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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第4章~閃光の先
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*確かな痛み

 しばらく呆然としたカイだが、のんびりしている場合じゃない。

 すぐに意識を切り替えてスナイパーライフルを構えて敵をスコープに捉え、男が顔を出すタイミングを見計らい引鉄ひきがねを引いた。

 銃弾が当たって倒れた事を確認し、スナイパーライフルを下げる。

 装填していたカートリッジは使い切った。何より、これ以上は集中出来ない。

 装填数は5発、その数だけ敵も倒した。

 まずまずだ……。思いながら、リボルバーを右太もものレッグホルスターから引き抜く。

 カートリッジの確認をし、つばさの隣に駆け寄りしゃがみ込んだ。

 ニコリと翼が笑った刹那──

「うっ!?」

「翼!」

 右肩に銃弾が当たり、その勢いで倒れ込む翼を戒が受け止めた。



「!?」

 その映像見ていた戸塚が音を立てて立ち上がり、握りしめた拳を震わせる。

「……」

 その形相に、そこにいた男たちは黙り込んだ。



「翼!」

「いたた……だ、大丈夫。かすっただけ」

 戒たちが着ているボディスーツは、正面からの衝撃には強いが横の擦れには弱い。

 銃弾が走るほどの速度だと、やはり負傷は免れない。

 戒はバンダナを取り出し翼の肩を強く縛った。

「……っ」

 思わず小さく唸った翼に、戒は安心させるように目を合わせる。

<今回はここまでにしよう>

 真仁の指示に戒たちは素早く退いた。



 それをディスプレイ越しに眺めていた戸塚は、筒井に声を低くして発する。

「撃った奴を連れてこい」

「解りました」

 それだけ言うと戸塚は無言で部屋から出て行った。



「翼クン大丈夫?」

 肩を押さえて帰ってきた翼に真仁が声をかける。

「大丈夫だって。そんなに深くないから」

 戒に促され、翼はホームの端でパイプイスに腰掛けた。

 服を脱がせ怪我の具合を確かめる。

「縫うぞ」

「ええっ!?」

 戒が手を差し出すと、仲間がソーイングキットをその手に乗せた。

「我慢しろ」

「うへぇ~」

 50度の酒に針を浸し、消毒している様子をげんなりして見つめる。

 裂けた部分にも酒を塗られ声を上げた。

「せめて消毒液にしてよ~」

「ごちゃごちゃ言うと痛くするぞ」

 翼は黙り込んだ。

「い──っ!?」

 拳を強く握りしめ、必死に痛みに耐えた。

「終わりだ」

「はぁ~……」

 戒が離れると、別の仲間が包帯を巻いていく。

「!」

 ニヤニヤと笑っている真仁に戒は怪訝な表情を浮かべる。

「彼、怒ってると思う?」

 そんな戒に青年は口を開いた。

「! ああ……。どうだかな」

「まあゆっくり休んでよ、疲れたでしょ」

「そうさせてもらう」

 戒はそれだけ言うとコートを脱ぎながら壁に向かい、しゃがみ込んで背を預け腕を組み目を閉じた。

 真仁は投げ捨てられたコートを掴み上げ、「お疲れさま」と小さく発して戒にかけてやる。

 敵を狙撃する集中力というのは、気力と体力をかなり消耗する。

 静かな寝息を立てている戒をねぎらうように、じっと見つめた。

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