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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第1章~矢は放たれた
5/32

*レプリカ

 翼たちの参戦に際し、準備を始めた真仁を視界に捉えながら戒は再び周囲を見回す。

「彼らは」

「うん、クローンだよ。主に風俗店で働いていたクローンだけど」

 作業をしながら説明した。

「中には、預かってくれと言われて預かってるクローンもいるけどね」

 翼は真仁の言葉に喉を詰まらせ、戒に視線を移した。

「戒は、どうしてクローンを造らなかったの?」

 躊躇いながら問いかける。

「クローンはコピーじゃない」

 か細い問いかけに瞠目どうもくしつつも、わずらわしげに答えた。

 彼女のクローンを造ったとしても……死んだ菜都美なつみは戻ってこない。

「昔、クローンを虐待している家族を見たことがある」

 病気で死んだ息子の細胞からクローンを造った。

 しかし父親は、「お前は息子じゃない!」と叫びながらクローンを暴行していた。

「クローンを作成する時に説明を怠ったせいだよ」

 真仁が応える。

「昔は人間の胎内を介さなければ育たなかったクローンも、今は人工子宮である程度まで成長させるコトは可能だけど、クローンは生まれ方の異なる人間であってレプリカじゃない」

 それを一切、説明せず求められるがままにクローンを作成していく。

「クローンはコピーじゃないという意識が、全ての人に浸透しているワケじゃない。クローンに対する誤認が未だに横行しているんだ」

 だから、その意識さえ正せればクローン自体が悪いとは思わない。

「ちゃんとした意識さえあれば、クローンを認めるコトだって構わないと思うよ」

「それを見たから、戒はクローンを造らなかったの? でも、その恋人の両親は──」

「俺が止めた」

 娘の事を想うなら、その記憶を大切にしたいなら、クローンという見せかけの虚像を追ってはならない。

「時間はかかったが解ってくれたよ」

 すでに恋人の両親も他界したが、自分が言った事は間違っていないと今でも言える。

「まあ、今は戦時下にあるワケだから手元にクローンを置いておくのは危険だもの。それで預かってくれって言う人たちが多いんだよ」

 死んだ時は仕方がなかったと諦めてくれと前もって納得してもらい、真仁はクローンを預かっている。

「大丈夫、ボクの預かっているクローンの主人たちはボクのお客さんたちだから。まず初めに、ちゃんとした認識を持ってもらってからクローンを造るかどうか決めた人たちだよ」

「!」

 翼はそんな真仁を怪訝に見つめた。

 聞けば聞くほど、どうして今まで彼がハンタードッグを雇い、狩りをさせていたのか疑問でならなかった。

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