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クロ  作者: 里見 カラス
13/54

13.閉じ込めてしまえたら

 携帯をゆっくりとたたんで息をつく。ふいに人の声の途絶えた部屋は、時計の音がやけに良く響く。


 クロが『クロ』の言葉に反応したのは、飼い主である黒峰創くろみねそうの名前を聞きつけたと思ったのだろう。結局期待していたようなオシャレなカタカタの名ではなかったが、『ガク』の方がずっとセンスがある。


 外はまだ明るいが、陽の光がオレンジ色になっている。外の風が涼しくなる時間だ。黒峰さんを待つ間、目的がうっかり外へ出てしまわないよう、一階の窓を閉めておこうとリビングへ降りた。リビングには夕日の鮮やかなオレンジが差し込んでいた。ソファの上に座る姿は、そのオレンジを切り取った様にくっきりと浮かび上がって見える。エジプトの壁画を思わせる凛とした横顔は見つめていると、どこか儚げに見えた。


 窓を閉めるだけの事なのに、少しでも音を立てれば何かが壊れてしまいそうで、私はゆっくりと窓に近寄った。手をそえ、少し力を入れると、庭に面した吐き出しの窓は、重く音を立てながらサッシの上をすべった。


 窓を端まですべらせて、ふとふり返ると、こちらをながめて、不思議そうに首をかしげているオレンジの猫。夕日の光を受けてオレンジ色に照らし出され、その後ろで影が長く伸びてソファから床へと降りている。後ろ手に、金具を上に上げるだけの鍵を掛けながら、光も閉じ込めてしまえたらと何となく思った。


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