メインエピソード2 ウルトラマリン劇団の喜劇? 第1話
中央平原は、いま平和で過ごしやすい時代に入ったと言っていい。
ここ数年、大規模な戦争は行われず、天候不順による食料危機もない。
こうした平和な時代は得てして文化が発達するもの。
中央平原も例にもれず平民を中心にさまざまな娯楽の文化が生まれていった。
3強の一角、神聖ゴールド聖教国は貴族、平民を問わず音楽や絵画など芸術方面が盛んであった。
シルバー王国は土地が肥えておらず農業を主体とする平民の生活は厳しいので、文化の担い手は貴族中心であり、その文化は宮廷音楽が盛んであった。
そして魔法国家プラチナ帝国は魔法技術によるインフラ(水道や魔石による魔道具の整備)が帝国内にいきわたり、ほかの2国より生活しやすい。
それもあり平民であってもその生活水準が高く余裕のある暮らしができていた。
そのためプラチナ帝国では平民が文化の流行りを担っているのである。
最近特に目覚ましいのは、小説や演劇の分野。
小説も演劇も識字率(しきじりつ:国民のなかで文字を読める人の割合)が高くないと盛んにならない。
しかし、プラチナ帝国には貴族はもちろん平民にも読み書きを教える学校が存在しプラチナ帝国の共通語が教えられている。
そのため平民が中心となって小説をかいたり、演劇の脚本をつくるといった土壌が育っていた。
小説の分野ではとくに恋愛ジャンルが大人気で、いつの時代も男女間の恋愛というのは人々を惹きつける。
そしてこの手の話は男性より女性のほうがが需要も供給も担っていた。
恋愛ジャンルのなかでとくに人気が高いのは、「勇者が聖女と活躍して結ばれる話」や「高位の貴族令嬢にいじめられる平民の女性が身分をのりこえて王子様と結ばれる話」であった。
いつの世もシンデレラストーリーの人気は不滅なのである。
そしてその人気ジャンルのなかに最近割り込んできたジャンルがある。
それが「聖女と女剣士が活躍する話」である。
ここ1、2年ほどで急にこのジャンルの話が台頭してきたのだ。
とくに魔法学園出身者がこのジャンルの話を支持しており、熱狂的な人気を誇っていると言っていい。
そして小説の世界で人気になれば、演劇の脚本家たちもこのジャンルに興味を持ち始めるようになった。
この「聖女と女剣士が活躍する話」に最初に目を付けたある劇団がこれを演目にした舞台を行うようになっていったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は今日も商業ギルドへいき、依頼の紹介をしてもらう。
今日の依頼は最近人気が急上昇してきたある劇団からのようだ。
この劇団は、学園を卒業したての若手が中心となって立ち上げた本当に若い劇団なのだが、その人気は大変なものらしい。
僕もあちこちでウワサを聞き一度は見に行きたいと思っていたが、チケットもすぐに完売するので、なかなか観に行けないでいたのだ。
この劇団の名を「ウルトラマリン劇団」という。
僕は、ガーネットとノワールを付き添いとしてついてきてもらうことにして、さっそくウルトラマリン劇団に足を運んぶことにした。
ウルトラマリン劇団の事務所の前で、側にいるガーネットが声をかける。
「ここですね。ウルトラマリン劇団の事務所は」
「そうみたいだね。ここの劇団はとても人気だからチケットが簡単にとれないんだ。そこの事務所だと思うと関係ないのに緊張するよ」
僕はおそるおそる玄関をあける。
「お邪魔します。こんにちは。あの、ギルドの依頼できた商業人なんですけど・・」
そう言いながら中へ入るととてもきれいな女性が出迎えてくれた。
「あら、待ってたわよ。「ギルド屋」さん。ふふふ。あなた、魔法学園で有名だった、あの「ギルド屋」さん、よね?」
びっくりしている僕に、
「商業ギルドにはあなたが来てもらえるようにお願いをしていたけれど、本当に来てくれて嬉しいわ」
僕は以前、プラチナ帝国の魔法学園に在籍していたことがあるが、そのときのあだなが「ギルド屋」であった。
このあだなを知っているということはこの人は魔法学園にいたということだ。
「うふふ。警戒しないで。私はあのとき、魔法学園の平民棟にいて今年卒業したばかりなのよ」
「もともと商会の従業員だったんだけど、商会の後押しでこの劇団の支配人として任せてもらえることになったの」
どうやら、この女性が今回の依頼人である支配人のようだ。
「だから、いま少し困ったことが起きているのでそれを調査してもらいたくて商業ギルドに依頼したのよ」
僕は、
「なるほど。そういうことでしたか。それでは依頼の中身を聞かせてください」
依頼人である女支配人は沈痛な面持ちで、
「実は、この劇団に対して嫌がらせとしか思えないことが起きているの。それを調査し、できれば原因をつきとめてほしいの」
「具体的には、これから舞台が始まるという直前になって役者の一人が急に声が出なくなったり、腹の調子を崩してしまって演じれなくなったということがあるわ」
「これだけなら、こちらが用意していた飲食物が原因なのかと思って、とくに気を付けていたんだけど、それでも週に1回は起こるのよ」
「どう考えても不自然なの。誰かが毒を盛っているとしか考えられないわ」
「でも、こんな程度のことなら他の劇団を訴えるどころか自分たちの劇団の管理の不備を笑われるだけよ」
「だから、飲食物を中心に毒の経路、または声が出なくなる原因を突き止めてほしいの。これが依頼の内容よ」
女支配人はじっと僕の目を見る。
「なるほど。・・・・・・了解しました。たしかに変ですね。わかりました。依頼を受けます」
「早速調査をしてみます。ガーネット、ノワール、よろしく頼むよ」
僕は後方に控えている2人に声をかけた。
ガーネットもノワールも
「了解しました。早速ですが、気づいた点をお話しますね」
そう言って僕に話しかけようとした途端、
「キャーーーーーーーーー!!!も、もしかして麗しの美剣士さまに純情可憐な聖乙女さまですか?」
女支配人はけたたましい声をあげてワナワナと震えながら僕の後ろにいる2人を見る。
この2人、魔法学園では高嶺の花の存在で、生徒の間では、あだ名をつけて崇めていたらしい。
ウワサではファンクラブまであったとか。
ガーネットもノワールもハハハと乾いた笑いをするばかりであった。




