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銀翼の天使達  作者: 蛍蛍
見知らぬ世界へ
1/85

ロリな女神と黒き騎士

 この作品は『銀翼の天使達』の再構成作品です。


 注意 この作品には挿し絵があります。苦手な方は挿し絵設定をOFFにして下さい。

「お主は死んだのじゃ」


 少女を象った光の輪郭。

 ふわふわと浮かぶ彼女は、唐突にそう告げた。


「いきなりだな」


 真っ白な空間。

 上も下もない世界には、俺と少女(?)の二人しかいない。

 これは、あれか。ロリ神、というやつか。


「長生きはするものだ。まさか、生きているうちにロリ神と対面しようとはな」


「死んどると言っとるだろう。それにお主いうほど長く生きとらんだろ、あとロリじゃないわい。更にいえばその本から目を離せ」


「気にするな。話はこれ読みながらでも聞こう」


「全力投球で失礼な奴じゃ!」


 四カ所全てにツッコミを入れていたな。神とは伊達ではないらしい。


「その本はなんじゃ?」


「ん?」


 雑誌の表紙を持ち上げる。


「……世界が違えど、男というのはそういうのが好きなのじゃな」


「愚問だな、この美に心惑わさない奴などいるものか」


 この優美なシルエットに見惚れない奴がいるなら、ソイツは玉無しだ。


「永遠の浪漫さ……メカニックは」


 迫力あるエフェクトの施されたロボット模型の写真。なんてことはない、模型雑誌である。

 エロ雑誌だと勘違いした奴、正直に手を上げなさい。


「ロボットだけではない。素晴らしいぞ、機械は」


 俺は少女に語る。

 複合装甲と一振りの(主砲)を携え戦場を駆け抜ける主力戦車。

 各種武装を総合的に制御し女神の盾の名に恥じぬ防御力を誇るイージス艦。

 そして航空力学の随を凝らし、重量という制限と戦いつつも最新鋭工学とアビオニクス(電子装備)の限界に挑む戦闘機。

 勘違いしないでほしい。俺は戦争を望んでいるのではない。

 技術者達の創意工夫と努力の日々が注ぎ込まれた彼らに、ときめかない男などいないっ!


「理解してもらえたな、ロリ神様」


 満足げに頷く俺。


「なにを理解すればよいのかすら最後まで解らんかったわ。あとロリいうな」


 ロリを否定するか。確かに言葉は年寄り臭い。ロリバ……ロリ淑女と見た。


「ところで誰だ君は? ここはどこ? 私は誰?」


「その質問、真っ先にするべきじゃよな!?」


 このロリ神、ツッコミ属性だ。


「しかし、自分のことを思い出せんのか? ここに来たショックで記憶が……?」


 真剣に悩むロリ神。いかん、「お約束でした!」なんて言い出せない。


「よし、まずはお主の名じゃ。お主は真山 零夏(まやま れいか)じゃ。どうじゃ、聞き覚えはないか?」


「まあそれは置いといて」


「……置いといて、いいのか?」


 釈然としなさげな少女。


「知っているぞ。こういう時になんて言えばいいか」


「なんというのじゃ?」


 興味があるのか首を傾げる。

 そんな姿に内心ときめきを覚えつつ、俺は大きく息を吸い込み、叫ぶように言い放った。


「はい、テンプレテンプレッ」


「……本題に入っていいかの? 時間がないのじゃ」


 ごめんなさい。


「先にも言ったが、お主は死んだ」


「トラックに轢かれたのか?」


「死因までは把握しとらん」


 いや、そうに違いない。

 正義感溢れる俺のことだ、信号無視したトラックが子供を撥ねそうになり、間一髪助けたものの……といったところか。


「さすが俺だな……」


「話を続けるぞ。お主はこれから―――」


 手の平を翳し彼女の言葉を遮る。

 俺は不敵に笑みを漏らし、続きを引き継いだ。


「―――他の世界に行ってもらう、というのだろう?」


 光の輪郭故に顔は判らないが、ロリ神から驚愕の気配が伝わった。


「な、なぜそれを……!?」


「なぜ、か。それを問おうとはな、勉強不足としか言いようがないぞロリ神」


 自信満々にどや顔をしておく。意味なんてない。


「……なるほど、お主はわしには知り得ない理を把握しているようじゃの」


 勝手に解釈してくれた。

 つーか、さっき「世界は違えど」って言ってたし。


「その通りじゃ。お主はこれから別の世界で生きてもらう」


「それは、あんたの都合なのか?」


 どうせ書類にコーヒー零したとか、そんなのだろ?


「……そうじゃ。お主にはすまんと思っている」


 申し訳なさそうに項垂れるロリ神。

 その頭にポンと手を乗せ、ぐしぐし撫でてやった。


「うおっ、なにをするのじゃ!?」


 光の輪郭とはいえ、実体は存在するらしい。しなやかな髪の感触が指先に触れる。


「気にするな。俺は、気にしない」


 子供に落ち込まれると困ってしまう。中身はお婆さんだったとしても、だ。


「死因を把握していないってことは、君が死の原因なわけではないのだろう? なら、第二の生を与えてくれることに感謝だよ」


 目的もなく生きていた半生であったが、ぽっくり死んで納得出来るわけではない。

 楽しいことがしたい、趣味を満喫したい、美味い物が食いたい。

 目的がなかったからこそ、時間が欲しい。

 それをくれようというのだ。感謝しないはずがない。


「……ありがとう」


「なぜ君が感謝する? ありがとうと言うべきは俺だって」


「そう言ってもらえると、ありがたい」


「だから、ありがとうは俺が……」


 おっと、このままではありがとう合戦を繰り返してしまうな。


「ありがたいついでに、頼みをしていいか?」


「ちゃっかりしているなロリ神」


 とはいえ上目使い(見えないけど)で迫られたら断れまい。

 基本、子供には弱いのだ。


「お主には、姫の手助けをしてほしいのじゃ」


「誰?」


 姫とは、またベタな……


「お主はいつか、雪の如く白き姫と出会うであろう。この娘を助けてほしい」


「助けるっつったって……俺一人で出来ることなんてたかが知れているぞ? 俺はただのミリオタだ」


 戦いなんて経験がない。武術を多少嗜んでいるが、それでも一般人より強い護衛にしかならないだろう。

 それとも神様パワーで特殊能力を与えられたりするのだろうか。

 光輝く剣を振りかざし、颯爽と敵に立ち向かう自分を想像する。我ながら似合わない。


「なにも悪人から救い出せ、と言っているのではない。お主の出来る範囲で、好きなように行動してくれればよい。むしろ変に無理に干渉してくれるな」


 要求が微妙過ぎてむしろ難しいのだが。


「気にとめてくれればいいのじゃ。無理だと思ったことは、やらんくていい」


「そういうことなら」


 真意が気になるが、なんせ神の思惑だ。無理に読み取ろうとしても無駄だろう。


「いうべきことはそれくらいかの。ああ、お主は魔法を使えんよな?」


「俺の住んでいた世界には魔法なんてなかったよ」


「そうらしいな。わしらからすれば魔法のない生活というのを想像出来んが……まあ、世界を渡った暁には膨大な魔力を有することになっておる。魔法を習得すれば生きるのも楽だと思うぞ?」


 チートキター!


「あと肉体も新しい物を用意することとなる。年齢は一〇歳じゃ」


「そうか、ついでにイケメンにしてくれたって構わないんだぜ?」


 さりげなぁ~く要求してみる。


「いや、無理にとは言わないぜ? ただやってくれると嬉しいかな、ってくらいでさ。お願いしますどうかこの通り」


「……善処しよう。あとは……なにかあった気もするが、まあいいか」


 いいのか?


「話はこれで終わりじゃ。達者で暮らすのじゃぞ」


「おうっ」


 ロリ神は垂れ下がっていた紐を引く。

 床にぽっかりと穴が開いた。


「いや、紐なんてなかったろ」


 浮遊感、そして落下感。

 新たな世界に思いを馳せつつ、俺は落とし穴へと落ちて行った。



イレギュラーをカットしました。

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