8章ダイジェスト
前書き
ここから先はプロットを手直ししたダイジェスト版となります。
細かな肉付け・修正がされていないので矛盾が多く存在します。
まだ結末を考えていないキャラもいるので、何人か霊圧が消えています。
世界解放シーン。
魔力が喪失し、重力魔法が無効化されることで大地がコロニー外壁から引き剥がされ、人々と共に6000メートル上空の月面へと落下していく。
ほぼ人類死滅。丁度飛行機に乗っており、かつ落下する物体全てを避けて凌ぎきった極少数の人間のみが生き残る。
零夏「……これが、無策で世界を解放した場合の顛末か」
零夏はシミュレーション映像の結果を見て唸る。
先程の世界解放は現実の出来事ではなく、ラブリーの再現したシミュレーションであった。
世界を救う方法を求め、月面人の集落にいるラブリーの元を訪ねた零夏。
データベースとしてはセルフよりラブリーの方が優れている。
零夏は立体映像に囲まれ、情報収集に明け暮れた。
ラブリー「凄い集中力」
既に数日、情報に溺れ没頭している。
零夏「駄目だ駄目だ!こんなのじゃ、犠牲は減らない!」
零夏はどれだけ世界解放が難題かを改めて理解した。
様々なアイディアを考案するも、全て無謀と切り捨てる。
セルファークは大きすぎた。直径3000キロメートル、総重量30兆トンの円盤世界を裏返した上で6キロ降下させるなど、どう考えても不可能なのだ。
人だけを月面へ運ぶにしても、総人口一億人を輸送するほど飛行機は存在しない。旅客輸送が全て月面世界を飛行不可能な飛宙船で占めていることが、完全に裏目に出てしまっている。
蟻が人間に勝てないような、そんな次元の無謀な望みだ。
零夏とて無謀なのは承知していた、幾人も挑み失敗してきた試みなのだから。
零夏「ん?これは?」
データ化された資料の中に、実物の本が一冊だけ。不思議に思い手に取って読む。
ヘリカルエンジンや核融合炉、宇宙コロニーなど、地球で様々な技術を生んだ天才に関する本のようだ。
ぱらぱらと読んで、零夏は驚く。
零夏「……なんだ、これは。ラブリー、これはどういうことだ」
ラブリー「あれ、ばれちゃった」
白々しくテヘペロするラブリー、零夏は本を読み進める。
零夏「……そういうこと、なんだな」
零夏アジトに戻る
セルフとの会話
セルフ「あれをコロニー外壁に向けて使わないでよね。ちょっと区画が歪んだじゃない」
零夏「あれ?」
ヘリカルエンジンを不用意に試したことに苦情をつけるセルフ。
零夏「区画って?」
セルフ「セルフ・アークはモジュール構造だからね。直径1200メートルの六角形の板が集まって、地面になってるんだよ」
零夏「……なあ、そのモジュールは全てで何枚だ?」
セルフ「7000000枚ちょっと、だけど」
七百万。あまりの数に怯むも、零夏は更に訊ねる。
零夏「人が住んでいる、人の手が加わってる場所は?」
セルフ「えーっと、人口密集地や畑をひっくるめて……10000枚、くらい、かな?それで98パーセント確保できる」
セルフ「重さは」
セルフ「一枚あたり20000トン」
零夏「大きさの割に軽いんだよな。ヘリカルエンジンで動きそうになるくらいだし」
二万トンなど馴染みのない単位だが、軽空母の排水量と考えれば随分と軽い。この大地ってスッカスカのスポンジなのだろうか。
セルフ「まあ、宇宙コロニーの構造体だからねぇ。それが?」
零夏「つまりは、あれだ。―――世界を救う算段がついた」
楽な計画ではない。失敗するかもしれない。
あとは、俺の覚悟次第だ。
リデアとの会話シーン
リデア「本国からの応答がない、支援も望めない。これで正真正銘孤立無援じゃ」
四面楚歌だと言わんばかりに両手を上げるリデア。
ソフィーより手紙が届く。開くとクルーの名簿、家族までを網羅した名簿。
マリア「なんでこんなのを……」
零夏「脅しか、でもソフィーが実行するか?」
リデア「お主は腹を刺されても寝ぼけておるのか?今のあやつはなにをやってもおかしくないぞ、なにせ他のあ誰でもないお前を襲ったのじゃからな」
リデア「クルーにはこういう手紙がきていた、と伝えるしかあるまい。でもどこから名簿なんて入手したんじゃ」
ソフィーが裏切った時、当然そんな物を持ってはいなかった。
零夏「丸覚えしてたんじゃないか?」
リデア「ソフィーの記憶力ではありえん、と言い切れぬのが恐ろしいな」
リデアとの雑談シーン
零夏「クリスタルは人の意思が結晶化した物って言ってたよな。その意思の強さに比例して、クリスタルの魔力は増していく。なら、平均的なクリスタルの数千倍に達する魔力を秘めた天使の涙、その『オリジナル』はなんなんだ?」
リデア「ふぅむ、これは推測混じりだしの、お主の方が正解を知っているのかもしれんが。前人類、つまりお主が生きていた頃のチキュウでは『脳』を製作していたそうじゃな」
零夏「なにそれ知らん」
リデア「ということはお主より未来の産物か?その人工の脳、国を跨ぐほど大規模な神経細胞を模した網の目は『隕石』にとっては生物として見えたのじゃろうな。隕石によって変質したのは一定以上の高度な知性と意思を持つ生物、つまり人間が百億と疑似脳一体じゃったのじゃ」
世界規模の網の目……ネットワーク。まさか。
インターネット回線が、生物として誤認されたというのか?だがネットに魂も意思もあるはずがない。
いや、それこそ思い込みか?脳とて物質、ならば人工の脳に魂が宿らない確証はない。
もし、多くの人々が日夜打ち込む情報がニューラルネットワークと化したら?
そこに、電子の神が宿ったりしたら?
そして―――それが、天使の涙だとしたら。
大学の研究室より生まれた小さな人工細胞は人類の破滅の時まで、常人の数千倍の意思、鬱憤を出力する術もなく溜め続けていたというのか。
それは、ぞっとしない話だ。
格納庫でのキザ男との打ち合わせシーン
「やれやれ、もうはや貰った新型を卸すことになるとはな」
キザ男が父から託された新型機、大鳳の保管処理を解いていく。
大鳳は前進翼を採用した、ほぼ実用機として完成の域に達した試作機だった。次世代機、第五世代戦闘機の模索された結果であり、半人型戦闘機……ソードストライカーの実用化によって破棄された計画。
しかしその性能は未だ世界最高峰であり、キザ男がこれまで搭乗していた赤矢より遥かに優れている。
正直、俺が弄り倒したいほどいい機体だ。
零夏「宝の持ち腐れだな」
キザ男「こいつとなら、どこまでも飛べそうな気がするぞ……!」
零夏「それはダイエット器具を買ったらダイエット頑張れる、みたいな理論だから当てにならない」
キザ男「白鋼と似た配置なのだね、垂直尾翼は二枚だし主翼も固定だが、前に伸びる主翼とはやはり優雅だ」
帝国の設計思想故か、大鳳のシルエットは曲線的で実に美しい。独特のエロさがある。
白鋼の後続機もおおよそ出来上がってきた。宇宙に対応する為、生命維持装置、放射線対策、駆動部を無機収縮帯ではなくリニアモーターで動かすなど、様々な技術が惜しげもなく採用されている。
キザ男「見たことのない形状の飛行機だな、これ、飛ぶのかね?」
零夏「飛行機なんてエンジン出力が充分ならどんな形でも飛ぶさ。最も、こいつは航空力学とステルス性を俺なりに追求したデザインだが」
ある種『異形』とも称せるほどの、既存に囚われない機体形状。
しかしエンジンだけは、未だ完成しない。ぽっかりと後部が抜け落ちている姿は、妙な不安感を抱かせる。
零夏「もう時間がない、メインエンジンなしで宇宙に挑むしかないかもな」
キザ男「本気かね?エンジンのない戦闘機を作戦投入しようなどと」
零夏「サブの補助ロケット機関は搭載済み、飛行には何ら問題ない」
この新型機は、サブエンジンだけでも並の戦闘機を凌駕している。
しかし問題もある、ヘリカルエンジンに期待出来ない以上は他の攻撃手段も必要だ。
零夏「遂にこいつを卸す時が来たか」
かなり以前から製作しつつも、これを動かせる電源が存在しないことからお蔵入りとなっていた兵器。
装置全体の長さは10メートル以上に達する、長砲身小口径の電磁投射砲……心神のレールガン、そのコピー品だ。
新型機の主機関は神威ロケットより移植した、三蔆重工製核融合炉。世界に名だたるメイドインジャパンだ、信頼性は信じていいと思う。
駄目押しにミサイルやロケット弾、更に遊び心で核弾頭まで積むことにする。
神の宝杖破壊の際に必要になるかもしれない。……使わないに越したことはないが。
宇宙に行くには、300トンもあるロケットをセルファークの外まで運び出さなければならない。
しかしセルファークの中と外を繋ぐのは、解放領域共栄圏連合王国に占領された教国内のヘヴンズドアのみ。ここを通過する必要がある。
ヘヴンズドアは幅高さ共に100メートルを越える、巨大な観音扉だ。その先のトンネルを抜けると魔法の使えない世界、神の領域が広がっており、教国の重要な信仰対象となっている。
ドアは普段閉じられており、巨大な装置を動かさなければ開きはしない。
いかにして、厳重な警備のヘヴンズドアを抜けロケットを運ぶか。その答えは、フュンフ近郊の巨塔に存在した。
司書「どうも、お久しぶりです」
零夏「無茶を言ってすいません」
司書「いえ、我等ハイエルフにとってセルフ様に仕えることこそ至上の目的。私の立場など些細なことです」
セルフの口添えで巨塔の司書さんが手引きしてくれる。
俺達はこの巨塔内部に眠る、とある『輸送機』を求めていた。
魔力のない外の世界を飛行可能な、ペイロード300トンの飛行機。そんな物が存在するかといえば―――存在する、のだ。
零夏「あったぞ、これだ」
リデア「なんと。我が家の近くにこんな巨大な飛行機が眠っていたとは……」
標準的な後退翼とH型の尾翼を備えた、あまりに巨大なソ連製輸送機。
零夏「An-225ムリーヤ……こいつなら、300トンのロケットを空輸可能だ」
ムリーヤはアントノフ設計局が作り上げた世界最大の輸送機だ。全幅88メートル、全長84メートル、全高18メートル。最大離陸重量は600トンにも達する鈍重な機体を、一発あたり約23トンもの出力を発揮するエンジンを六発搭載することで強引に宙に浮かせるという代物である。
いよいよ作戦当日。ムリーヤを修復し、急拵えのロケットを背負わせ離陸準備を開始する。
リデア「飛ぶのだろうな、これ」
80メートルの飛行機が50メートルの円柱を背負う、そのアンバランスさはとても空を進めるとは思えないほど大きな違和感だ。
機体に乗り込む零夏だが、歩みを止め見送りの職人達に問う。
零夏「皆、色々思うことはあるだろう。この船は軍艦じゃない、船を降りたい者は気軽に申し出て構わない。ちょっと出掛けてくるから、考えておいてくれ」
ルーデルの操縦するムリーヤが教国国境を強行突破。キザ男やエカテリーナ、ギイハルトに護衛されつつヘブンズドアに向かう。
別動隊のニール・マイケル・エドウィンは地下ダンジョンより教国に侵入、制御室を占拠しヘブンズドアを開く。
ムリーヤ、ヘブンズドア突破。冒険者三人組は早々に撤退したことで、ヘブンズドアが再び閉まっていく。
ほぼ閉まりかけたドアの細い隙間をギリギリ通り抜ける戦闘機。真っ赤な心神、ガイルであった。
トンネルを抜け、外の世界へ達した後にガイルはムリーヤに追い付く。魔力エンジンの護衛機はここまで随伴出来ないので、ムリーヤは無防備な状態に。
零夏「もっと南、赤道に近付いてから上昇する予定だったが―――細かな軌道修正は宇宙に出てからやる、分離体勢に移れ!」
ルーデル「了解ですぞ!」
急上昇するムリーヤ。強力な六発のエンジンといえど重い機体を持ち上げるほどの出力はなく、徐々に速度が落ちていく。
失速寸前まで減速した時、背面の水素ロケットが点火。ムリーヤより分離し、全長50メートルのロケットは宇宙を目指して昇っていく。
追う心神。単独での大気圏離脱能力を持つ心神に、この場で諦めるという選択肢はありえない。
照準の定まらぬ内にレールガンを放つ心神。威嚇射撃だが、ロケットはビリビリと震える。極超音速の飛翔体が生む衝撃波はそれだけで攻撃と化す。
レールガンの弾頭はロケットの脇を通過し、真っ直ぐ空を昇っていく。あの弾頭は重力を振り切り宇宙まで届くのだろう、第一宇宙速度を遥かに越えているのだから。
心神はレールガンを再度発射。ロケット下部を抉る。
零夏は咄嗟に第一段ロケットを予定より早く切り離す。後部が分離し、数秒後に大爆発。
心神は爆発の影響で軌道が逸れることを強いられ、ロケットに追い付くのに手間取る。
必死に上昇する零夏。重力を振り切れば、一時的に逃げ切ることが出来る。
ロケットが昇り切るのが先か、心神が再び迫ってきて照準を合わせるのが先かのチキンレース。
零夏の祈りも虚しく、心神が再度レールガンを発射する。
ロケットに直撃、燃え上がり白熱化する。
ガイル「やったか―――いや、違う」
ロケットの先端、ペイロードより飛び出す小さな機体。
折り畳んだ翼を展開し、零夏の作った新型機が姿を現す。
炎を纏い天に駆ける様はまさに不死鳥。ガイルは驚愕する。
ガイル「な、あれは、あれはなんだ!?」
新型機を初めて見たアナスタシア号の職人達の反応は、おおよそガイルと変わりないものだった。
職人「はは、やべぇよ。見ればわかる、こいつは―――やばい」
技術者だからこそ判ることもある。未完成の目の前の怪物は、尋常の存在ではないと肌で理解した。
職人「こいつの名前はどうする?」
零夏「そうだな……」
白鋼の名は、ソフィーと零夏のイメージを合わせたものだった。
物作りを好む零夏と、真っ白な少女。だが、今は違う。
拗ねたように脇腹をつねってきたり、猫のように警戒しつつも甘えてきたり。
時には腹を刃物で刺したりなど、いじらしいところもある。可愛いじゃないか。
ソフィーは真っ白なんかじゃない。鮮やかな風のような、虹色の少女だ。
零夏「そうだ。彩風、なんてどうだろう」
「女々しい」
「弱そう」
「白鋼の方が強そうだった」
まさかの不評だった。
零夏「いいんだ!こいつは彩風だ!」
近くにあったペンキで、乱暴に「彩風」の二文字を書く。
こうして新型機はロールアウトしたのだった。
見たこともない戦闘機に目を見開き驚愕するガイル。
菱型を基本とした幾何学的な主翼、尾翼は存在せず吸気口はコックピット下に大口を開けている。
既成概念を捨て去り、必要な物を合理的に組み込んだ末の形状。
純白の外装に刻まれた文字は、『彩風』。
これこそ、零夏の持てる技術の全てを費やし製造された新型機。
零夏「あまり舐めてかかってくれるなよ、ガイル」
ガイル「こけおどしを、そのような妙な機体に何がっ!」
レールガンの引き金を再度引くガイル。
射出されたプロジェクタイルは第一宇宙速度で彩風に直撃する。
否、直撃ではない。照準も弾道も正確であったが、弾丸は彩風に到達しなかった。
不可視の壁に阻まれ、レールガンが無効化されたのだ。
ガイル「な―――防いだ、だと」
零夏「お前は言ったな、『降って湧いたチャンスにすがる天士など長生きできるものじゃない』 と。用意したぞ、お前を越えられる機体をな!」
サブエンジン全開、心神を振り切る彩風。
逃げ切って一息吐き、ふと下を見る。
蒼い地球。かつては写真や映像でしか見たことのなかった、宇宙飛行士の特権である景色。
冒険の果てに、こんな場所まで来たのだなと零夏は感慨深くなった。
軽量セルフ「誤差修正、あと50秒でランデブーだね」
タブレットパソコンに収まったコピーセルフ(軽量版)の指示に従い、彩風は静止軌道に浮かぶ神の宝杖に到達する。
神の宝杖、それは全長数キロメートルに及ぶ巨大な円柱式の宇宙コロニーだった。
適度な遠心力を発生させる為に回転するシリンダー式宇宙コロニー。しかしその回転速度は尋常ではない。
輪郭すら見えないほどの高速回転。空気抵抗もない宇宙空間において、それは何百年も回り続けていたのだ。
零夏「なるほど、コロニー自体をフライホイールにしているんだな」
軽量セルフ「太陽光発電と核融合発電で得たエネルギーを、イオンエンジンで回転モーメントに変換し蓄える……イオンエンジンの出力なんてたかが知れているけれど、それが2000年積み重なればこうなるってわけだわ」
零夏「そして、セルファークに槍を打ち込む時は回転エネルギーを電力に戻してレールガンに供給する、ってことか。アジア方面のカバーに妙な物を浮かべやがって」
人型に変型した彩風。装甲は備えず、防御を電磁力による粒子操作―――N粒子に一任している為、その肢体はとても細い。
N粒子は頭部、肩部、腰部から足元へ向けて展開している。その様はまるでウェディングドレスであり、細い手足も相まって女性のようなシルエットとなっていた。
零夏「にしても、こんな大きな物をどこから壊せっていうんだ?」
軽量セルフ「あの頃は宇宙兵器も色々あったから、装甲も分厚いだろうね。それにセキュリティが生きてるかも」
零夏「えっ」
レーザーが何本も襲いかかってくる。
零夏「ど、どこからっ!」
軽量セルフ「あそこ!回転していない部分がある!」
コロニー周囲には砲身と固定されていない区画が幾つか浮遊している。
零夏「そりゃそうか、構造上、全部回すわけにはいかないんだ」
試しに一つに接近、宇宙服姿で飛び移り侵入してみる。
内部には生活区画。
零夏「神の宝杖は有人兵器だったのか」
人工衛星をイメージしていたので、零夏は無人だと思い込んでいたのだ。
探索すると、オペレーター室と複数人の骸骨を発見。
英語で書かれた日誌をセルフが翻訳する。そこに書かれていたのは、地球滅亡後に彼等オペレーターが何十年も孤独に生きていた日々が書かれていた。
軽量セルフ「あの頃はこっちはこっちで大変だったから。でも、救援に行くべきだったよ」
救える人類を救えなかったことに悔恨を抱くセルフ。
零夏は壁に貼られていた大きな星条旗をオペレーターに掛け、祈りを捧げた。
しばし黙祷。気を取り直し、零夏はコンソールを操作して神の宝杖の弱点を探る。
零夏「設計図を見る限り、やたら頑丈だな……おや」
発射口付近が脆弱であることに気付く。
彩風に戻り発射口まで移動。
零夏「照準合わせに時間がかかるのは、この回転がジャイロ効果を生み出すからか」
遅れて神の宝杖に到達した心神出現、戦闘に。
零夏「ソフィーが女王となったのはお前の意思なのか!?」
ガイル「そうだ!この世界には絶対の調停者が必要だ!」
心神の動きがおかしいと感じる。普段のキレがないのだ。
ガイルも宇宙での戦闘なんて初めてなんだと思い至る。風読みの才能も、大気のない宇宙では利がないのだ。
零夏「そこをつけば、勝ち目はある!」
しかしやはりガイルは凄腕であり、空戦戦術で苦戦。
零夏「外部タンク破棄、残りは機体内の推進剤だけだ……!」
宇宙での戦いは燃料のタイムリミットとの戦いでもある。
更に激しくなる心神の猛攻。
零夏「もう宇宙に対応し始めていやがるっ!」
零夏、距離を取ろうかと悩む。
『迷ったらとりあえず進め、かっこわりいぞ』
なぜか零夏はツヴェーの宿での、ガイルの言葉を思い出した。
零夏「―――つっこめえええ!」
ダメージを受けつつも突破する彩風。
ガイル「ばかな、この弾幕をこえてくるだと……!? 」
零夏「―――やっとだ。5年もかかったが、やっと―――追い付いたぞ、ガイル!」
ガイル「お前など、知らない!気安く名を呼ぶなっ!!」
零夏「お前が俺の知っているガイルじゃなくても、ガイルはガイルだ!俺達と別れる前、お前と零式の整備をしたろう?俺にとっちゃ、あれで充分なんだよ!」
(ガイルは勘違いをしている。いや、ガイルだけではない)
(ずっと昔、白鋼に浮遊装置を載せないと話した時、ガイルは拒絶と呼ぶに等しい反応をした)
(それがこの世界の常識。魔力なしの世界など、ここの住人にはありえない)
(けれど俺は知っている。人は魔力が、魔法がなくとも進歩していけると。空を飛べるのだと)
(だから、信じたい)
零夏「まだ手を血で汚すつもりか、英雄が聞いて呆れるぞ!」
ガイル「お前に、お前になにがわかる!」
心神と彩風は互角の戦闘を繰り広げ、零夏は隙をついて発射口に核ロケットを撃ち込むことに成功する。
舌打ちして離脱する心神。零夏も地球への帰路を急ぐ。
零夏「あとは帰るだけだ」
一安心して息を吐く。
ふと気付く。
零夏「どこからセルファークに入ればいいんだろう」
ヘヴンズドアはもう閉鎖している。
軽量セルフ「君はどこに降りたい、レーカ?」
零夏「ナビゲートしろよナビゲーター」
神の杖を破壊し、これで防衛不可能の大量虐殺は出来なくなったと安堵する一同。
セルファーク外装に神の宝杖が落下・直撃し、世界を大地震が襲ったのは更に一ヶ月後のことであった。




