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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆最終章~螺旋は踊る
30/32

*ニュートラル

「戸塚は倒したけど、まだ終った訳じゃない」

 帰ってきたハンターたちに真仁まひとはそう告げ、これからも協力してくれるように願った。

 もちろん、ハンターたちはそれを了承する。



 その夜──いつものようにパソコンをいじっている真仁に、カイはウォッカの小瓶を手に歩み寄った。

 そんな戒に、真仁がヘッドセットを差し出す。

「!」

「チェックよろしく」

 言われてヘッドセットを受け取り、右耳に装着して起動させる。

「っ!?」

 そこに映し出された文字は戒を驚かせた。

 そんな男を真仁はいつもの微笑みで見つめ、つぶやくように問いかける。

「ボクのことが知りたいんだろ?」

 君のおかげで予想よりも早く収束しそうだから、ご褒美として教えてあげる。

 真仁は足を組み、デスクに片肘を突いた。

「──っお前は何者だ」

 驚愕きょうがくに目を見開き、ヘッドセットを外す。

 そこに映し出されていたものは、真仁に示されたコードだった。

 だがクローンではない、そのコードはクローンのものではなかった。

 じゃあ一体、何のコードなんだ?

「それは、ボクだけに埋め込まれているただ1つのコードだよ」

 戒を一瞥し、少し躊躇う言葉を切ったあと青年は暗闇に視線を向けた。

「ボクは、言わば人間とクローンの中間に位置する」

「どういうことだ」

 怪訝な表情を浮かべた戒に視線を合わせず青年は一度、目を閉じて語り始める。

「クローンが成功するとね、科学者というものはそこから造り出そうとするんだよ」

『天才』という人間を──

「ボクの祖父という位置にいた科学者は、優秀な人間から採取した細胞をさらに遺伝子操作し、クローンを作製した」

 話がまだ見えてこない戒をちらりと見て、再び闇に目を移す。

「その中から優秀なクローンだけを見繕みつくろい、大幅な成長促進をして男女の“つがい”にした。解るかな? 子どもを生ませたんだよ」

「!? まさか──」

「飲み込みが早くて助かる。それがボク」

 完璧な人間を造りたかったんだろうね、真仁は淡々と続ける。

「でも、そのクローンたちは無理な遺伝子操作と成長促進のために、ボクが10歳になる前に死んでしまったよ」

 その科学者はクローンたちを自分の息子や養女とし、真仁を孫として戸籍を作成していた。

「祖父である科学者は5年以上前に病気で死んじゃったけどね」

 科学者のスポンサーだった内の1人がそのまま真仁を引き取り、自由気ままに生活する事が出来た。

「何故ボクを引き取ったかは解ってる」

 祖父の研究が成功したかを確かめるためだ。

 そのために意図的に真仁を自由にさせていた事も知っていた。

「大富豪っていうのは、政財界ともつながっている。だから、ボク自身にもある程度の力が使えたってワケ」

 薄笑いを浮かべて肩をすくめた。

「いま考えると、一度くらいグレてても良かったかなって思うよ。この年ではさすがにもう恥ずかしくて出来ないけど」

 笑んだあと、やや表情を険しくさせた。

「そんな時に、ある企業の話が伝わってきたんだ」

 調べるためには組織を作らなくてはならない。

「大変だったよ。組織をここまでにするのはね」

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