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今日あたしは筆頭聖女を辞めました。  作者: そらのたまご


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やめろと言われたら辞めるでしょ

旦_(-ω- マア、ユックリシテイキナ


今代の筆頭聖女は、非常に怠慢だ!


「……………………ほへ?」


神殿の渡り廊下に響いた王太子エリオスの言葉に、あたしは思わず間抜けな声を出していた。

いやだってめっちゃ突然だったし。

そもそも何言ってんのかわかんない。


怠慢って、つまりなまけ者ってことでしょ?

いやいやサボったことなんてないし、今もめちゃくちゃ働いてましたけど。

サボりは他の聖女でしょーが。

たとえば今あんたの隣にいる序列二位とかって女のことだと思うよ。


お偉いお貴族さまのお家のお嬢さまで、あたしが来るまで筆頭候補だったとかで、初めて会ったときからすんごい睨まれてるんだよね。

いや知らんし。

あたしのが力が強かったってだけで奪ったわけじゃないし。

むしろ筆頭とかいらんし。

王太子の婚約者とかもっといらんし。

いつでもリボンも結んでくれてやるっての!


……と、思っていてもよい子のあたしは口にはしない。

さっきの間抜けな声はなかったことにして、おっとりと首を傾げた。


「ええと、それはどういう意味でございますか、エリオス殿下」


黙っていれば儚げ美少女と近所で評判だった顔を利用し、あたしは普段は控えめで優しい聖女さまの皮を被っている。

そっちのが周りの反応がいいからね。

あと無意味なケンカはしたくない。

ええ、内心と外面をわけるくらいの分別はありますとも。


ねーちゃんマジ外見サギだよなーとかほざいた弟は庭の木に吊るしたけど。

これは必要なしつけなので問題なし。


「自分で気付いてすらいないとはな。まったく、顔だけは多少見れるが中身が伴わないと哀れなことだ」


……自己紹介かな?


顔はいいけど傲慢で視野狭窄だと揶揄される王太子サマは、あたしを上から下まで無遠慮に眺めて鼻で笑った。

あん? オイコラ今どこ見て笑ったぶん殴るぞ。

オウジサマだろうが親だろうが同性だろうが、そういうセンシティブなところに触れると怖いんだぞ。


今にも崩れ落ちそうな聖女の仮面を気合で顔にはりつけ直して、あたしは困ったなーって演技を続ける。

ついでにチラチラ隣の聖女サマに視線を向けておく。

そっちの人は何の用ですかー。

序列二位の聖女サマことリディアはバカにしたように笑っていた。

あたしじゃなく自分がの隣に並んでいることに優越感を感じているとかかな?

えーやだー性格わるぅー。

うんざりするほど知ってるけど。


まあアレだ、あたしって王太子サマの婚約者なわけよ。

正確には王子さまから王太子に変わるとき、ええと立太子?の時に、歳が近い聖女の中で一番能力の高い人が、ほぼ強制的に婚約者になるわけだ。

てことで3歳差かつ筆頭聖女のあたしが選ばれた。


あと半年早く立太子しててほしかったよね!

そしたらリディアが婚約者に選ばれてみんなハッピー!で済んだのに。

そんなんだから空気読めないって言われるんだよね。

あ、空気うんぬんは性格の話だから立太子のタイミングとは別か。


いや一部で間の悪い男とも言われているから結局こいつのせいでいい気がしてきた。

責めるならあたしじゃなくて、そこの王太子サマだと思いまーす。

言っても伝わらんだろうけどさ。


「仕方がないから私自らが教えてやろう。貴様は筆頭聖女であるというのに、全く仕事をしていないそうではないか!」


超上から目線でエリオスが語り出したが、いやだからそれがわからんのだって。

あたしめちゃくちゃ働いてる。

仕事しないというか出来ない奴ばっかでイヤになるほど働きづめよ? 


「他の聖女たちが貴様の顔を見るのは昼のわずかな時間のみ」


うん、早朝から王都の結界維持作業についてるからね。

ほんとなら数人がかりで魔力をそそぐのに、誰も来ないからあたしが一人で時間かけてこなしてるんだよね。

それが昼までかかって、昼食だけ食べに行って、午後は別の業務やっててるだけ。

夕食は食堂の時間に間に合わないので、自室に運んでもらってる。

なんで、サボってる人たちとは顔あわせる暇はないかな。


「しかも外部の仕事に出ているわけでもないのに常に不在。もしや具合が悪いのかと自室に赴いても、そちらにも反応がないらしいな。誰にも知られないところで一体何をしているのやら!」


いやだから仕事してるんですぅー。

そこの女みたいに本当にサボってる人には会わんけど、真面目に働いてる聖女や神官や王宮の人らには会ってますぅーー。

証言した奴こそがサボり魔なんですぅーーー。


あーやだやだ。

こんな奴らばっかだから、あたしみたいなのが必要になるんだっての。


「ここまで言えば、察しの悪い貴様にもわかるだろう。──貴様に筆頭聖女の資格はない!本日をもって筆頭聖女の任を解き、婚約も解消する!」


え、マジで?

今すぐにでも誰かにあげたいくらい面倒だったから、解任も解消も大歓迎ですとも!

嘘つかれてるとかどうでもいいわー! むしろよくやった!


……いや待て、これコイツの独断じゃないよね?

普通に考えたら独断とかありえないんだけど、コイツなら普通にやらかしそうなんだよね……。

これだけ期待させといてぬか喜びだったらマジで許さん。

訓練場の的に縛ろう。


「殿下……突然そのようなことを仰られても、わたしでは判断できません。神官長様に確認させてくださいませ」


多分こっちの方が反応いいだろうなーと判断して、あえて非力で哀れな感じに声をかけてみる。

そしたら案の定、満足げにニヤニヤ笑いだすので逆に心配になった。


王太子サマの思考が読みやすすぎるんだけど、外交とか大丈夫?

そもそも出来る? 国滅ぼさない?


相手への哀れみでますます眉を下げるあたしに、二人はクスクス含み笑いを返してきた。

あれ、妙に自信満々だけど下準備した感じ?

それともなんか仕組んだ?


「ははっ! 貴様の頼みの綱である神官長は更迭された! 貴様を筆頭聖女に任命して利権を得ていたようだが、私欲にまみれた者が聖職のまとめ役などふさわしくないからな! 清貧を学びなおし高潔さを取り戻すべく、間もなく辺境へ移送される手筈だ!」

「仕方ありませんわよね。あのご老体ってば筆頭聖女様ばかり贔屓して、わたくしたち貴き血筋の者には小言ばかり。不当な扱いにみな辟易しておりましたもの。相応な処分ですわ」


勝ち誇ったように宣言するこの言葉に、思わず聖女の仮面が吹き飛んで真顔になった。

神官長様が更迭……辺境送り?


ごく一部の人以外の前では意地でも外さなかった、仮面の下の素のあたしの顔を初めて見て、エリオスたちはちょっと肩を跳ねさせた。

でもすぐに強いショックを受けたせいだと都合よく判断したらしく、またニヤニヤと笑い出す。 

あたしから後ろ盾を奪ったと思っているんだろう。

勝利を確信してるんだろう。


でもちょっと違うんだなー。

あたしと神官長様の間にあるのは”雇用契約”だもの。


『今の神殿は、貴族が金と権力で無理やりねじこんできた令嬢たちが序列の上位を席巻しておっての……ほとんど役に立たん聖女ばかりなのじゃよ』


初めて会った時の、神官長様の悲痛な声を今でも覚えている。


あたしは騙されて莫大な借金を背負った商会の平民の娘で。

向こうは神殿のお偉いさんかつ伯爵家のお貴族さまで。

なのに借金の返済の目途が付かなすぎて、こうなりゃ一発大当たり狙いの出稼ぎだ!とヤケを起こして求職所に飛び込んだあたしにも丁寧に接してくれた、とても優しい人だった。


神官長様はあたしの話を聞いて、聖女としての適性を見通して、内緒の話を持ちかけてきた。


──それが聖女となり、仕事に応じた金銭を支払うという雇用契約。


借金はひとまず神官長様が肩代わりしてくれて、あたしが聖女の仕事で稼いだお金で返済すること。

返済後にもらえる給与はあたしの自由にできること。

ちなみに聖女に与えられる本来の支給とは別口で、神官長様の資産から追加支給という──今のあたしにとっては夢のような話。


普通にあたしは訝しんだ。

旨い話には罠がある、と商会の借金のおかげで嫌ってほど実感してる。


逃げ腰のあたしに、神官長様は包み隠さず説明してくれた。

今の聖女が能力不足なこと、貴族と王家の横暴、とにかく早急に優秀な聖女を補充しないといけないが、寛容な心の持ち主でなくては潰されかねないこと。

なかなかにブラックな職場だね。


借金返済という喫緊の事情があって、商会で鍛えた対人能力を持ち、なおかつ寛容……というか図太い。

まさしくあたしが頼みの綱ってやつなのね。納得。


さらに仕事の内容や量に見合う金額を必ず支払うよう、魔法契約まで交わしてくれた。

魔法契約とは、契約内容に強制的に従わせる魔法のことだ。

お陰であたしは不足も過剰もなく、働けば働いただけお金として支払われるし、受け取ることができるようになった。

いやこの魔法契約、全職場全職種で適応されるべきだと思う。

めっちゃやる気に繋がるじゃん!


神官長様は借金を肩代わりすることで恩を着せる方法もあったのに、あたしに対等に向き合ってくれた。

だからあたしも神官長様のことは信頼している。


実際に聖女になったら、思ったよりあたしの能力がすごすぎて筆頭聖女になっちゃったのは想定外だけど。

追加で王太子の婚約者にまでなっちゃったのは遺憾の極みだわ。

さすがに能力不足を超えた無能集団の実態を見た後は、ソッコー神官長様に文句を言いに行った。

あの説明がマイルド表現とか最悪じゃん!と。


いや言いに行くでしょ。

追加報酬にも魔法契約にも改めて納得したわ。

お金が支払われることであたしは耐えることができた、と言っても過言ではない。

こちとら商売人だし平民だ。

生きるために必要なものだし重要なものだ。

聖女の務めは雇用労働と思えば続けられなくはなかった。


あ、でも婚約はマジでいらない。

百害あって一利なしって、こういうことなんだなって感じ。


無理やり婚約させられてから知ったんだけど、婚約した聖女は夫となる王家の者に魔力の二割を供給する決まりがあった。

婚約の時にも使われた魔法契約にそういう内容があったんだとか。

いや知らんし。(2回目)


なお供給される……いやいや強引に奪われる魔力は、魔法契約を通じて支援魔法に変換されて王家にそそがれるのだとか。

つまりあいつら常に、他の人の魔力で自分を強化してるんだよね。


その剣が冴えるように。

疲れが残らないように。

傷の治りが早いように。

病気にならないように。

肝心な場面で、わずかに運が王太子へ傾くように。


──毎日毎日昼夜問わず常にドーピング状態とか、アホかお前ら。


そう思ったのは仕方ないと思うの、うん。

あたし奪われてる側だしね。

それに全体の二割ってそれなりに大きいし、しんどい。


ずーっと腹八分目って感じ。

満足するまでお腹いっぱいになることがなくて、なんかちょっと物足りない気持ちになるような、そういう中途半端な感覚が常にあるんだよね。

地味にストレスなのよ……。


まぁそんなわけで、実はあたしが聖女として頑張っていたのはお金以外の理由がない。

強いて言えば神官長様への恩!

あのまま借金を返せず商会を潰して一家離散、借金のカタに売り飛ばされる!みたいな最悪ルートを回避できたのは神官長様のお陰だもの。


神殿で新しく育んだ縁?

いやーないかなー。

真面目に働いてる子たちとの交流があるけど、あくまで筆頭聖女としての関係だけだし。

私的な友好関係は一切ない。

まぁそんな暇なかっただけなんだけどね!


あたしだって神殿に来てすぐは色々頑張ったのだ。

マジで働かないお貴族サマ聖女たちに、さすがに危機感を覚えたし。

ダメだこいつら早く何とかしないと……! と、歩み寄ったり宥めたりおだてたり譲ってみたりした。

でも”平民風情が偉そうに”と見下してくるばかりで、改善される気配すらない。


そんな感じで何か月も経ち、あたしが聖女になって初めての誕生日のことだ。

神殿に届いた家族からの誕生日プレゼントを、踏みにじられた。


複雑に編まれた髪紐は、借金のせいで去年は何もできなかったから、と家族が一生懸命選んでくれたものだった。

手作りの焼き菓子は、まだ神官長様に返済中なのもあり、豪華さよりも気持ちと手間を込めて作られたものだった。

それを、目の前で、文字通りに踏みつけられた。


口先だけよりもさらに軽い口調の、『あぁら、ごめんなさぁい? 目に入らなかったわぁ』だの、『やだぁゴミを散らかさないでくれるぅ?』だのに、あたしは完全に見切りをつけた。


あいつらはあたしとは別の人種だった。

対等に話し合うことも、ましてや指導することもできない。

上から力づくでねじ伏せて服従させればワンチャンあるかもしれないけど、お嬢サマ達のメンタルで耐えられるかはわかんないし。

ビビッて壊れて泣きついて、そんで実家のお貴族サマが出張ってきたら大惨事間違いなし。


何であたしだけが譲歩して苦労して、あんな面倒なアホどもを治さなきゃならんのか、と一度思ったらもうダメだ。

親や大人がやれよ。

あたしのがあいつらより年下だっての。


ってことで、そこからは手出し深入りはやめて仕事に万進。

まー最低限の口出しは続けたよ。

わかっててなんもしないのも無責任かなーって気持ちくらいはあったから。

でもあいつらのことで責任を感じるのはやめた。

それは、あいつら自身のせいだ。


まぁそんなわけで、改めて言うけどあたしが聖女として頑張っていたのはお金のためだ。

そんで、そのお金を大幅に割り増ししてくれていたのは、神官長様だ。

そんでそんで、魔法契約には双方が王都大神殿に属している時に効果を発揮する、とされていて。

その神官長様は辺境に左遷されるので、数日以内には魔法契約は解除されるんじゃないかな。


……聖女続ける利点ないな。

あたしの損得勘定を鍛えられた脳がそう結論付けるまでは早かった。

残される真面目な聖女はかわいそうだけど、そこ以外に気になる部分がマジでないんだよね。


よし、聖女辞めよう!

筆頭解任されたし、婚約も解消されるし、神官長様もいなくなるし、さくっと出ていこーっと!

どうせなら王都からも出ていくとか……いや親も説得して、商会ごと国からも出ちゃうのもアリじゃない?

返済した後のお金は貯めてきたから資金は十分あるし。

うん、そうしよう!


ほんの数秒でこれまでのこととこれからのことを考え、あたしは再び聖女の仮面をかぶった。

ニヤニヤしてる二人に向かって、内心の野望を隠してしおらしく頭を下げてみせるくらい、朝飯前よ!


「……承知しました。殿下の仰る通りに、わたしの持つ権限はすべてお返しさせていただきます。つきましては婚約解消の手続きは、いつ頃どちらへ伺えばよろしいでしょうか」


神官長様の解任はうまく準備できたようだけど、婚約の方はちゃんと根回しできてるのか、ちょっと不安なんだけど。

なお筆頭解任の方は問題ない。

エリオスの言い分とは意味が違うけど、あたしが二年以上も筆頭聖女で居続けたのは、たしかに神官長様が裏で手を回していたからだもの。

他の聖女が筆頭に立つと仕事が回らないからね。


だから神官長様がいなくなったら、すぐ手を回されて席を追われるはず。

そこで筆頭としてだけじゃなく、聖女の籍そのものをはく奪されるよううまく誘導できればあたしの完全勝利。

出来なければ別口から、なるべく早く辞めれるように根回しするしかない。


しばらくは今までと別の意味で忙しいかなー?

立ち回りに気をつけなきゃね。


「ふふん、契約書にサインしていない内は間に合うなどと思っているようだが、残念だったな! 婚約解消の契約書はここにある! 貴様に暗躍する暇など与えない! さぁ今すぐサインしろ!」


えー! めずらしく手際がいいからちょっとびっくり。

理由に関しては完全に的外れだけど。

間に合うとか暗躍とかマジで意味不明だわ……手際含めて誰かの入れ知恵かな? 

半分くらいはリディアな気もするけど、彼女もそんなに根回しが得意なタイプではなかったし、何か他の思惑が動いてる……?


こーれはマジで早く逃げ出した方がいい感じかも。

王宮の陰謀とか巻き込まれたくなーい!

権力とか憧れの役職とか有名税とかは、欲しい人にお任せします!

──なのではい、バトンタッチ!


「リディアさま……あとをお願いいたします」


あたしはせかされるまま大人しく契約書にサインして、次を引き継ぐだろうリディアをじっと見つめた。

ほんとお願いだから、せめて国を出るまでは根性で耐えてね。

いっそエリオスに取られなくなった魔力でリディアをブーストするのもいいかもしれない。


「ええ、ええ、これからはわたくしが人々を導きますわ。貴女は精々ご自分の至らなさを実感なさるといいわ」


ぜひお願いしまーす!

至らなさを実感するかどうかはわからんけどね。

まーあんたらの矯正を諦めた時ですら至らなさとか感じなかったし、多分しないかな。

自分が感じないよう頑張れ!


「ついに観念したか。ふっ、顔は悪くないのだから、殊勝さを身に付ければ少しは受けがよくなるかもしれんぞ」


……あれ、もしかしてコイツ結構あたしの顔好きなの?

さっきもだけど、なんか遠回しに顔がいいって言われてるような。

わー気付きたくなかった。


リディアって華やかで派手な美人系で、丸っきりあたしと逆系統なんだけど、そんな感じで大丈夫?

そんなこと気にしても仕方ないし関わる気もないから、ぶっちゃけ二人の相性とかはどうでもいいけど、痴話げんかの原因になるのはイヤだ。

頼むから永久追放でヨロ。


「はい、お言葉心に刻ませていただきます。わたしはこれより、今後の方針を決めるため新しい神官長様のところへ伺ってまいります。御前失礼します」


ものすごく微妙な気分だけど言われた通り殊勝に返事をしたら、すんごい満足そうに頷いてて、聖女の仮面を落とさないようにするの大変だった。

うへぇ、ってうんざり声が口から漏れなかったのは奇跡かも。


深く頭を下げてから、そそくさと二人から離れるけど、本音は走って逃げたかった。

一刻も早く遠ざかりたい。

長く一緒にいると変な思考に汚染されそうで、マジ勘弁。

これからは遠ーくからお二人のこれからを見守っておくねー、聖女を辞めるまでの期間で、もし時間と気力があればね。


……それにしても、お腹すいた。

新しい神官長とやらのとこに行く前に、厨房によって余りもの分けてもらおう。

んで食べてる間に何からやるか考えてー、あ、まずは神官長様が辺境に向かう前に挨拶に行かなきゃ!

素直に会わせてくれないだろうから理由決めないとね。


これはやっぱ忙しくなるなー。

でもアホどもの尻ぬぐいじゃなく自分の楽しい未来ためだから、お金にならなくても苦じゃないかも。


うん、聖女辞めたら色々楽になるし今だけちょっと無理してもいっか。

支援魔法かけまくって、あたしなんかいらねー!て思ってもらうのがいいんじゃない?

あたしがいなくなった後は大変かもしれんが。

でも残ってもあたし働かないよ?

お金にもならないから頑張る気力もわかないし、さっき言われたように怠惰な聖女を目指すわ。

それならしばらくだけでも楽できるんだし、まーいいじゃんね。


よーし、やるぞー!

気合十分、次の戦いに向けてあたしは今日も歩き出すのだ。





ちなみに契約書まで準備しておきながら、神殿の渡り廊下で昼食に向かうあたしを呼び止めるあたり、王太子サマの空気の読めなさと間の悪さは筋金入りだな、と思った。まる。



え、契約書?

仕方ないから壁に押し付けてサインしたよ。

くっそ書きにくかった。

最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')

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