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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第8章~幕は下ろされた
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*哀しみの微笑み

 次の朝──戸塚はつばさを呼び出し朝食を共にする。

「いくらでも食べたまへ」

 先日よりも戸塚の触れる手がエスカレートしているが、約束した以上は仕方がない。

 我慢して料理に手を伸ばし、その味に笑みを浮かべると戸塚も嬉しそうに笑う。

 扉のそばでガードついでに見ている筒井は、気持ち悪い光景に目を逸らした。

 そうして食事を終えた翼は、昨日と同じように料理を手に部屋に戻る──それを確認した戸塚はモニタールームに向かう。

 部屋の前に到着すると、後ろにいる筒井に目配せしてドアを開いた。



 しばらくして翼の部屋にノックの音が響く。

 入ってきたのは、筒井と見知らぬ男が1人──

カイを借りるぞ」

 怪訝な表情をしている翼に無表情に発した。

「! なんで!?」

 翼は思わず立ち上がる。

「終ったら返してやる」

「痛いコトしないでよ」

 乱暴に連れて行かれる戒を見やって発する。

「解っている」

 口の中で舌打ちをして応えた。



 戸塚は、モニタールームで今日の戦闘風景を見つめていた。

 真仁まひと側は平静を装うように銃撃戦を繰り広げているが、その戸惑いは微かに見て取れる。

 戒という強力な戦力を無くし、強敵の水貴を相手にしなくてはならないのだから。

 戸塚はニヤリと口角を上げ、通信機を手に取った。



 地下──

<この声が聞こえているか>

 真仁は、聞こえてきた音声に眉を寄せた。

「!」

 真仁と会話を交わしていたレツも驚く。

 簡単な無線機でも受信出来る波長で流されている、それが戸塚だと理解するのに時間はかからなかった。

<戒は預かっている。返してほしければ1人で来い>

「! 戒が!?」

 烈は、目を丸くして真仁を見やった。

「……」

 真仁は苦い表情を浮かべて、思案するように押し黙った。

「!? 真仁君、まさかきみっ」

 おもむろに立ち上がった真仁を見上げる。

「ごめんね、途中で投げ出すようなコトになって」

 老齢の男に愁いを帯びた笑みを浮かべた。

「!? まっ、待ちなさい!」

 出口に向かう真仁の背中に手を伸ばしたが、金属の扉は無情にも開かれた。

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