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ショートエピソード       たどり着けない冒険者

今日も今日とて商業ギルドへ依頼をもらいにテクテク歩く僕。


すると、商業ギルドの向こう隣にある冒険者ギルドがなにやら騒がしい。


まあ、冒険者ギルドはいつもにぎやかでさわがしいけどなあと思いながら冒険者ギルドのほうへ目を向けた。


すると、ギルド前に人だかりができている。


あの人だかりから察するにどうやら凄腕の冒険者がギルドへやってきたみたい。


それで、平民たちも物見高く見に来ているようだ。


なんせ凄腕の冒険者と言う存在は平民から見ても憧れの存在だ。


冒険者の出身はほとんど平民だから貴族ほど敷居も高くないということも理由のひとつだろう。


だから有名な冒険者が近くのギルドにくるとみんなはその冒険者を一目見ようと集まることが多い。


僕も例にもれず好奇心で冒険者ギルドへ立ち寄る。


どんな冒険者がきているのか楽しみだ。


人だかりのなか、近くの男性に、


「この集まりはどうしたんですか?有名な冒険者が来たとか?」


と聞いてみると、親切にも教えてくれた。


どうやらAランク冒険者がギルドに来ているらしい。


Aランクほどの高ランク冒険者は存在自体が珍しい。


Sランク冒険者はこの中央平原では1人しかいないしAランク冒険者も数人しかいないと聞いている。


特に、500年前に冒険者ギルドが創設されたときから在籍しているという伝説のAランク冒険者、「赤髪の騎士」と「黒の治癒士」は知らない人はいないというぐらい有名だ。


高ランク冒険者の活躍はギルド発行の「月刊アドベンチャー」でしか見ることができない。


僕も「月刊アドベンチャー」の購読者の一人だから、すごく興味があるのだ。


だから、


「へぇ。僕も見に行ってみようかな。だけど、早く依頼をもらいにいかないとギルドの人に怒られちゃうしなあ」


僕は少し悩んだが結局見に行くのは止めにしておいた。


Aランク冒険者もじろじろ見られるのは嫌だろうし、ギルドの人に怒られるのも嫌だし。


僕は後ろ髪を引かれる思いで商業ギルドへ向かった。


夕方。


僕はギルドの依頼を終えて、邸宅へ帰るところ。


その途中で銀髪で冒険者風の服装をしたエルフ族の女性が道路の真ん中に立っているのを見かけた。


「あれ、この人、もしかして」


僕は一目でこの銀髪で冒険者風の服装をしたエルフ族の女性がAランク冒険者だとわかった。


なぜならこの人の纏っている空気が独特だから。


あと、帝都プラチナムで見たことがないという理由もある。


たしかAランク冒険者のなかにエルフ族の人がいたと思う。


だからこの人が今朝冒険者ギルドにいたAランク冒険者で間違いないだろう。


そんな雲の上の人がこんなところで何をしているんだろうと疑問に思ってじっと見つめていると、その視線に気づいたのか、エルフ族の女性が振り返って僕に、


「そこの少年。少し道を尋ねたいのだがいいだろうか」


と尋ねてきたのだ。


わあ、美人。


エルフ族の特徴でもある長い耳がピンと立っている。


僕はおそるおそる返事をした。


「あ、はい。僕のことですか?一体、何の御用でしょうか」


「うむ。ここらへんで、このプラチナ帝国、いや、この中央平原で最も高貴とされるお方がお住まいのはずなのだが、少年はそういった存在を知っているだろうか?」


なんだそりゃ?中央平原で最も高貴??


プラチナ帝国での話なら皇帝陛下のことを指すと思うけど。


でも皇帝陛下はこんなところにはいない。皇帝宮に住んでいる。


ぼくが、わからないですと答えようとしたとき、相手の冒険者はそれを察してか、


「あ、いや、すまない。変な質問をしてしまった。忘れてくれてかまわない」


「また、探すとするか。少年も気を付けて帰りなさい」


そういって、帝都の中心部のほうへ歩いて行った。


僕はその後ろ姿を見ながら、やっぱりAランクは後ろ姿にも貫禄が感じられるなと一人で感心していた。


しかし、最も高貴か。一体誰のことなんだろう。


僕は、そう考えながら帰宅した。



翌日ギルドへ行く途中、再び昨日のエルフ族の冒険者に出会った。


そのエルフ族の冒険者は僕を見つけると声をかけてきた。


「やあ少年。昨日は変な質問をしてすまなかったね。ところで少年はなにをしているんだい?」


「あ、こんにちは。昨日はお役に立てなくてすみませんでした。僕は商業人をやっていまして、これからギルドへ行って依頼を受けるところなんですよ」


「そうだったのかい。それは呼び止めて悪かったね」


「ああ、自己紹介がまだだった。わたしはパロットという。こう見えてAランクの冒険者なんだよ」


ああ、やっぱり。


それにパロットという名前も聞いたことがある。


たしか「月刊アドベンチャー」の袋とじについていた高ランク冒険者一覧表にのっていたと思う。


エルフ族の女性だったかな。


「ふふ、その顔はわたしの名前を聞いたことがあると言う顔だね。わたしも随分有名になったものだ」


「こうみえて冒険者稼業を300年ほど続けている」


さすがエルフ族、300年以上の年だというのに、全然そう見えない。


ぱっと見は20歳にも満たない若々しさだ。


エルフ族は長命と聞くので、300年は大した年数ではないのだろう。


「実は、ある方がこの付近に住んでいるらしくてその場所を探しているのだよ」


「その方は、わたしのすべてをささげてもよいと思える方でね。かれこれ、300年以上前なんだよ。その方と会ったのは」


「こんな気持ちにさせてくれた人物はエルフ族にもいなかったよ」


「そんな私の敬愛する方はこの世のものとは思えぬほど美しさなのだ。一目みて息が止まるかと思うほどだ」


「わたしなんかは、そのかたの顔を見るたび息をすることを忘れそうになるよ。ははっ」


「もちろん、容姿だけでなく、その能力もすさまじい。単純な強さは龍族にも伝説の邪神にもひけをとらないだろうね」


Aランク冒険者パロットさんはうっとりした表情で熱弁をふるう。


「あの方の使徒はむりでもせめて弟子にしてもらいたいと思い、屋敷を訪れようと思ったのだが道に迷ってしまってね」


「わたしは魔力跡がみえるから、あの方の膨大な魔力の跡をたどれば簡単に見つけられると思って来たのだが、うまく隠しているようだ。私の認識が甘かった」


「あの方に喜んでもらえるならどんなことでもしてみせる。冒険者としてはもちろん。お金もすべて。ううん。この身体を好きにしてもらってもいい」


Aランク冒険者パロットさんは、ひたすら僕を相手に「あの方」の話をしている。


「その方の周りは空気から違っていてね。私はエルフ族だから精霊の動きもわかるのだけど精霊すらその方の周りを飛び回るのを控えるのだよ。風が吹くだろう。するとその方の漆黒の髪がたなびくんだ。あんなにキラキラしながら動くなんて創造神の造りたもうた最高の芸術品なのかと目を疑うばかり・・・・・」


熱く語るパロットさんを見て僕は、これほど慕われている方がどんな人か気になってきた。


しかも、そんなすごい人が僕の住んでいる近くにいると言う。


エクレアなら知っているかなあ。今度聞いてみようか。


ぼんやり考えながらパロットさんの話を聞くこと30分。


・・・まだしゃべってる。それにしゃべっている内容が微妙にキモくなってきた。


「そしてね、何より」


彼女は深呼吸した。


「匂いがいい!!もう嗅ぐだけで軽く絶頂してしまう!!」


ドンびいた。


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