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出逢えた奇跡  作者: 琴音七色


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第20章『法話が聞ける個室の待遇?』

第20章『法話が聞ける個室の待遇?』



    1 病める時も、悲しみの時も、離さないことを誓います



 愛藍の行方が分からないままだった晃太郎は、愛藍の伯母のメールを読んで一安心だった。が、今日は愛藍との逢瀬の時に協力してもらった大河内のホテルの別館の式場で式を挙げる予定を立てていて、その打ち合わせの日であったのだが、愛藍が不安定なので晃太朗は延期することを決め、ホテルの関係者に諸事情を伝えに行くことにした。到着して関係者と話し込んでいると、そこへ……愛藍が姿を現した。立ち向かうことを決意した愛藍は、晃太郎に謝り、式場関係者に挙式の日程など変更なしの意を伝え、無事に打ち合わせを終えた。関係者と晃太郎が確認内容を話している間に、愛藍は予定する式やパーティーのどこかで晃太郎のために何かサプライズをしたいと考えていた為、トイレに行くふりをして関係者の一人に声をかけた。別室に移動しているところに突然……


 大野が現れた……。


 愛藍は体が震えた。大野の姿を見て『何故ここに自分がいることを分かったのだろうか?』と恐怖で体が固まってしまった。どうしようか? と思ったその瞬間、大野が愛藍に走り寄ってきた。愛藍は、大野から逃げようとしたが、追いつかれてしまい腕をつかまれた。「止めて!」と言う愛藍を無視して連れ戻そうとする大野の腕を振り払おうとしたことが大野を逆上させてしまう。正気を失った大野がもっと強い力で愛藍を引っ張り、愛藍は弾みで螺旋階段の手すりにお腹を打ち付け、更にその階段から転落してしまった。騒ぎを聞きつけた晃太郎が、慌てて1階の吹き抜けフロアに転落した愛藍の元へと駆けつける。お腹を押さえて大野への恐怖で震えながら苦しむ愛藍が


「式場の方と……話そうとしてて……」と晃太郎に告げた。


 話しながら苦しみ続ける愛藍の太ももから、血が流れ出していた。晃太郎は愛藍に


「…………愛藍……、もしかして!? お腹……?」


 と尋ねた。が、愛藍もこの出血に妊娠の可能性があることを分かってないようだった。心配そうにお腹を押さえ苦しむ愛藍を抱きしめて、付近の関係者に救急車を頼み、愛藍を託すと、晃太郎は式場の関係者たちに取り押さえられている大野の元へ向かった。大野の胸ぐらを掴んで

 

「お前、いいかげんにしろよ。……愛藍の心が側になくても、お前はそれで幸せなのか? 怯えるだけの彼女を無理矢理に側に置いて縛り付けて苦しめて……、何やってんだよ。何を守ってんだよ!? 彼女をステータスの道具みたいに扱うな。なぁ、Delightsの前の社長を退任に追い込んだのって、お前だよな。伊原美彩希のスキャンダルのリークも俺の記事のでっち上げもそうだよな。全部調べたよ……。他にもアジアで“()()”やってるよな……。お前、知ってるか? 愛藍の笑顔がどれだけ可愛いか。その笑顔がどれだけの人を幸せにしてるか。でも、この1年、彼女が笑顔を見せたことがあったか? 心から笑った顔があったか? 消えたんだよ……、お前のせいで。俺の側にいた時にあんな悲しい顔なんか見たことないんだよ。あんなにやつれちゃって、元気もなくして。やっと取り戻してきたところでまた苦しめんのか? また奪うのか? 何がファンのため? だよ。何が愛藍のため? だよ。やってること逆じゃねーか。自分の利益と立場しか考えてねーよな。Alessaのことだって、そうだろ。無理やり引き離しやがって。自分のことだけ満たすのに必死だよな。お前が俺よりもっと力も魅力もあって、彼女が自らお前の胸に飛び込むなら仕方なく諦めるさ。でも、違うよな。違うだろ。なぁ、もう頼むから愛藍を自由にしてやってくれよ。もう十分貢献しただろ!? それからな…………もう……………………、彼女は俺の妻だっ!」


 と、耐えきれぬここまでの想いと愛藍への執拗な支配や独占欲に対して堰を切ったように胸の内を吐き出した。最後の“妻”という言葉が胸に突き刺さった大野は、式場関係者の腕を振り切って逃げた。晃太郎は愛藍のもとへ戻った。

 

 救急車が到着する。病院に搬送されたが、残念ながら愛藍は流産していた。目が覚めた愛藍は晃太郎に赤ちゃんのことを聞くが、晃太郎の悲しげな表情と口数の少なさ、そして、手の握り方から流産を悟って泣いた。「ごめん……、ごめんなさい」を何度も何度も口にして、愛藍は晃太郎に繰り返し謝った。そして、伯母から聞いた母の話が頭の中を駆け巡っていた。母の願いの為にも自分が幸せになることを貫くために晃太郎のもとに戻ったにもかかわらず、母が成したことすら自分はできていないのか? と、授かっていた命を守れなかったことに対して強い罪悪感と自己嫌悪に苛まれていた。晃太郎は、取り乱す愛藍を抱きしめて落ち着かせようと試みる。色々考えてしまう愛藍は、一人になりたいと晃太郎に頼んだ。だが、晃太郎は愛藍に対して初めて声を荒げた。


「ダメだ! ……ダメだよ。……独りにさせるなんて嫌だ………」


 と言い、許さなかった。晃太郎は続けて


「今、独りにしたら……愛藍が心も身体も本当に独りぼっちになっちゃうだろ!? だから嫌だ。俺まで消えたら……。ごめんな、嫌われても気分悪くさせるとしても、それでも出ていけない。ごめん……」

 

 と言い、赤ちゃんがいた体から突然“空っぽ”になってしまった喪失感で一杯の愛藍を心配して、晃太郎は側を離れようとしなかった。そして、晃太郎は看護師に頼んで処置室から病室を特別個室に移してもらった。



    2 フライング・ベイビー



 愛藍にずっと付きっきりで一緒に泣きながら気が付けば寝付いていた2人。愛藍を背中から抱きしめて包んで離さないように寝ている晃太郎と雁字搦めで身動き1つ取れないでいる愛藍の元に看護師が血圧を測りに来て、愛藍は目が覚めた。その光景を目の当たりにしても動じない澄ました表情の看護師が愛藍に小声で血圧測定を伝え、何とか袖をめくり測定を試みた。愛藍は視線だけを看護師に送り、小声で

 

「……すみません」


 と謝る。看護師が手際よく測定し


「ドラマのワンシーンみたいですね!」


 と言い、続けて愛藍に


「そうそう、あの去年のドラマ、録画して観てましたよ。あれ見て(2人)本当に結婚しないかなぁ! って。式挙げる前に終わっちゃったから。その後、本当に熱愛報道が出たからリアルで続きが見れるのかなって凄く嬉しかったんですけど…………。でも、あの破局の話は噓だったんですね!」


 と言いながら測定を終えて、今度は体温を測定し、また……


「ひと回りも違うってTVやネットでも騒いでたけど、私は見てて全然違和感ないというか、お2人ともお似合いだなぁって……。あの……、なんだっけ、そうそう、そのドラマの番宣の特番? あの時に姫居さんが愛藍さんの口を確か拭いてあげてたじゃないですか! あれ見て、なんか前世で親子か何かだったんじゃないか!? って。愛娘を溺愛するお父さんみたいなw」


 と測定した血圧や体温をスムーズに電子カルテに打ち込みながら看護師が話し続けた。愛藍が


「……前世かぁ。私、何か(凄いこと)やらかしちゃったのかなぁ?」

 

 と流産したことを含ませてネガティブにつぶやくと、看護師は


「ん-ん、前世で成就しなかった2人だったりして。今度はちゃんと結ばれることが前世からの約束とか!?」


 と言い、聴診器やバンドをしまいながら、続けて話し出した。

 

「余計なことだったらスミマセン……。今回の……赤ちゃんの件なんですけどね……完全流産って言って。妊娠初期で流れてしまう原因の多くが染色体異常で。ほぼ『お母さん』には原因がないってことなんです。階段の手すりに打ち付けたそうですけど、お聞きした箇所で考えると位置に大分ズレがあるので。……ここから、ちょっと私感というか……スピな話になっちゃいますけど、大丈夫ですか?」


 と聞いてきた。愛藍は涙目で


「はい、聞かせてください」

 

 と答えて続きを聞きたがった。


「完全流産なので受精の時点でこうなるかもしれないっていう運命を持ってお腹にやって来るって……こと……なんですよね……。そんな運命背負ってまでして、それでも短くてもママのお腹に来たのって、やっぱり意味があるというか。よっぽど早くお二人に逢いたかった! って感じ……しません?w おっちょこちょいっていうか、焦って逢いに来るタイミング間違えちゃったみたいな。こんなに全力で……雁字搦めで?w ママのこと愛してくれるパパさんがいて……幸せそうで羨ましくって、早くお2人のこと間近で見てみたかったのかなぁって。でも、神様に『まだでしょ!』って、なんか、こう……首根っこ掴まれて連れ戻される問題児みたいな。かわいいですよね!」


「なんか、凄い……。涙出ちゃう……」


「あー、……個室なんでね、どうぞお気になさらず泣きたいだけ泣いてくださいねw」


「……ありがとうございますw」


「いえいえ、こちらこそお体のことも考えずに喋りすぎちゃってスミマセン。……はいっ、寝方以外は全然問題なしw 異常なしです! じゃ、もし何かあったらボタン押して呼んでくださいね! って、これじゃ呼べないかw よいしょっと……」


 と言って緊急呼出しボタンを雁字搦めの愛藍の手元に引っ張ってきて、置きながら最後に耳元で囁くように


「明日もしこの雁字搦めがネット記事になってたら、情報提供者って…………私ですよねw なんちゃって! おやすみなさい!(囁き声)」


 と衝撃的な冗談を置き土産にして看護師が病室を去った。人の病や命とたくさん向き合ってきたベテラン看護師の深みのある話に笑いを織り交ぜて励ましてくれた行為に心を救われた愛藍だった。……と、晃太郎が愛藍の手を強く握った。そして、鼻をすする音が聞こえた。背中にかすかな震えも伝わって来ていた。晃太郎が出逢ってから愛藍の前で初めて身体を震わせて泣いた……。愛藍は、手を握り返して晃太郎の手を自分のお腹に当てて静かにまた2人で泣いた。


 翌朝、体調もそれほど問題ないという担当医の言葉もあったことから“早く退院したい”と言う愛藍の希望に晃太郎が応え、手続きを済ませて退院することにした。三上に事情を話して来てもらっていたため、2人は裏口から病院を出ることにし、三上の車に向かおうとするが、式場での騒ぎがどこかから漏れたことでマスコミが情報をキャッチしたようで、詰め寄ってきた。まだ完全にショックから立ち直れていない愛藍が取り乱してオドオドし始めたところに三上が車外へ出て駆け寄り、マスコミ対応をしようとすると、晃太郎は


「ありがと、いいよ、俺が少し話す。愛藍を先に車に乗せてもらえるか? 頼む」


 と言って、記者たちの前に出向いた。


「すみません、今回だけは本当やめてあげてもらえませんか?」


「姫居さん、式場へは何しに行かれたんですか――? 愛藍さんとヨリを戻したってことでいいんですかね!?」


「…………違いますよ。別れてなんかいないですよ、俺たちはね……。ただ……、意図せず逢えない日が続いてただけです。……あの……この数ヶ月、本当様々なことがあって追いついてないというか……彼女の心と体がたくさん傷ついてしまっていて……疲弊していて……ちょっと今、ダメなんですよ、本当に。このままじゃ、本当潰れちゃうから。どうか、そっとしておいてあげてもらえませんか? お願いします」


 と冷静かつ大人の対応をし、愛藍への取材の時期を待ってあげてほしいと告げて深々と頭を下げた。

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