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神々のたそがれ ~箱舟をもう一度~

作者: 紺智次

超スペクタクル社会派三文小説

 NASAから極秘情報が流出した。数十個からなる隕石群の進路コースのど真ん中に地球があり、ちょうど一ヵ月後に地球はアイダホポテトのようなジャガイモ惑星と化すだろうとのことだ。

 この極秘情報は一人の哀れな職員の手によって流出させられた。隕石の進路コースを計算していたその男は、間違いなく地球に衝突するという自身の計算の信頼性と、周囲によるその計算の確かさの証明によって狂ってしまった。狂ってしまったその男は町に出てドラッグに手を出した。生まれてこの方ドラッグの経験がない男はマリファナ1グラムを500ドルで購入した。マリファナを吸引してハイになった男は知っている限りあらん情報をコピーし、まとめ、YOU TUBEとebayに出品した。その内容から一部のUFO研究家やアマチュア滅亡論者が飛びつき、宣伝したところから二次関数的に閲覧回数が増えすぐさまTrending一位になった。ebayでは2ドルで落札された。

 NASAの極秘情報が流出するのはいつものことなので混乱は特になかった。しかしこの時点で一部の人からは計算や資料の妥当性が指摘され始めていた。

 残り一週間となった頃には、世界中のアマチュア天文家も隕石群を確認しており、地球への衝突がほぼ確実とわかったところで世界が騒ぎ始めた。というより世界各国で窃盗、強盗、略奪、暴動などの犯罪が爆発的に増え、治安指数は限りなく0になった。また、劇的に増えた預言者たちは各地で大衆を先導し始め、残り数日の自身の王国を築き始めたりもした。この暴動に参加しなかった人間ももちろんいる。それは通信インフラの未整備やそもそも文明を持たない、一部の発展途上国と原始民族の人々だった。彼ら以外はすべて暴徒と化した。善人も悪人も、男も女も、宗教徒も無神論者もすべて暴徒と化した。しかし、一部の宗教徒は信仰を捨てなかった。例えばキリスト教徒は黙示録に備え、神への祈りを一層深めた。しかし暴徒と化したキリスト教徒に全員殺された。これはほかのどの宗教もだいたい似たようなことが起こった。

 人類滅亡の三日前。もう略奪するものもなくなった彼らはところかまわずセックスに励んだ。同意があろうとなかろうとみなセックスに励んだ。ゲイもレズビアンもセックスに励んだ。街中でセックスしようが誰もとがめないので、一組外でセックスしていればまた別の人間がそれに加わる。それを見てまた別の人間が加わるというように連鎖的に乱交が発生した。屋内でセックスしていた人もそれを見て外に出て加わるので、道は肉の塊で埋め尽くされた。

 三日三晩、彼らはセックスに励んだ。飲まず食わずで他人の汗をすすり励んだ。中には死人も出たが、誰も気づかずセックスした。

 世界が終わるというその時、雲間が裂け、光が差し込んだ。光の隙間から救世主が再臨した。彼は千年王国の住人になる資格のある人間を探したが敬虔な教徒はすでに天に召され、残りの教徒は堕落していた。がっかりした彼は仕方なくアフリカに飛び、黒人の番と適当に動物の番を船に放り込んで別の惑星に向け出向させた。

 そして隕石が衝突し、世界中を異常気象と津波が襲った。地上の生物はすべて死に絶えた。死んだ人間はは天国の門の前ですべて、一人残らず地獄に落とされた。

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