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踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>  作者: 河野 る宇
◆第3章~堂に入っては堂に従え
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*兎の衣を借る虎

「戸塚が飼っているハンターたちは定期的に巡回してクローンを探してる」

 次の朝──真仁まひとはプロジェクターで壁に都心の地図を映し出し、教鞭きょうべんを手に差し示していく。

「とは言っても、彼らはボクたちのようなヘッドセットを使ってるワケじゃない。自分たちの判断で手当たり次第に出会った人たちを殺しているんだ」

 ハンターたちは聞き慣れた言葉に渋い表情を浮かべた。新しく参戦する戒と翼以外のハンターたちは、ずっとそんな相手と戦ってきたのだ。

「戦力としては五分五分だと思う」

 互いに決定打けっていだに欠けている。現在は膠着状態こうちゃくじょうたいと言ってもおかしくはなかった。

「これからの作戦としては、カイつばさを中心に派手に揺さぶりをかける」

 それに異議を唱える者はいない。一通りの確認を終え、作戦会議は締められた。


「ねえ戒……」

「なんだ」

 装備確認を行っている戒に翼がぼそりと話しかける。

「なんか僕の服だけみんなと違う気がするんだけど」

「気のせいだろ」

 戒はしれっと応えた。納得のいかないような顔をする翼を一瞥いちべつし、再び武器の確認をしていく。

「気のせいなのかなぁ……」

 首をかしげて離れていった。確かに翼だけは替えの服を渡され、それは他のハンターたちと少し違っていた。

 戒はいつもの服装だ。革靴に暗緑色あんりょくしょくのパンツ、そして草色の薄い生地のロングコート。中には黒のボディスーツを着ている。

 他のハンターたちは共にミリタリー服で固めていた。しかし翼だけは……ソフトデニムのジーンズに長袖のTシャツ、その上はファッション性の高いグレーの防弾ベストである。

 その姿は彼の可愛い顔立ちを引き立たせるものだった。もちろん、Tシャツの下には戒と同じボディスーツを着用している。


 数時間後、戒と翼は武装して外に出た。ヘッドセットから流れてくる音声とディスプレイに示される表示を頼りに荒廃した街を警戒しながら駆ける。

<そこから西に100mほど行くとハンターがいる>

 真仁の言葉に2人は西に向かった。こちらがカメラを設置しているのと同様に、相手も当然そこかしこにカメラを仕掛けている。

「……」

 あれが敵のカメラか。戒は口の中でつぶやき翼を連れてレンズの前を横切った。


「!」

 ディスプレイを見ていた1人の男が身を乗り出す。そしてもう1人の男に何かを指示すると、指示された男が部屋から出て行った。

 しばらくすると別の男がその部屋に入ってくる。

「戒が現れただと?」

 腹の出っ張った40代後半と思われる男が低い声でディスプレイをのぞき込んだ。やや広めの部屋にいくつものノートパソコンが並べられ、それを常に見つめる男たち。

「やはり真仁に付いたようですね」

 カメラの望遠をアップにして戒をクローズアップした。

「! 翼も来ているのか」

 戒のそばにいる青年を見つけた男は少し声を高くした。その様子に少々、眉をひそめた部下と見られる男は気づかないふりをして続ける。

「どうしますか? 厄介な相手ですよ」

 その男、筒井が問いかける。

 牧場がまだ運営されていた頃、組織同士のいさかいはなかったが所属しているハンタードッグたちの情報はやりとりされていた。

 組織の体制とハンターとの相性もさることながら、気になるハンターと接触し引き抜きなども行われていた。

 その中で戒は多くの組織から一目置かれている存在だったのである。当然この組織-戸塚の組織-も戒を常にチェックしていた。

「戒は殺せ、翼は傷を付けずに捕まえるのだ」

「わかりました」

 そう言って出て行く男の背中に応え、再びディスプレイを見つめながら通信機に手をかけた。

 翼は戸塚の個人的な好みでチェックされていたに過ぎない。戒と共にハンタードッグを辞めたと聞き落胆していたが、再び巡り会ったこのチャンスを逃したくは無い。

 アメリカの企業が運営していた牧場に参加していた組織は数多くあったが、彼らもまた擁護派と強硬派に二分されていた。


 街中を駆けていた戒のヘッドセットに真仁から通信が入る。

<相手は気がついたと思う>

「! そうか。翼、戻るぞ」

「え? もう?」

 出てすぐに戻ると言った戒に首をかしげる。

「今回は挨拶だ」

「! ああ……」

 カメラを指さした戒に翼は納得した声を上げた。

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