表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

*闘う者

カイ!」

 呼ばれて振り返ると、懐かしい顔がそこにあった。

レツか!?」

 50代半ばの白髪交じりの男が、戒に小さく手を振る。

「田舎に帰ったはずでは……」

 かつての仲間に苦笑いを浮かべる。

 そんな戒に、老齢の男は年相応の笑みを浮かべ目を伏せた。

真仁まひと君が、ハンターたちに声を掛けている事を知ってね。国内の内乱はテレビの報道で知っていたから」

 この歳でも何かの役に立てる事があるだろうと、柔らかに発した。

「ボクは断ったんだけどね。どうしてもってうるさくて」

 真仁は肩をすくめて腕を組んだ。

「前線には出られんが、後方支援なら出来る。ハンターの事をよく知る者がいた方がいいだろう」

 そう言って、ハンタードッグを引退し田舎で隠居生活いんきょせいかつをしていた烈は、品の良い紺色スーツのえりに触れる。

 彼のスタイルは紳士的な服装と戦法だったなと、戒は思い起こし瞳を細めた。

「殺す側から守る側に回るのだ。このチャンスを見逃すわしではない」

 戒は烈の言葉に、戒たちは薄く笑った。



 それから、ノートパソコンをいじっている真仁を見下ろしつつ戒は、リボルバーの手入れを始めた。

 着ていたコートを脱ぎ、真ん中にあるレンコンの形をしたかたまりを横にスライド(スイングアウト)させ、弾薬カートリッジをその穴に差し込んでいく。

 その姿を見ていた真仁は、呆れるように溜息を吐き出した。

「相変わらず君は歩く武器庫だね」

 そんな真仁の声に、戒は鼻を鳴らす。

 青年が呆れるのも無理はない──両足の太ももにはレッグホルスター(収納ベルト)にリボルバーが2ちょう、脇にはショルダーホルスターにリボルバーが1丁。

 腰の背後には、2つのバックサイドホルスターにオートマティック拳銃が2丁と、ナイフのがちらりとのぞいている。

 もちろん、それぞれのホルスターには予備の弾倉マガジンとカートリッジが収められていた。

 彼はリボルバーとオートマチック、2種類のハンドガンを操る。

 リボルバーは信頼性の高い銃だが、旧式として最近ではあまり使用されていない。

 薬室と弾倉を兼ねている形状のため、カートリッジの装弾数が少ないのが理由だ。

 使用されたカートリッジの薬莢やっきょうも、手動排莢しゅどうはいきょうなので連続した戦闘には不向きともいえる。

 さらに付け加えるなら、消音器サイレンサーは意味をなさない。

 速射性そくしゃせいは高いが、使い処の難しい銃でもあるという訳だ。

「どうせ、まだいくつか何か隠し持ってるんだろ?」

「隠しているから見えないんだろ」

 真仁の言葉にしれっと返す。

「君が参加してくれて頼もしいよ」

過大評価かだいひょうかけるべきだ」

 俺に頼られても困るというように、戒は眉をひそめた。

「辞めたあともトレーニングはやってたんでしょ」

 軽く手で胸を示される。

 ハンタードッグを辞め、モンゴルで1年を翼と共に過ごしていたが、確かにトレーニングを欠かす事はなかった。

 薄手の黒いボディスーツがなぞる体のラインで、それがよく解る。

「やらんと返って気持ちが悪い」

「まあ、習慣ていうのはそんなもんだよね。タバコは止めたようだけど」

「っ!」

 思わず、パンツのバックポケットに手を伸ばす。

 恋人の影響で吸い始めた無害タバコは、その彼女が死んでからも吸い続けていたが翼という新たな家族が出来た事で吸わなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ