第3話
ウルトラマリン劇団の脚本家や女優、そして支配人は全員が魔法学園の卒業生らしい。
そして一番人気のある舞台が「追放された聖女とさすらいの美人剣士」なんだとか。
恋愛小説の人気のジャンルである「聖女と女剣士が活躍する話」をモチーフにしたものらしい。
内容をかいつまんで言うと、学園でまきおこる黒い疑惑、それを追求しようとしたが黒幕によって追放の憂き目にあう聖乙女様。そこに颯爽として現れた謎の美人剣士。
笑いあり涙あり、2人の百合シーンありで、最後は誰もが衝撃を受ける感動のラストになっているらしい。
この劇団のファンの間では、聖女と美人剣士にはモデルが存在しており、そのモデルは魔法学園に存在しているとまことしやかにウワサされているのだ。
うん。そのウワサは間違いないね。
聖女と女剣士・・・モデルはこの2人だろう。
僕はキャーキャー言っている女性の輪から抜けて静かな部屋へ移動し休憩することにした。
もちろん、ガーネットとノワールにはゆっくり彼女らの相手をするように言っておいた。
1人になって考えたのは、闇ギルドの存在だ。
エクレアが調査したのだから間違いはない。
ムスカリ劇団の支配人は闇ギルドに依頼し闇ギルドの人間が今回の事件にかかわっている。
闇ギルドの存在は知っていたが自分が関わることは無いと思っていた。
商業ギルドからも、もし依頼先で闇ギルドが関わるようであればすぐに依頼を放棄して商業ギルドに報告するようにと言われている。
今回も依頼を放棄しギルドへ報告すべきなのだが、どういう魔法を使ってくるのか確かめてから報告しようと僕は思った。
そして上演当日。
あと1時間ほどで上演が始まる時間になった。
劇場内はすでに満席だ。
しかも劇場の外は立ち見でいいからというお客でいっぱいなのだ。
ウワサにきいていたがこれほど人気だとは。
今回上演する内容はやはり、「追放された聖女とさすらいの美人剣士」。
劇場内では、主演の2人のファンによる熱狂的な応援合戦が始まっている。
ちなみに劇中の聖女の名はブランシュ、美人剣士の名はルビーという。
僕は舞台に異常がないか観察している。
ガーネットとノワールには舞台にあがる役者全員の体調チェックをしてもらっている。
すると、客席ではさきほどのブランシュとルビーの名前で応援していたのが、徐々に本来のモデルである「麗しの美剣士」と「純情可憐な聖乙女」の名前での応援合戦が始まった。
ちなみに「麗しの美剣士」がガーネットで「純情可憐な聖乙女」がノワールを指している。
隣に来た女支配人は、
「いつもこうなるのよねこの劇のときは。ふぅ、お客様にも困ったものよねぇ」
と言うが顔はにやけている。
しかも小声で、
「ちがう、そうじゃないわ。「麗しの美剣士」様の一番の魅力はポニーテールを上げた時のうなじの白さに決まっているじゃない!!」
とつぶやいている。
本当はこの人もあそこに加わりたいんだろうなあ。
そして事件はおきた。
急にブランシュ役の女優が胸を押さえだした。
胸が急に苦しくなったようだ。
つぎにルビー役の女優は声が出なくなった。
ガーネットとノワールはこの症状をみて確信した。
わずかだが、魔力の跡が感じられる。
やはりこの症状は魔法を使って引き起こされたものだ。
そこへ僕が入って現状を確認した。
「ガーネット、ノワール、この症状は抑えられないのかな?」
ノワールが
「いえ、可能でございますよ。ご主人様がお持ちのポーションで治療可能だと思いますわ」
と言う。
僕は依頼のとき、何があるかわからないからと常に10本ほどのポーションやら魔力回復薬やらをエクレアに持たせてもらっている。
僕はポーションを2本取り出し、それぞれに飲ませた。
するとすぐに症状が良くなった。
「あ、痛みがおさまっている。・・・・痛くない。もう大丈夫みたい」
「ほんとだ。声がでてる。のども痛くて呼吸もしづらかったのに」
これで役者のほうは大丈夫だ。上演できるだろう。
でもまだ安心できない。
相手は上演できないと思っているのに実際には上演したと知ったら、さらに激しい妨害をしてくる可能性がある。
舞台のそでで待機して何かあってもすぐに対応できるようにしよう。
上演開始。
女優が出てくる。美人剣士のルビー役の女優だ。
舞台に登場したとたん観客席から拍手が鳴りやまない。
上演開始10分後。
場面が変わって、聖乙女のブランシュ役の女優が舞台に出てきた。こちらも負けず劣らず観客席から拍手がすごい。
上演開始30分後。
舞台の最初の山場であるルビーとブランシュの掛け合いが始まる。
妨害がはいるとしたらここかもしれないと女支配人に聞いていたので警戒を強める。
ルビーがブランシュを見つめながら、
「ここは危険だ。早く逃げよう。おいで、ぼくの可愛い子猫ちゃん」
どうやら決めセリフらしい。
観客のあちこちから黄色い悲鳴が飛び交う。
思ったより10倍寒いなと思いながらも警戒を怠らないよう目を光らせる。
だけど、何も起きない。
「・・・・・・・・変だな?ここで妨害が入ると思っていたんだけど何もない」
「ねぇ。どう思うガーネット?」
僕がガーネットのほうを振り向くと、ガーネットは顔を赤くして恥ずかしそうに、
「自分、あんなあざとい言葉は今まで使ったことなんかありません」
モデルとはいえ、あくまで劇だからねぇ。
ここで探知魔法を使っていたノワールが、
「ん、ご主人様、いよいよ動きがあったようです。場所は舞台の裏側。数人の不審者が怪しい動きをしています。急ぎ舞台裏へ行きましょう」
その言葉に従って、ガーネットとノワールを連れて舞台裏へ急いだ。
舞台裏にある事務室の扉を開ける。
「不審者はどこだーー!!」
部屋の中を見ると見るからに怪しい服装をした者が5名いた。こいつらが闇ギルドの人間か。
なんと女支配人を拘束しようとしていた。
ついに強硬手段に出たのだ。
僕はそいつらに叫んだ。
「その拘束を解け!!そんなことをしても無駄だ。僕たちが許さない。いまなら見なかったことにする。いますぐ立ち去れ!!!」
しかし、言うことを聞かずに5人の不審者は僕たちに襲い掛かってきた。




