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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第1章~矢は放たれた
4/32

*希望

カイ!? 戒か」

 聞き覚えのある声に振り返ると、大柄な40代半ばの男が笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってきた。

「! レイ

つばさもいるのか!」

「久しぶりだね」

 怜という男の周りに、2人に見覚えのある面々がずらりと並ぶ。

真仁まひとに従ったのか」

 戒が感心するように発すると、怜たちは小さく頷いた。

「確かに、俺たちは今までクローンを殺してきたが、他のやつらがそれをやっちゃいけねぇよ」

 自分たちのしている事が良い事だとも、ましてや正義だとも思っていなかった。

 それは、ただの人殺しに他ならない。血に染まった手を見つめる己の姿など、誰が良しとするだろうか。

「俺たちは自分のしてきた事を解っているからいい。だが、一時いっときの感情でクローンを殺す事は間違ってる」

 怜は喉の奥で舌打ちした。

「政府は今の状態を収拾しゅうしゅうしきれず放置状態なんだ」

 真仁が説明を続け、ハンターたちは苦い表情を浮かべる。

「で、ボクたちは擁護派ようごはと呼ばれていてね。クローンを殺している人たちは強硬派きょうこうはと呼ばれているんだ」

「まさに二分にぶんされた訳か」

 戒は低くつぶやいた。

「じゃあ、向こうにもリーダーがいるんだ」

「強硬派のリーダーは戸塚という男だよ」

 翼の言葉に真仁は、若干の薄笑いで応える。

「! 戸塚?」

 戒は、その名に眉を寄せた。

「君は知ってるんだったね」と真仁。

 モニタールームで、戸塚の画像を見せながら愚痴をこぼした事を思い出す。

「向こうにも向こうのハンターがいてね。良ければ手伝ってくれないかな」

 笑みを浮かべつつ、瞳を険しくして戒を見つめた。

 元特殊部隊にいた戒は、ハンタードッグとしても優秀だった。その彼が加われば、真仁たちはかなり優位に立てる。

「もちろん、断ったからといって君たちを責めるつもりはないよ。こんなコトを頼むボクがおかしいんだから」

 いつもの微笑みだが、その声色にふざけた様子はない。

 しばらく真仁を見下ろし、翼を一瞥した。

 それに気づいた翼は、小さく溜息を吐き出し肩をすくめる。

「僕に気を遣うのは止めてよね。兄さん」

「! 兄さん?」

 目を丸くして戒と翼を交互に見やった。

「なんだ、恋人じゃないの」

「誰がだよ」

 真仁のおかしな発想に翼は頭を抱える。

「戒を追いかけていったから、てっきりそうだと思ってた」

「お前の頭の中はどうなっているんだ」

 さすがに戒からも溜息が漏れる。

 翼は戒を兄のように慕い、戒がハンターを辞めるとそのあとを追いかけたのだ。

「戒が僕のことを考えないなら、真仁に協力しているんだろ? それは僕も同じ考えだ」

 死ぬことは怖くない。僕は戒の行く方向に進む──翼はりんとした瞳で発した。

 大きな瞳で見上げる翼に驚き、その鋭い瞳を一度、瞼に隠した。

「詳しく教えてくれ」

 戒の言葉に、そこにいたハンターたちはワッ! と歓声を上げた。

「ありがとう。改めてよろしく」

 真仁は緩やかな笑みを浮かべ、戒に手を差し出す。

 戒もそれに応え、握手を交わした。

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