*予兆
ハンターたちは設置したカメラの位置を真仁に示していき、それと映されている映像を照合してコンピュータに入力していく。
地道な作業を繰り返し、真仁たちは少しずつ戦場と庭を広げていった。
敵は敵で同じ事を行っている。
牽制し合うという意味でも、互いのカメラは壊さずにいるらしい。
破壊する行為は、相手に情報を伝える意味にもなるため自重しているとも言う。
「水貴がいたんだって?」
真仁は、入力しながら戒に問いかける。
「水貴の持ってる通信コードは探れないの?」
翼が横から訊ねた。
「実は水貴がいた組織は最近ここに来たんだ。前は埼玉辺りで戦っていたんだけどね」
「じゃあ、なんでこっちに?」
宙に問いかけながら戒に視線を送った。
「だと思うよ」
応えた真仁も戒に目を向ける。
「俺のせいか……」
2人の視線に戒は小さく溜息を吐き出した。
「ハンターなら誰でも君と闘ってみたいと思うんじゃない?」
「僕は勝てる気がしないから嫌だけど」
翼の言葉に、聞いていたハンターたちも手を挙げて同意した。
「……お前らな」
「ま、どっちかになるだろうね。因みにボクは闘ってみたいと思うよ。ハンターだったらの話だけど」
キーボードを打ちながらしれっと応える。
「水貴たちのいる組織のコードは今日中になんとか設定するよ」
戒を一瞥しニコリと笑った。
「頼む」
軽く手を挙げて応え、壁に向かう。
背を預けてしゃがみ込み、水を飲んでいると隣に翼がちょこんと腰を落とした。
「肩は大丈夫か」
「うん。まだちょっと痛むけど」
肩をさすり真仁を遠目で見つめた。
「ねえ」
「ん?」
「真仁は僕のこと嫌いなのかな」
「何故だ」
問いかけた戒に目を向けず顔を伏せる。
「だって……僕にはいつもきついんだ」
「そうか?」
戒はウォッカをひと口、味わいながらさして関心もないように応えた。
「戒には優しいから気づかないんだよ」
「お前の気にしすぎだ」
その言葉に翼は唇を尖らせて、納得のいかない表情を浮かべ顔を伏せた。