表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第6章~裏切りの明日
22/32

*叫びと嘲笑

「あいつは、僕がカイそばにいるのが気にくわないんだ。戒を自分のモノにしようとして僕を売るつもりだった」

「違う! それはお前の誤か──」

「何が違うって言うのさ!」

 振り返り戒の言葉を遮った。

「戒は鈍感だから気がついて無いだけだ! 僕には凄くきつくて、戒には優しかった」

「……っ」

 手錠の金属音が戸惑いを見せる。

「真仁がこの男を?」

 戸塚は手を後ろで組み、まじまじと戒を見つめた。

「あんたは真仁を少年趣味だと思ってたみたいだけど」

「で、こちらに寝返ったという訳かね」

「寝返った訳じゃない」

「ではどういう事かね」

 戸塚は眉をひそめる。

「戒を取られたくないからこっちに来ただけ」

 戸塚は再度、戒を見上げた。

 こんな男を奪い合っているのか……と眉間のしわを深くする。

「僕が嫌いなのは真仁だけ。だから仲間の情報は売らないよ」

「随分と勝手な言い分だな」

 口の端を吊り上げて言い放つ。

「条件がある」

 喉を詰まらせた翼に付け加えた。

「! 戒はだめだよ」

 戸塚は「そんなものはいらん」とでも言うように左手を振り、翼に目を合わせて交渉を始めた。

「その男は君のモノだ。しかし、君がわたしのモノになるならここに置いてやってもいい」

「!」

 翼は一瞬、驚きじっと戸塚を見つめた。

「……酷いコトしない?」

「もちろんだとも! 優しくしてやろう」

 戸塚は両手を広げ、安心させるように笑顔を見せた。

「翼! 馬鹿なことは……っ」

「うるさいな! 戒は黙っててよ!」

 多少、疑ってはいる戸塚だがこの様子は演技とも思えない。

 ひとまず、筒井に視線を流し軽く手を示した。

「部屋をあてがってやれ。後でまたゆっくり聞こう。奥の部屋だ」

 筒井はそれに無言で頷き、翼を促す。

 翼は戒の腕を掴み、男のあとについて部屋を出て行った。

「……」

 それを確認した戸塚は、数秒ほど険しい表情を浮かべていたが自然と笑みがこぼれる。

「こいつはいい」

 戒という強力な戦力が失われた真仁は慌てている事だろう。

 しかも翼まで手に入るとはわたしに運が向いてきた、これが喜ばずにいられようか。

「く、くくく……。はぁっはっはっはっ!」



 翼は足の重い戒を無理矢理に引っ張り、筒井の後ろを追いかける。

 案内された部屋に入ると、想像よりも豪華な部屋だった。

「わお」

 口笛を鳴らし、部屋を見回しながら戒を引きずるように扉をくぐる。

「!」

 目の前の椅子を見つけ、戒をそこまで引っ張り手錠を片方だけ外した。

「翼」

「黙ってて」

 困惑している戒にぴしゃりと言い捨て、強引に座らせる。

 そして、戒の腕を椅子の背もたれに回して再び手錠をかけた。

「これでやっと真仁から離れられた」

 翼はニコリと可愛い笑顔を戒に降ろす。

「あとで呼ぶ」

 筒井はそれを眺めてそれだけ発すると扉を閉めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ