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出逢えた奇跡  作者: 琴音七色


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第23章『練りに練られた記者会見』

第23章『練りに練られた記者会見』



    1 芝居以上の大役



 晃太郎の仕事が徐々に落ち着き、数ヶ月後。大野の衰退もあって、平穏を保てるようになってきた愛藍はツアーを含めて詰まっているスケジュールを無事にこなした。そして、他の数件の仕事をこなしていたある日、冴木が深刻な顔をしながら愛藍に話し出した。


「明日のMV撮影終了を以てアーティストAilaはDelights エンターテインメントとの契約が終了します」


「えっっ?」


「……そして……俺も……退職しまぁーす、俺達は……自由だぞ!!!」


「えっ、本当に? えっ、まこさんも? えっっ、待って! 二人とも?」


「おお! なんだ、(Delightsに)残りたいか?w」


「いやっ、んーん…………、えっ、じゃ、これからどうなるの?」


「新天地だ! 新天地! 俺さぁ……すっげぇ~いい事務所見つけたんだよなぁ~! 紹介してやろっか!?( ̄▽ ̄) 」


「何、その言い方?w こわーい! まぁ、まこさんが大丈夫っていうなら一緒についてくよ!」


 と晴れて自由の身となったことを告げられた。そして、後日紹介された新事務所へ挨拶や契約その他諸々の手続きのため出向くと、中から数名の男性の声がもれて聞こえてきた。


「ん? まこさん?」


「www 聞き覚えあるだろ?w」


 ドアを開けると、そこには……晃太郎と三上と西野がいた。西野はお祝いとして駆けつけていた。全員を見回してサプライズされた愛藍が


「……そうゆうこと!?( ̄∇ ̄;) 」


 と“してやられた”感でボヤくと、晃太郎が


「は~い、20周年の映画主題歌サプライズ返しぃぃぃぃ~!」


 と言って三上も乗ってきて


「大・成・功ぉ~!」


とニタニタしながら愛藍を見た。そして、冴木が愛藍を席に誘導して座らせるなり、スケジュール帳を取り出して


「えー、早速ですが……契約書の内容確認……問題が無ければサインを済ませて……、で、今後のスケジュールの確認とネット配信会見の日程を……」


 と間髪入れずにスケジュール確認を始めようとした。実は、愛藍の父が世界を飛び回る弦楽器奏者なだけでなく、音楽プロデューサーとしても力を持っていた為、晃太朗はその伝を使い、Delightsの親会社に圧力をかけてもらった。晃太郎の爆弾付きの訴えを取り下げてやる代わりに『大野の国外追放と念書・愛藍への接近禁止・アーティストAilaの契約終了・不正な手段で譲渡されたAilaの楽曲の著作権の返還・円満退社』を要求をし、自分が設立した事務所への移籍を速やかに進められるようにと裏でずっと掛け合ってくれていたのだった。また、大野がDelightsの社長就任前から事務所や養成所のアーティストを極秘でアジアに連れていって売春斡旋をして荒稼ぎしていたことも掴んだ晃太朗は、その証拠や証言者からの告発動画を集めてDelights側が条件を飲むしかないところまで抜かりなく交渉材料を整えていた。……これが爆弾付きの晃太朗の秘策だ。

 時間はかかったものの、籠の中で苦しんできた愛藍を救い出すことが出来たのだ。だけでなく、この業界で生きる自分のことも守れなければ愛藍の今後が危険だと考え、完璧な作戦の決行でなければならなかった。そして、長年Ailaのマネージャーを務めてきた冴木のことも晃太郎が新事務所へ来てもらうほうが愛藍にとって安定的だと判断してヘッドハンティングしたのだった。また、愛藍のデビューからずっとバックダンサーとして支えてきてくれたEmmaを含む数名が残りの契約を済ませた後、移籍して愛藍のもとに再び集結する予定であることを冴木が報告すると、愛藍は嬉しすぎて半べそで皆のところへ回っていって順に“ウェ~イ!”とフィストバンプしていった。西野からは、以前の“大野”との件で何もしてやれなかったことへの謝罪の意味も込めて晃太朗の新事務所と連携して愛藍に有利な条件の仕事を回してくれるという話をされた。

 移籍についてや契約などを済ませると、今後の“アーティストAila”としての活動の再スタートとして、まずは前事務所からの騒動で世間を騒がせたことも考慮し、入籍して夫婦となっていたことや晃太郎の新事務所設立と愛藍が同事務所に移籍を済ませたことなど諸々を改めてファンの方々や業界の関係者へ一度しっかりと報告しておくべきと判断したため記者会見をネット配信で開き、2人で挑むことにした。

 

 会見場に選んだ場所は……お決まりの友人・大河内のホテルであった。順調に会見予定だったが、記者会見開始から僅か数分で愛藍の表情が冴えなくなる。晃太郎の袖を愛藍が引っ張り、耳打ちして


「ごめんなさい……。私……やっぱり体調がちょっと……んん~ん……無理かも……ゴメン」

 

 と告げた。事前に愛藍から『大野とのトラブルにより流産してしまったことでの心の傷』とその際に『マスコミに押し掛けられたこと』がまだトラウマで極度の緊張と体調不良ということで、会見から席を外す可能性があることを伝えられていた。晃太郎が上手く説明をし、冴木を呼んで愛藍のことを頼んだ。愛藍は大河内と冴木に付き添われ会場から退散。どよめく記者たち。大河内が戻って晃太郎に駆け寄り、愛藍を医務室に連れて行ったから安心して続けろ! と耳打ちし、晃太朗が独りで引き続き会見することとなった。



    2 サスペンスあるある・自白の手紙



 喋り続けて数十分、質疑応答しているところに大河内が時計を確認して司会者に指示を出す。司会者は


「えー、突然ですが、ここで姫居晃太郎様の妻の愛藍様からお手紙をお預りしておりますので……」


 と伝えた。大河内が晃太郎の元へ向かい、手紙を手渡して晃太郎が代読するよう愛藍に頼まれていることを伝える。司会者が簡単に説明をし


「それでは、姫居様、代読をお願い致します」


 そう促され、何も知らなかった晃太郎が少し動揺しながらも愛藍の手紙を読み始めた。晃太郎の代表作の1つが刑事モノや推理サスペンスということもあり、それをイジる内容から始まった。


『晃太郎さん、そして、記者の皆様、ファンの皆様へ


 この手紙を今、晃太郎さんが読んでいるということは、私はもう既にこの会見場からいなくなっていることでしょう。

(記者たちの笑い声・晃太郎も思わず笑ってしまう)

本当はここで直接この口で皆様の前で色々お話をしたかったのですが、体調を考慮し、このような形となってしまったことをどうかお許しください。


 さて、記者の皆様。

きっと皆様は、私たちがどのようにして出逢い、付き合うまでに至ったのか? そして、どちらから犯行に及んだのか? その手口など、お知りになりたいのではないでしょうか……。会見を退席という大罪を犯してしまったお詫びに、この手紙で私は全てを打ち明けようと思います。

(再び記者たちの笑い声、そして、愛藍の書き出しのセンスに“意外とこういうのもいけるのか?”と盛り上がる)


 まず、晃太郎さんとのお付き合いが明るみになってからのこと。記事では【晃太郎が入れ込んでいるだけ・ハニトラか? 火遊び】など色々と目にしてきましたが、実は最初に好きになったのは私のほうでした。

初めて出逢ったのはドラマではなく、私がデビューしたての頃に出演しました音楽番組でした。その日、たまたま臨時で司会を担当していた彼は、私の出番のことやリハーサルをチェックして台本に書き込んでいたり、本番でも私を頑張り屋だと褒めてくれたり、とデビューが決まったばかりで緊張していた私を気遣ってくれました。その優しさとその時の声を今でもハッキリと覚えています。人の努力をちゃんと見てくれる方だと知ったのです。それから時は経ち、アーティスト活動15周年を迎えた年の桜が咲き乱れる春に、突如、女優業が舞い込み、その顔合わせに出向くと、そこに彼がいたのです。初めて出逢った日と変わらず口下手で不慣れな私を気遣ってくれて、他の共演者の方々とも打ち解けられるようサポートしてくれる優しさや思いやり、またチーム全体を好転させる力を持つ彼の人柄に、15年ぶりに再び心が惹かれました。

 偶発的に起きたトラブルが運んできたその再会は、ひたすら音楽活動に邁進して頑張ってきたことに対する神様からの御褒美のように感じられました。フィールドが違うので、もう逢うこともないかもなぁと思っていた彼に再び逢い、このチャンスを無駄にするなど、私にはできなかったのです。そして、再会直後から私のほうが入れあげ、彼に近づき、引き金を引いて、彼のハートと胃袋を撃ち抜いたのです。犯行に至った経緯と動機については、これが全てです。(再び記者たちの笑い声)


 ところで、突然の体調不良で会見場から逃げ出してしまいましたが、私は、皆様にまだその理由をお話ししておりませんでしたね。実は、少し前から自分の体がおかしいことに気づき始めました。

(晃太郎が息を飲み、手紙を代読する声が少し震え、読み上げるペースが落ちる)

最初は『まさか……』と思って気にしないように過ごしてはいたのですが、日々過ごしていくごとに、確実に体に症状も出てきたため、これはもう……ごまかしきれないと思い、通院したところ


 私は…………………………



    3 夫を揺るがす……まさかの展開?



 どうやら私の体は………………、

(晃太郎がまたも息を飲み、暫く続きを読めなくなる。が、少しして「はっ!」と声を出し、開いた口が塞がらない様子だった。記者たちもどよめきフラッシュが増える。取り乱した晃太朗が立て直して再び読み出す)


……この度、お腹に……再び小さな命を授かっていることが分かりました。

(晃太郎が再び息を飲み、手で口を押さえ、涙目になる。フラッシュは激増する。そして、震える声で更に読み続ける)


 少し前に様々な出来事があり、また報道されたこともあって、皆様も御存知のことと思います。前回の妊娠では多大なるご心配をおかけ致しましたが、再び、このような御報告をさせて戴ける日を迎えられたことをとても嬉しく思います。そして何より、前回あのような辛く苦しい出来事を経験し、悲しみに打ちしがれていた私にずっと寄り添い、支え続けてきてくれた晃太郎さんには感謝の気持ちでいっぱいです。私をもう一度【ママ】にしてくれてありがとう。

 出逢った時から、そして再会してからは特にですが、晃太郎さんは、私に未知の世界をたくさん見せてくれる特別な存在です。たくさんの幸せと喜びをくれる晃太郎さんに私もこれから、お腹の子と一緒にもっとたくさんの喜びを感じてもらえるように生きていきたいと思っております。

 この小さな命を今度こそ、ちゃんと守りたいという想いと、つわりがいつ起きるか? の予測が大変困難なことから大事を取り、会見を途中退席させて戴きましたこと、どうか皆様お許しください。そして、晃太郎さんにも内緒にしておりましたこと、前回のことがありましたので糠喜びになってしまうのが嫌で安定期に入るまではと黙っておりました。ごめんなさい。


 それではこの辺りで最後とさせて戴きますが……私は、もう……きっと今頃、一足お先に帰宅してパパになった晃太郎さんの会見の続きを観ながら愛犬とお腹の赤ちゃんと一緒にパパの帰りを待ちわびていることと思います。それでは、こうさん、どうかお気を付けて。また『お忘れ物なく!』無事にお早いお帰りをお待ちしております。


 記者の皆様、本日はお忙しいところ私たちのためにお集まり戴きまして誠にありがとうございます。また会見場を御用意して戴きました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。まだまだ未熟な二人では御座いますが、これからも感謝の気持ちを忘れずにより一層精進してまいりますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


 そして、日頃より応援していただいておりますファンの皆様へ

どんな時でも、何があっても変わらずに温かいご声援をいただき、心より感謝申し上げます。皆様のそのご声援が私の活動の力になっております。これからも笑顔を絶やさず、まずは幸せな家庭を築いてまいります。そして“体と心”が落ち着きましたら、またステージに立ち、最高のパフォーマンスをお届け致しますので、どうかAilaを待っていてください! 姫居愛藍』


「……はぁ………………、との……ことだそうです!」


 と安堵する晃太郎。そして、もう一度はぁ~と息を大きく吐き、


「あのー、……すみません。俺、ちょっと愛……あっ、妻の体調が気になってしまって。もう居ても立っても居られないっていうか、ちょっと勝手で申し訳ないんですが、帰らせてもらっていいですか? スミマセン……」


 と言い、頭を下げて会見場を去ろうとする晃太郎。出口に向かおうとしたが、すぐさま引き返して会見テーブルにもう一度戻った。実は会見中、ずっと……何となく気になっていたものがあった。様々な花が飾られている中、センターには何故か一か所だけ青いバラのミニブーケとなっていて、その中に小さな小さな可愛い靴がアレンジメントで飾られていたのである。

 晃太郎は気づいた。そして、大河内に


「お忘れ物なく! って……もしかして、これか!?w」


 と尋ねるように話し、顔を見る。大河内は黙ったまま、笑って2度頷く。晃太郎は、ブーケを手に取り

 

「なんか、違和感あったんだよな、靴、紛れてんなぁって。持ってくぞ! 色々ありがとなっ!」


 と大河内に礼を言って立ち去った。


 サスペンス・ドラマの犯人自白の手紙調で会見退席の空気を和ませ、更にそこへ極秘だった妊娠の報告を乗せてきた壮大なサプライズのアイディアは、愛藍の移籍や業界でのステータスの維持など、様々なことへ尽力してくれた晃太朗への更なるサプライズ返しだった。愛藍は、晃太朗の設立した新事務所で“やられた感”を引きずっていて、そのサプライズを越えたいという想いと、冴木の機転で配信の収益を考えての大人の事情も重なり、“仕事上の兄と妹”のタッグによりオフィシャルで新天地での初の成果を上げ、かなりの再生回数となった。

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