱入りとはいえ、強い猫だと少し感心する。


 立ち上がった猫の前に皿を並べてみる、まあ素直に食べるとは思っていなかったがなかなか口をつけない、ソーセージの切れ端を手に乗せて口元に近づけてみたが弱々しくも嫌がる素振りを見せた。見られているのが駄目なのかもしれないと距離をおいてしばらく待つ、箱入りだから餌にも選り好みがあるのだろうかと頭を抱えた頃、やっと食事に口を付けた。


 とりあえず食べてくれた事に安心した、動きが弱々しいが、自分で立って物を食べられるなら、回復は早いだろう。


 それにしてもきれいな猫だと思った、目を覚まして、ふらつきながらもりんと顔を上げた姿がどこか凛々しい。この猫はどんな名前なのだろう。きっとおしゃれな名が付いている、名前を呼んだら振り返ってくれたりするだろうか。


 この猫に付けられるような名前が自分の頭から出てくるとは思えないが、とりあえず思いついた名前を口にしてみる。


 まずは定番にポチやタマ、そういえば友人の家で飼っている白猫はミルクだった。クリーム、マショマロ…だと白っぽい、黒っぽくココア、チョコ、ショコラ、食べ物から離れなさいと母に呆れられてしまったので、食べ物から離れてクロ?


 ピクッ、


 その時、猫が食事を中断して顔を上げた。


 猫の突然の反応に驚きつつ、最後に口にした名をもう一度繰り返す。


「・・・クロ?」


 猫のビー玉のように透き通った瞳はグリーンだった、そしてその瞳はじっとこちらを見返す。


 ・・・何それ、安直。なんだろうこのガッカリ感は。

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