第22章『デビュー時と20周年への恩返し』
第22章『デビュー時と20周年への恩返し』
愛藍が静養を続ける一方で、大野は愛藍を追い込んだことや彼女の周りの人間をも巻き込んで脅して自分のものにしようと奮闘していたこと、また今回の流産騒動も世間に明るみとなり、肩を持っていた企業やマスコミは一変して大野から手を引き、愛藍と晃太郎の復縁記事に熱を注ぎ始めた。
体の回復だけでなく心の回復も考慮して可能な限り、愛藍に付き添っていたい晃太郎だった。が、マスコミの急激な方向転換により大野に仕掛けられたイメージダウンから形勢逆転し、愛藍への絶え間ない愛と一途に尽くす様子が連日報じられた。そして、世間が騒ぎ出して晃太郎の株は上がり、仕事が激増した。そして、とある記者の取材で『タクシー運転手の証言』により、愛藍と晃太郎が婚姻届を出していたらしいというスクープが報じられて、2人に対する世間の注目度も増した。そんな中、気付けば晃太朗の俳優活動20周年が迫っていた。
取材は殺到、大量に仕事が舞い込む、20周年の記念すべき主演映画も以前から決まっていて撮影も大詰めだった秋。愛藍はセリフを覚えなければならない晃太郎を気遣い、また自分のスケジュールもゆったりではあるものの、それなりに詰まってくるため、心身のバランスをとってやり過ごす日々が続いた。実は、そんな状況ではあったが、少しずつ体調も良くなり始めていたタイミングで、晃太郎の映画制作関係者から極秘オファーを受け、愛藍は晃太郎に内緒で楽曲制作をしていたのだった。主演を務める晃太郎には別の楽曲数曲が主題歌候補で、未だ決定に苦戦中だと話されたまま気がつけばクランクアップを迎えた。
公開記念舞台挨拶の日が来た。エンドロールとともにバラード曲のイントロが流れ出し、主題歌のヴォーカルに差し掛かったところで晃太郎は「ん?」と違和感を持ち、声に集中した。すると
……愛藍が登場した。
会場は大興奮・大盛況であった。そして、愛藍が歌いながら少しずつ舞台に近づいて来る。舞台に上がる寸前、最前列にいる晃太郎に花を手渡した。舞台に上がって歌い続ける。手渡された花は、愛藍が初めて晃太郎を家に招いた日、晃太郎が花屋で買ってきて手渡してくれた時と同じ青いバラだった。
歌い終えると会釈をして、晃太郎のほうを見てはにかんだ笑顔を見せた。無難な挨拶だけを済ませると直ぐに愛藍は舞台からはけた。晃太郎は進行の司会者にコメントを求められた。
「ビックリしたー! いやね、 関係者からも主題歌の選定に苦戦してる! って報告受けてて……公開ギリギリかもとか……そんな話でね。で、数日前に『おそらくこの曲で行きます!』って渡されたんだけど、イントロ全然違うからさぁ。で、フライヤーが出来たってことで確認させてもらって、いやね、ちょっと(Aila起用を)期待してたんですよ。でも、アーティスト名も全然知らない名前だったから……そっかぁ……って。で、さっき聴いてたら“あれ、妻の声そっくりだな!”ってw そういうことだったのかぁーって。いや~、めちゃくちゃ嬉しいです! っていうか、いつレコーディングしたんだ?」
と驚きながらも喜びを隠せない様子で締めの挨拶をした。薄っすら涙目であった。観客席では、晃太郎が愛藍のことを“妻”と表現したところで多くの人から羨望の声が上がった。




