ショートエピソード 邸宅のお客様1
注意 前々作を読んでおいたほうが流れが分かります
ここは中央平原3強の一角である魔法国家プラチナ帝国。
そして帝都プラチナムは広大な面積を誇り、100万もの人口を抱えている。
僕はそのなかの貴族区にある邸宅に住んでいる。
でも貴族区に住んではいるが僕自身は貴族ではない。
その邸宅は、帝都の貴族区でもあまり目立たない場所にあり、貴族が住むには少し小さめであるが中は十分広い。
その邸宅には5人のメイドとガーネット、ノワールが住んでいる。
5人のメイドは僕の家族といってもいいほどだ。
特にエクレアは母親のような存在だと思っている。
他の4人はいわば姉・・・・かな。
とにかく優しくて僕をでろでろに甘やかしてくるのだ。
あと、ガーネットとノワールはプラチナ帝国の魔法学園の教員を勤めている。
そのうえに、ガーネットはAランク冒険者の資格があり、とても頼もしい。
ノワールも聖女の称号を持っており回復魔法はお手のもので心強い存在だ。
そして、僕の家族たちは国の重鎮から面会を求められるほど有名らしい。
とくに中央平原3強のシルバー王国、プラチナ帝国、神聖ゴールド聖教国の代表者が会って話がしたいとわざわざ邸宅まで足を運ぶほど。
実は僕の邸宅では、毎朝、門の前に人が並ぶ。
門の前にいる人たちは5人のメイドの誰かを目当てに並んでいるのだ。
しかし、邸宅の主人は一応、僕だ。
だから主人である僕をさしおいてメイドと話をすることはできないので、まず応接間では僕が面会することになる。
もちろん客は、一ミリたりとも僕に用がない。
なので、応接間にとおされた僕と客は、僕のほうから、
「今、忙しいので、こちらのメイドと話でもしてください」
と言って席を立たない限り目当てのメイドと面談ができないシステムになっている!!!
さらに言うと、建前上は僕の客なので、僕が働きに出かける時間までしか並べないことになっている!!
主人である僕がでかけたら理屈の上では主人が家からいなくなるので、列に並んでいる人たちは解散しないといけない。
なので毎朝、僕が門から出ると露骨にガッカリされるのだ。
そのガッカリな表情に僕はいつも心が抉られる気持ちだ。
この毎朝のやり取りは正直メンドイ。
なので一度エクレアに、お互い大変だから遠慮してもらってはどうかと言ったら、エクレアは
「そうですわよね。申し訳ございませんご主人様。親愛なるご主人様がいやがることを押し付けてしまって」
「いえ、ご主人様が私に言う前に気づくべきでございました。どうか気の利かない愚かなわたくしに罰をお与えくださいませ」
といって鞭と首輪を頬を赤らめながら上目遣いで渡してくる。
僕はそれを丁寧に受け取り、そっと横において何食わぬ顔で無視することにしている。
このあと、どこから聞いたのか知らないけど、全然知らない人から、この面会のシステムを無くされてはかなわないと僕に平身低頭して懇願して来る人が増えた。
どう見ても身分の高そうな人が平民の年若い僕に平身低頭してくる。
その懇願する様子を見るのもいやなので、継続することにしている。
はぁ。めんどくさい。
今回のお客はプラチナ帝国の皇帝陛下らしい。
え、皇帝陛下?!!
皇帝陛下はイオニアと面会したいと言って指名してきた。
・・・・・ていうか皇帝陛下ともあろうお方が貴族区といえこんなところに来ていいのかな。
あ、護衛はいるよ。魔法騎士団が数十人ついてきている。
ところが、
「よい、ここでは護衛はいらぬ。みな、くれぐれも失礼のないように、この邸宅からでて外に控えておれ」
そう皇帝陛下は魔法騎士団に命令した。
魔法騎士団はそれに難色を示したが、皇帝陛下は重ねて厳命し、仕方なく魔法騎士団はそれに従い応接間から退出して外で待機した。
皇帝陛下と僕が応接間に向かい合って座る。
しかし僕からも皇帝陛下からも何も話すことは無い。
「・・・・・あ、僕、席を外すので、こちらのイオニアと話をして、おいてください」
そう言って僕はそそくさと応接間を出た。
「はあ、緊張した。プラチナ帝国の皇帝陛下がイオニアに何の用なんだろ」
僕は、応接間の外でホッとひと息つく。
扉の向こうから皇帝陛下の声が聞こえてくる。
「すんませんでしたーーーーーーーー!!!!!どうかお許しくださいーーーーーーーーー!!!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
プラチナ帝国を建国から500年支えてきた大魔導士イオニーアもといイオニアは、プラチナ帝国皇帝陛下の心の底からの叫ぶような謝罪を冷めた目で聞いていた。
イオニアは数年前に起きたある事件でプラチナ帝国を追放されている。
表向きは。
だが、その追放を撤回するので、また元に戻って以前のようにプラチナ帝国を支えてほしいと言う要望を皇帝は出したのだ。
しかしイオニアは冷たい声で一言、
「お断りします」
と言うのみ。
皇帝ローシェンナ・プラチアーナはやっぱりという表情でその返事を聞いた。
そもそも皇帝ローシェンナ・プラチアーナは子供のころからイオニアから厳しい教育を受けており、イオニアはいわば教育係でもあったのだ。
なのでその名残からイオニアと対面すると幼少のころの恐怖が蘇り震えて何も言えなくなってしまうほどなのだ。
その様子を知ってか知らずか、イオニアは冷たい声で、
「わたしには誇らしきご主人様にお仕えすることがすべてです。決してあなた方から追放されたことに怒りを覚えているわけではありません」
「それよりも誇らしきご主人様に対しての無礼千万な行為に対して怒っています」
「かつてあなたの先祖であるベルフラワー・プラチアーナに力を貸しプラチアーナ男爵領の繁栄に力を貸したのは、前世のご主人様のたっての願いであったからこそ」
「そのご主人様をないがしろにするのであればこのプラチナ帝国は5秒で灰になると思いなさい!!!!」
僕は、かつてプラチナ帝国の危機を救った「エボニー砦の奇跡」を実現したにもかかわらず、その件で褒められるどころか叱責をうけアプリコット公爵家をクビになるという目にあっていた。
それだけではなく、不祥事を起こしたエメラルド子爵家の生き残りと疑われて魔法学園を退学処分になっている。
イオニアは、僕がプラチナ帝国から受けたこれらの理不尽な仕打ちに対して怒りを示してくれたのだ。
皇帝ローシェンナ・プラチアーナはそれを聞くや再び土下座をしてお詫びの言葉を発する。
「どうかお許しをーーーーーーーーー!!!!!!」
「その件に関してはわしも大変申し訳なく感じています」
「お詫びとして我がプラチナ帝国が誇る魔法騎士団の一番の使い手をイオニア様とイオニア様の、その、大切なかた、とやらに献上いたします。どうかお好きなように使ってください」
しかしイオニアはそれを断った。
「魔法騎士団は皇族を守る大切な盾。そのような者たちをもらうわけにはいかないわ」
「それに護衛はわたしたちで十分よ。そう思わないかしら?」
それを聞いた皇帝ローシェンナ・プラチアーナは
「へへーっ、まったくもってその通りでございますーーーー」
「まあいいわ。あなたが悪いと思っていることが分かったから。今後身分の低いものが高いものに身分を笠に着て手柄を奪うような真似はさせないようにしなさい」
「いいわね」
最後に皇帝ローシェンナ・プラチアーナに念を押して面会は終わった。
扉の外で僕は、皇帝陛下と会ってしまった。
不敬になりかねないんだろうけど自分の家だし皇帝陛下も、
「身分などここでは関係ないよ」
と疲れた顔で言ってくれたので気にしなくていいんだろう。
皇帝陛下は、以前に僕が立てた功績について僕さえよければ爵位を与える、つまりプラチナ帝国の貴族にしてもよいと言う話をしてくれた。
でも、僕は貴族に対して不信感がある。
そんな僕が貴族になるということは自分が許せない。
だから不敬だけども皇帝陛下の申し出を断った。
皇帝陛下はとても残念そうな表情で「そうか」とつぶやいて帰っていった。




