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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第8章~幕は下ろされた
27/32

*エサの効果

 無線を流し終えた戸塚はコーヒーを口に運び、それを筒井は一瞥する。

「来ますかね」

「来るさ、必ずな」

 コーヒーを傾けながら、目の前のディスプレイを見つめて薄笑いを浮かべた。



 戸塚のいる大使館から少し遠い場所──

 後ろ手に手錠をかけられたカイは、広い道路で男2人に両側から腕を掴まれていた。

「?」

 一体、何をするつもりなのかと怪訝な表情を浮かべる。

 そのとき、見覚えのある影がこちらにゆっくり向かってくるのを視界に捉えた。

真仁まひと!?」

 確認出来る距離まで近づいた人影に声を上げる。

「やあ」

 青年はいつものように笑みを見せた。



 大使館──戸塚は、ディスプレイに映る真仁に勝ち誇った表情を浮かべる。

「!」

 扉が開く音に筒井が振り返ると、そこにつばさが立っていた。

「ここには入るな」

「まあ良いじゃないか、真仁が傷つく所を見せてやろう」

「! 真仁?」

 翼は足早に戸塚に近づき、画面を確認して小さく笑ったが向かいにいる戒に眉間にしわを寄せた。

「なんで戒が?」

「真仁は奴が好きなんだろう? まんまとおびき寄せられたよ」

 戸塚は、褒めてくれとでも言うように発した。

「絶対、取られないようにしてよ」

「解っている」



 真仁が目の前にいる事に戸惑う戒を、男たちは制するように腕に力を込める。

「何故だ」

「解ってるだろ」

 青年は静かに発し、戒を見つめた。

 10mほどの距離は、近くも遠くも感じられて妙にもどかしい。

「翼か……彼には隠せなかったんだね」

 愁いを帯びた笑みに溜息を乗せる。



「殺すの?」

 ディスプレイを見つめていた翼が戸塚に問いかけた。

「いいや、捕まえて色々と尋問する」

 勝利に口の端を吊り上げる戸塚を翼は見下ろす。

「じゃあ──」

 そして、戸塚の耳元でささやいた。

「あんたが死ぬ方がいいね」

「!?」

 驚いて振り向いた瞬間──可愛い笑顔の端に捉えられた銀色に輝く薄い金属が戸塚の首を走った。

「なぁ!?」

 熱い痛みに首を押さえ、瞳は驚愕に見開かれた。

「!? 貴様っ!」

 一瞬の出来事に驚きつつ、筒井はすかさず翼に飛びかかる。

 翼はそれを難なく交わした。

Byeバイ

 笑みを浮かべステンドガラスに突進すると、割れて散らばる色鮮やかなガラスたちが太陽の光を反射して輝いた。

「殺せ!」

 筒井の声を聞きながら無事に地面に着地し、状況が飲み込めないハンターたちの横をかすめて走り去る。

「戸塚!」

 筒井は慌てて戸塚に駆け寄るが、助からないとすぐに悟った。

 翼はいつの間に刃物を手に入れていたんだ?

 記憶をたぐり寄せる。

「! トレイ!?」

 落ちている銀色の板を見やった。

 戒に食べさせるための料理を乗せていた金属のトレイ、それを力任せに引き裂き簡易の刃物としたのか!?

 翼の考えとは思えない、戒の入れ知恵か!



 戒と真仁は無言で見合った。

「そろそろかな」

「そうだな」

「?」

 示し合わせたような2人の言葉に、男2人は怪訝な表情を浮かべた。

 その刹那、後ろ手にかけていたはずの手錠が音を立てて地面に落ち、戒は声も出せずに驚く男たちに口の端を吊り上げた。

「!? きさ──っ」

 慌てて構えた2人をすかさず叩き伏せた。

「ピッキングも得意なんだねぇ」

「戻れ」

 真仁に言って、身を低くし近くの壁に走る。

 途端に始まる銃撃戦、土嚢どのうを盾に銃を構えている仲間が戒に武器とヘッドセットを投げ渡した。

<おかえり>

 右耳に装着すると、聞き慣れた声が流れた。

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