第3話
シルバー王国軍20000のうち、本軍10000はシルバー王国第二将のアカエール将軍が総大将を務めていた。
第ニ将のアカエール将軍は、シルバー王国を代表する将軍だ。
歳は若いが戦歴は豊富である。
シルバー王国がこの戦争に対して本気の証拠だろう。
アカエール将軍は本軍以外に、左翼と右翼にそれぞれ5000の軍を置いている。
左右の両翼を主体に戦争を進めさせ、本陣のテントで戦況の報告を聞いていた。
しかし、ここ数日、左翼軍に所属している500人隊が、500人隊以上の武功をあげているという報告を聞いており、そのことに違和感を覚えていた。
「報告でございます。また、左翼の例の500人隊が前線の敵を撃破しました」
また、例の500人隊の報告だ。
そう思いながら俺は報告を聞いていた。
この500人隊のおかげで左翼の軍自体が敵の前線を追い上げている形をとっている。
だがまあ、敵を倒す報告があがってくることは良い。
しかし、俺が違和感を感じるのはほかにもあるのだ。
この500人隊が撃破する敵は、俺が描いている戦略の形を推し進めるような勝ち方をしている。
すなわち、戦争で最も大事な補給路の確保がしやすい形で進められているのだ。
まるで前線から総大将である俺の作戦を見抜き、後押しするような勝ち方をこの500人隊は実行しているのだ。
俺は思った。
これは本当に偶然なのか。
もし偶然でないとするならばこんな芸当をできるのは「あの方」しかいない。
そう考えた俺はすぐさま、近くにいた側近に指示をだした。
「いますぐ、その500人隊を調べてもらいたい。その500人隊の隊長は・・・・・と言う名前かどうか」
すぐさま、側近によって調査がなされ、俺に報告がきた。
例の500人隊の隊長は、やはり俺が思っていた通りの者で、3日ほど前にふらりとこの陣に現れ戦争に参加したいと申し出があったという。
最初、一兵卒として採用しようとしたが、従者の巧みな提案と話術に気がついたら500人隊を任せることになったとか。
やっぱりな。
あいつが500人隊の隊長ならちかくに「あの方」がいる。
いや、その従者というのが「あの方」かもしれない。
「あの方」
我がシルバー王国建国以来の大忠臣であり、シルバー王国を支えてきたわれらが守護神、大将軍シェーラ様。
実は俺は、商業ギルドで依頼をうけているあの平民と旧知の仲であり、その従者に自分が敬愛する大将軍シェーラこと、シェラがいることを知っている。
大将軍シェーラ様はなぜか、あの平民に仕えており、絶対的なまでの忠誠を誓っているようなのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕のもとに、本陣から伝令があり、500から1000人隊に昇格するとい辞令が届いた。
うお、また人数が増えた。
1000人隊となるとさらに勝手が違うぞ。
そう僕が冷や汗をかいていると、シェラが目を輝かせて「すべて私にお任せを」と言う。
「ご主人様はゆっくりしていて下さいませ。このような雑事はすべてこのシェラが引き受けます」
「見ててくださいませ。この私が必ずやご主人様を押しも押されぬ立派な将軍として認められるような功績を立てておきますので」
とシェラはさらに瞳を輝かせて宣言する。
いや、僕は将軍になりたいなんて思ってないよ。
でもまあ、僕も依頼の調査があるので助かるか。
なのでシェラに隊のことをお願いして僕はテントを後にした。
シェラは調査に向かう僕を背中に眺め丁寧に一礼をしながら見送った。
僕が見えなくなったことを確認したシェラは誰もいないテントの内側に向かって
「さあ、そろそろあなたの出番よ。私とご主人様のために働いてもらうときがきたわ」
すると何もなかったはずの空間から一人のエルフの女性の姿が現れた。
シェラはこのエルフの女性に声をかけたのだ。
そのエルフは、すすっと前に出てシェラにひざまずく。
「ははぁっ!!この時が来るのを首を長くして待っておりました」
「やっとシェーラさまのお役に立つ日が来たかと思うと嬉しくてうれしくて興奮のあまり身が震える思いです!」
ひざまずきながら歓喜の声をあげるエルフは、シェラの信奉者でありシェラを恋い慕う気持ちを長年持ち続けてきた。
エルフは数百年前にシェラと戦場で出会い、戦った者同士なのだ。
その後勝負に負けて配下になったのだが、シェラの素顔をみてすっかりその魔性の魅力に魅了されてしまい、いまでは魂の底から服従しきっている。
いまやこのエルフにとってはシェラの命令に従うこと。
シェラのために動くこと。
それだけが生きがいであり、至福の悦びを感じるようになってしまったのだ。
シェラは目を細めながら
「嬉しいことを言ってくれるわね」
「しかし。あくまで私はご主人様の所有物。ということは私の付属品であるあなたもご主人様の所有物よ。ゆめゆめ忘れることのないようにね」
そう言って目の前のエルフにくぎを刺す。
その言葉にも歓喜の表情を浮かべながら、
「ははあ!!そのお言葉、肝に銘じますうううう!!」
この者の名はパロットという。
聖属性と風属性の魔法を操り、エルフには珍しく弓だけでなく鞭をあつかうという近距離も遠距離もこなす凄腕のAランク冒険者なのだ。
通称、「風神」のパロットとよばれ冒険者から畏怖されている。
パロットはエルフ族なので人族より寿命が長く、冒険者としても人族の一生より長い期間を活動してきたのでその名前が知れわたっているのだ。
シェラはパロットに1000人隊を直接指揮をするという表の面を担当させ、自分は事務処理や裏方の情報収集など裏の面を担当する。
シェラと風神のパロットの2人が表と裏から1000人隊を指揮し、その功績をご主人様に捧げようと計画していた。
シェラが主導する1000人隊は誰が呼び始めたのか定かではないが「風の隊」と呼ばれるようになった。
おそらく表で指揮する風神のパロットのあやつる風属性の凄まじさからきているのだろう。
「風の隊」は左翼軍のなかでは主力の隊として位置づけられ激戦区を担当するようになったが問題なく敵を撃破し続け、敵側からは名を聞くだけで逃げ惑うほどのその名前が知れ渡ってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アカエール将軍は頃合いとみて、「風の隊」の隊長を左翼軍全体の将軍に格上げし、副将に任命した。
これで「風の隊」は名実ともに左翼軍5000の中心となった。
しかし以前と変わらず前面に出て軍を統率しているのはAランク冒険者の「風神」のパロット。
そして裏方にまわり左翼軍本陣のテントで戦略をたて指示をだし、左翼軍内の細やかな兵站を担当しているのはシェラ。
この2人の活躍で戦場全体の戦況がおおきくシルバー王国軍に傾いていったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルバー王国軍が戦っている相手はコパー都市国家という国であった。
コパー都市国家はシルバー王国の傘下にいた国である。
ところが、コパー都市国家は政情不安定な国で国王の力がよわく、臣下の力が強い国であった。
そして臣下が反乱をおこし、国王とその首都を脅かそうとしたのでシルバー王国がそれを止めるために軍を出したのである。
この戦いはそういった経緯から始まった。
コパー都市国家軍は30000、シルバー王国軍20000である。
数の上では負けているが、総大将をつとめるアカエール将軍は百戦錬磨を誇る将軍であり、充分に勝つ戦略をたててから戦場に臨んでいる。
それに加えて「風の隊」が大活躍をしたことで左翼軍5000は左翼からコパー都市国家軍全体をおびやかすまでの存在になったのである。




