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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第3章~堂に入っては堂に従え
13/32

*質と量

 次の日──カイつばさを加えた本格的な戦闘が開始された。

 相手との距離は約50mほどだ。

 主なリーダーはレイだが、戒の指示には従うように真仁から指示されている。

 金属の看板やコンクリートのかたまり、ドラム缶などを盾にして互いに銃撃戦を繰り広げていた。

 銃弾が飛び交い、激しい音が断続的に響き渡る。

「上からの映像は出せるか!?」

 戒は、やや離れた壁際から相手の全体を窺いヘッドセットに発した。

<ちょっと待って、そこから右斜め上のビルからの映像を送る>

 真仁の声に右上を見上げる。

 敵側の背後にある高いビル、そこに設置されているカメラの映像が戒のヘッドセットのディスプレイに映し出された。

<そのカメラと君のヘッドセットをリンクさせた>

「ふむ……」

 ヘッドセットにあるボタンでカメラを操作する。

 こちらは6人相手は10人だ、数で負けている。

「怜、翼を奴らに少し見えるようにして左から攻めろ」

 ちらりと翼に視線を移し、怜に声を送った。

<え? なんだって?>

 玲の返答を待たずに通信を切り、ヘッドセットを左耳に付け替えてスナイパーライフルに手をかけた。

 怜は翼に右側で攻撃するように指示を出し、見つからないように4人が左に回る。

 にわかに相手の動きが変わった──戒以外は誰も気づかない変化だが、それを逃すほど彼は優しくはない。

 スナイパーライフルの引鉄ひきがねを引くと、向こうの敵が派手なリアクションで1人姿を消した。

 それに戒は怪訝な表情を浮かべ、装填そうてんされているカートリッジを確認する。

「……」

 当たると少々、強い衝撃のあるカートリッジが装填されているようだが、まあいいか……と再びスコープをのぞき込んだ。

 相手はそれに警戒して身を縮めたが、攻撃する時はわずかでも体を出さなければならない。

 戒はその一瞬に集中した──ライフルから放たれる弾丸は確実に敵を捉えていく。

 さすがに4人も倒されると相手は少し慌て始めた。

「……」

 スコープ越しに見える景色に、戒は懐かしさを感じ目を細めた。


 戸塚側のモニタールーム──

「……っ化け物か」

 ディスプレイに映し出されている様子に、筒井が目を見開く。

 戒という男1人が加わっただけで、形勢はかなりこちらに不利となった事を感じた。

 他の場所でも戦闘は行われているが、戒のいる戦場が最も銃撃が激しい。

「……」

 ちらりと後ろにいる男を一瞥した。

 その男は、別のノートパソコンのディスプレイを眺めてニヤついている。

「やはり可愛いな」

 腹の出た40代後半の男、戸塚は映し出されている翼に口の端を吊り上げた。

 真仁も戸塚も、互いに設置したカメラを使用し戦闘を有利に進めようとしているが、ハンターの練度れんどの差は歴然だった。

 ハンターの数は圧倒的に戸塚側がまさっている。

 それでも真仁が互角に戦い抜けるのは、ハンターたちのレベルの差だ。

 それに加えて真仁の指揮にも目を見張るものがあった──相手に予測する暇を与えず、常に動きをつけて翻弄ほんろうする。

 組織同士の付き合いの頃は、ただの若造だと舐めていた戸塚だが、今では目の上のこぶでしかない。

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