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第4話

僕は調査対象のケビンをようやく見つけることができた。


どうしても彼の足取りが掴めず1週間もかかってしまった。


何と彼は左翼の軍にはおらず本軍のなかにいたのだ。


本軍には兵士が10000もいるので見つけるのに思った以上に時間がかかった。


早速ケビンの考えを調べてみよう。


暗くなってきたら兵士は戦場から引き揚げてそれぞれのテントで過ごす。


そのとき、兵士たちは酒盛りをすることが多いのだ。


僕はケビンが所属する隊の近くでケビンを見張っており、ケビンが酒盛りをするタイミングでケビンに近づき、酒盛りをするケビンの話をこっそり聞いた。


結論から言うとものすごいろくでなしで女の敵だった。


ケビンは戦争では逃げ惑うくせに、酒が入ると調子のいいことばかり言うらしい。


まわりは面白がっているが、ケビンは女の話になると「俺には何人も女がいる」だとか「金は女に貢がせるのが当たり前」だとかひどい話ばかりしている。


さらには、「とくに商会の女は俺専用でなんでも言うこと聞く」と聞くに堪えないようなことまで言うのだ。


僕はそれらの発言すべてを記録用魔道具に記録した。


ここまでの発言を記録すれば調査は十分だろう。


これで調査は終了だ。


やっと調査の依頼が終えられそうに思いホッとした。


依頼を終えたのでご飯を食べて帰ろうと思い、近くの酒盛りの場に入りごはんを食べる。


ご飯を食べていると聞きたくなくてもいろいろなウワサ話が聞こえてくる。


そのなかにとても驚くような話があった。


それは魔道具についてだった。


どうやら、この世界には魔神具と呼ばれるほどの神のごとき力をもつ魔道具が存在するらしい。


魔神具。


その名前ははじめて聞いた。


しかしそれほどの魔道具が存在するなら保有するのは王族クラスか、それに近い地位を持っている者だろう。


まあ僕なんかがお目にかかることは一生ないとは思うけど話のネタとしては面白い。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


右翼軍5000の将軍、マラカイト・ネモフィラ。


マラカイト・ネモフィラはこの軍を率いるアカエール将軍の副将である。


そしてネモフィラ伯爵家の当主でもあり、非常にプライドが高い。


そんな彼が右翼軍を指揮して、目の前のコパー都市国家軍の一部を相手にしていたが敵は手強く軍を破るには至っていなかった。


そんな彼に副官が左翼軍のウワサを聞いて雑談を振った。


「マラカイト将軍、知ってますか?また左翼軍の500人隊が敵を撃破したそうですよ。いや、もう1000人隊だったかな?」


「すごいですね。そこの隊長はわが王国の者でしょうか。それにその武功を認められて今度左翼全体の将軍に昇格するらしいですよ」


副官は笑いながらな話をしていたがそれを聞いたマラカイト将軍は突然激怒する。


「なんじゃとーーー!な、な、その話は本当か?!」


「名も知れぬ小僧がすこしばかりの武功をたてに左翼の将軍に任じられるとは!!」


「ゆ、許せん!許せん許せん許せん!!」


「ふぅーーーー。ふぅーーーー」


副官はマラカイト将軍の興奮した様子を見て、余計な話をするのではなかったと後悔したがもう遅い。


興奮したマラカイト将軍を止めることは誰にもできなかった。


「こうしてはおれん。そんな下賤の者が左翼軍5000の将軍と言う身分になったのならどんな失敗を犯すかわからん」


「5000もの軍がおかしな行動をとれば全体に響き、わが軍が敗北するやもしれん。はやく、左翼の本陣に向かい、その小僧を追い出してくれるわ!!!」


マラカイト将軍は発狂したように左翼の本陣に向かってしまった。


副官はこの事態にあわてたがマラカイト将軍を止められるのは本軍にいるアカエール将軍しかいないと考え、そちらへ向かうことにした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕はいま、10000の兵が待機している本軍の中をうろついている。


ただうろついているだけでも兵士の大声が聞こえてくるので、情報収集にはもってこいなのだ。


そのなかでは、あいかわらず左翼軍5000は僕の名前で大活躍しているらしい。


夜暗くなった本軍を歩いているといたるところで酒盛りをする兵士たちに目がいく。


目につく兵士すべてが左翼軍の活躍を話題にしているのだ。


ウワサでは左翼軍の前線を「風神」と名乗る者が率いて次々敵を撃破しているらしい。


「風神」?


誰だろう?知らないな。


もしかしたらシェラの知り合いかもしれない。


だけど、困った。


もうケビンの調査は終わったからここから抜け出して帰りたいんだけどなあ。


一応、僕が左翼の将軍になっているから勝手に抜けると怒られるかもしれない。


どうしよう。


僕はとぼとぼと左翼軍の本陣のテントまで戻ってきたが、頭の中はどうやって穏便にこの軍から抜け出ようかそれでいっぱいだった。


テント内で出迎えてくれたのはシェラだった。


シェラは僕を見ると微笑んで、


「麗しきご主人様、おかえりなさいませ。お疲れではございませんでしたか。すぐさま夕食のご用意をさせます。さあさあ、こちらにお座りくださいませ」


そう言って将軍席に僕を座らせようとする。


そのとき、テントの外からけたたましい怒鳴り声とともに一人の将軍らしき人物が入ってきた。


「ここが左翼軍の本陣テントか?わしの名はマラカイト・ネモフィラ。シルバー王国軍第四将にして、この軍の副将をつとめているものだ!!!」


と自分の肩書のところはゆっくりと聞こえるように大きい声で名乗ってきた。


僕はおずおずと


「あ、はい。初めまして僕がこの左翼軍をつとめる・・・・」


と言うが否や、マラカイト将軍は


「なあっ。こんんんんな小僧がこの左翼軍の将軍だなんて!!!こんなバカな話があるか!!認めん。わしは認めんぞ!」


マラカイト将軍は乱暴な仕草で罷免届をつきだし、


「これに貴族であるわしの印が押してある。これで貴様は左翼軍の将軍ではなくなった」


形式上は総大将の許可が必要なはずだが、マラカイト・ネモフィラ将軍のネモフィラ家の家紋が刻印されている以上、誰も逆らえないだろう。


「わかったら、さっさとこの陣から消えろ!!でないとわしがお前を斬るぞ!!」


そう言って目の前の将軍は罷免届を机に乱暴に置き、剣に手をかけようとする。


あまりにも感情的な物言いと理不尽さに僕は唖然としてしまった。


となりにいるシェラは殺気をはなち、僕に、


「このクズを排除してよろしいでしょうか?」


と聞いてくる。


しかし、ちょっと待て。


言い方はともかく、僕はちょうどこの陣をどうやって抜けようか悩んでいたところだ。


ならばこの話は僕にとって渡りに船じゃないか。


そう思った僕は、


「承知しました。いますぐこの陣を抜けようと思います。ご迷惑をおかけしました」


僕はマラカイト将軍にペコリと頭をさげた。


シェラは僕が軍を抜けると宣言するや否や、すぐさま荷物を整理し僕に従って軍を離れてくれた。


こうして僕は意図せず穏便に軍を抜けることができた。


僕はシェラに


「ごめんよシェラ。勝手に決めてしまって。せっかく僕のために手を尽くしてくれていたというのに」


シェラは


「いいえ。私の望みはご主人様の御命令に従うこと。ご主人様が決めたことに不都合があろうはずもございませんわ」


とにこやかな表情だ。


「調査が終わったのでございましょう。ならばあとは軍を抜ける必要があったと推測させていただきました」


「あのマラカイトという男の物言いには腹が立ちますが、ご主人様にとって都合がよかったと心得ております」


「ご主人様、私のことなど気になさらないでくださいませ」


ありがとう、シェラ。


本当にぼくには過ぎた従者でうれしいよ。


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